136 大崩壊の記 <3>*
誰もが知っていることだが、世界は一度滅び、生まれ変わった。
"大崩壊"と呼ばれる、不明の時代を越えて――。
西暦2☓☓0年。
地球の南北にある磁極は急激に逆転した。
人類史上、最悪の地球規模災害のはじまりだった。
その際、生き残った人はひとり残らず神の姿を見たという。
『集いなさい。選ばれし人の国を作りなさい――』
輝く6枚羽の神は慈愛の光を背負い、頭の中に直接語りかけてきた。
絶望の淵にいた人々は、これを盲目的に信じた。
ひとつに集まり、国も人種も越えて手を取り合った。
選ばれし人の国を作るために。
永い時を経て――。
かの国は完成した。
魔法の力を最上として栄えた、魔法国家ゴンドワナ。
絶対神テトラグラマトンを頂点とした、宗教国家。魔力を有する者だけが、ここで生きていくことができる。
国の最高権力者は、神の代行とされる祭司長。
祭司長の下には高位祭司が、その下には神官や巫女が集い、国を守っている。
そこは平和で、慈愛にあふれる楽園なのだろうか?
否。
権威を持てば、それに溺れる者が現れる。
強者とは名ばかり。人は弱い。
輝く選ばれし人の国は、光の裏に影を落とした。
テトラ教は、信者以外を「非人」と呼び差別した。
魔力を有していても、神殿に従わないものすべてを人として扱わなかった。
ゆえに、多くの者が差別を恐れ洗礼を受けた。
国民の実に8割がテトラ教信者。
残りの2割が、信仰心に乏しい者というわけではない。
単に布施を収められない貧民層だというだけ。
魔力の有無によって強者と弱者に分けられたはずが、強者の中でも強いものと弱いものに分けられる。
かくしてテトラ教の中には、非人を切り捨てる強行派と、弱者も救済しようという穏健派、ふたつの派閥ができた。
「愚かな人は、自分以外を見下さないと生きていけない」
テトラ教、初代穏健派の高位祭司の言葉である。
大国ゴンドワナ。魔法の力で動く、魔法使いの国。
今、選ばれし人の国は、新たな変化の岐路にいる――。
3章始動!
長らくお待たせしました……待っていてくださって本当にありがとう!!
どこかのタイミングで年末割烹も書く予定なので、よかったらチェックしに来てね!




