Intermission
「すみません!おおづ図書館はどこですか?」
私は向こうから歩いてくる一人の高校生の男の子に声をかけた。
「すみません、僕、地元じゃないので」
「ごめんなさい」
仕方がない。ちょうど近くにコンビニがあったので入ると、ペットボトルのお茶を買いがてら店員に道を聞く。
「郵便局の横の道を左手に曲がって行くとありますよ」
「ありがとうございます」
コンビニを出て、図書館へ向かおうとしたら、戻ってきたさっきの高校生がこっちに歩いてきて、スマホの画面見せながら、「ここですか?」と聞いてきて面喰らう。
Googleストリートビューかな?ハイテク小僧。
「行ったことはないので」
「すぐそこですよ。一緒に行きましょう」
私はまじまじとその高校生を見て、「いいんですか?」と言う。
「どうせ駅までちょっと歩いて帰るだけなので」
すたすた。
信号は向こうの方。車は通ってない。
「今、渡りましょう」
高校生が率先して歩いていく。
私もこのぐらいの年の頃は純粋だったなぁ。少年よ、おねーさんの毒牙にかかる前に逃げたまへ。
「あ、あそこだ」
「ほんとだ。書いてある」
「ここですか?」
「はい。ありがとうございます。これあげます」
ペットボトルのお茶を手渡す。
振り向かず図書館へ歩いていく。
郷土のコーナーに背広姿の男がいる。
「白石です」
「ああ。ここの場所、わかりましたか?」
「教えてもらいました」
「そうですか。では、研究所に行きましょうか?」
「はい」
男に案内されて、人知れずひっそりと建っている大西研究所にたどり着いた。
超次元鏡。
その研究員。
「数万光年離れたハビタブル惑星(生物がいそうな星)の様子を見ます。鏡面や水面などにうつった影像を確認します」
仕事は退屈なものだった。
あの高校生…。
Googleストリートビュー。
超次元鏡!!!
朝一番で出社して、好きなものを超次元鏡で見させてもらう。ほんの5分かそこら。
ダイヤルを極微細に動かして、地球の、この地域に合わせる。
途中、いろんな影像が万華鏡のようにうつった。うあ。内臓かしら?胃カメラ?月夜の人影?エトセトラ、エトセトラ。
あの高校生の姿を捜すのが私の日課になった。




