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064 大崩壊の記 <2>*

2章スタートです。

(*゜▽゜)<ナレーターはお好きな声優さんで脳内変換ください。

 誰もが知っていることだが、世界は一度滅び、生まれ変わった。

 "大崩壊"と呼ばれる、不明の時代を越えて――。


 かつてそこは青く、生命に溢れた世界だった。

 だが大崩壊を経て、地球上の種はそのほとんどが絶滅の一途を辿った。


 わずかに生き残ったのは、特殊な"魔力"を宿した生きもののみ。

 彼らは、宇宙(そら)から降り注ぐ有害物質をその身に受けても、毒に犯されることがなかった。

 自らの力で呼吸をし、汚染された水や食べ物を口にし、それでも死ぬことはなかった。


 皮肉なことに、大崩壊がなければ彼らが日の目を見ることはなかっただろう。

 己の希少さに気づかず、また気づいたとしてもその異端さをひた隠して生きていったことだろう。


 生き延びた彼らに示された道はふたつ。

 照らされる白の光と、落とされる黒の影。

 彼らはいずれかの方向へ、進化を遂げた。


 白の光を選んだのは、人と多数の生きもの。

 黒の影を選んだのは、一部の生きもの。


 白の一握りは、やがて強大な力を持つ指導者となっていった。

 人はそれを「魔女」や「魔法使い」と呼んだ。


 黒の一握りは、やがて強大な力を持つ異形へと変化していった。

 人はそれを「魔物」と呼んだ。


 魔物の知能は人に及ばなかったが、代わりに身体能力は総じて高かった。

 この異形の性質は残虐で、分かりやすい破壊を好んだ。

 己以外の生きもの、とくに人をよく襲い、すべての生きものの敵として繁栄していった。



 永い時を経て――。


 人は魔力の有無によって、強者と弱者に分けられていた。

 だが魔力を持たざる人も、弱者のままでいることを良しとしなかった。

 彼らは知恵の力を使い、困難に立ち向かった。


 科学の力を最上として栄えた、科学国家ローラシア。

 その身ひとつで息をすることすらままならない、魔力を持たざるものが集まった国。

 強者よりも数の多い彼らは、この巨大な国を作り上げることに成功していた。


 そこに住む人々は大崩壊前の科学には到底至らない、些末な知恵しか持たなくなっていた。

 それでも、人は科学の恩恵にあずかって生きのびていた。

 魔力を持たなくとも、あらゆる驚異から身を守り、生きのびることができていた。


 それはひとえに、人と魔物以外の存在があったからこそ。


 大国ローラシア。科学の力で動く、機械の国。

 今、少年と少女は、機械にあふれた国へと向かう――。

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