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Eternity World Online  作者: 桐生紅牙
未定
38/46

宣伝(後)

 

「ギルドですか?」


「おう、家のギルドの奴等は気の良い奴ばかりだから、入って後悔する事は無いと思うぜ」


 俺の質問に、真剣な顔から笑顔に表情を変えて、そんな答えを返してくる男性プレイヤーだが、俺としてはギルドに入るかどうかの答えの前に、男性プレイヤーに言いたい事がある。

 それは


「誘っていただくのは有り難いですが、あなた誰ですか?」


「はっ?」


 俺と男性プレイヤーの間に何とも言えない空気が漂った。








「はっはっはっは!悪かったな。大ボスの門まで来てる奴なら、俺やギルドの事も知ってると思ってたぜ。これからも、もっと頑張る必要があるな」


 俺をギルドに誘った男性プレイヤー、ガンドさんはそう言って笑う。

 あの何とも言えない空気の後で、名前も含め詳しい話を聞いた所、ガンドさんや彼のギルドはかなり有名であるらしい。(俺は知らなかったが)

 特にここまで来ているプレイヤーなら、殆どの者は知っているらしい。

 そう言う訳で、あの何とも言えない空気が漂った訳だが、今はお互いに自己紹介も終わっている。


「それで、どうだ?家のギルドに入らないか」


「そうですね……」


 俺は少し考えてみる。

 ガンドさんの話だと、彼のギルドは既に大ボスを倒して、次の街までたどり着いているらしい。

 これから大ボスに挑むのも、ギルドの生産職の者達を次の街まで連れていく為と言うことだ。

 俺もガンドさんのギルドに入れば、次の街まで直ぐに行くことが出来る。

 それに俺は知らなかったが、有名なギルドだけあって、生産職のプレイヤーがいても大ボスを倒すだけの実力があり、実力がある分集めることが出来る素材も多く、対価を払う必要はあるが、ギルド内で素材の融通もしてもらえる。

 はっきり言ってガンドさんの話は、かなり魅了的な誘いである。

 そう言った事も考えて、俺の答えは


「誘いは有りがたいのですが、今回は断らせて貰います」


 ギルドには入らないだ。


「そうか、一応理由を聞いても良いか?」


 俺の答えを聞いて、ガンドさんはそう言う。

 確かにあれだけの好条件で断ったのだから、理由も知りたくなるだろう。

 なので俺は考えた事を言う。


「もちろん。それで断った理由ですが、俺は自分のやりたい事を沢山試してみたいんです。それも、どうしても他の人の力が必要でなければ、なるべく自分の力で。なので時々パーティーを組んだりするのは良いと思うのですが、ギルドに入るのは断らせて貰いました」


「それだったら、仕方がねえか。ヨルがギルドに入らないのは残念だが、無理強いはしないぜ」


 ガンドさんは理由を聞くと、あっさりとそう返した。

 あまりにあっさりとした返事だったので、そこまで期待して無かったのかと思ったが、ガンドさんの顔が本当に残念そうだったので、ガンドさんの性格によるものだとわかった。


「っと、ギルドの話はこれで終わりだが、最初の目的のポーションを売ってくれ。それと追加でエーテルもだ」


 ガンドさんは切り替えが早いのか、直ぐに表情を変えてそう切り出してくる。

 ギルドの話で俺も忘れていたが、ポーションを売ることになっているのだった。

 それに、最初の目的は宣伝である。

 しっかり商品を売らなくては!


「わかりました。どのポーションを幾つ買いますか?それとエーテルも追加で?」


「ああ。初めはポーションだけのつもりだったが、これだけの効果のあるエーテルだからな。俺は使わないが、仲間が使えば良いからな。それと、買うのはアイテム全部だ」


「全部ですか……」


 これは予想外の問題が起こった。

 商品が売れるのは有り難いが、ガンドさんが全部買ってしまうと、宣伝用のアイテムが無くなってしまう。

 ガンドさんやギルドの人達には知ってもらえるが、これではあまり宣伝にならない。

 というか、これだけのアイテムをまとめて買えるのか。

 ある意味すごいなガンドさん。


 俺の思考が少しだけ脇にそれていた所で、ガンドさんが声を掛けてくる。


「おい、大丈夫かヨル?何か考え込んでいるみたいだが」


 う~ん、ここはガンドさんには悪いが、訳を話して全部買うのは止めてもらうか。


「ああ、大丈夫です。ですが少し問題があって。実は・・・」


 ガンドさんに俺の目的を話す。

 ガンドさんなら分かってくれると思ったが、予想外の返事が返ってきた。


「それなら俺が宣伝してやるよ。ギルドのメンバーにも頼んでおくぜ」


「えっ、それは……」


 確かにそれなら俺の目的も達成されるだろうし、ガンドさんもアイテムが買える。

 それにガンドさん達は俺より顔も広いと思うので、宣伝の効果も高いだろう。

 懸念があるとすれば、ガンドさん達が約束通り宣伝をしてくれるかだが、話をした感じでは信用出来ると思う。

 だったら


「それじゃあ、アイテムは全部売るので、お願いしても良いですか?」


「おう、任せとけ!しっかり宣伝してやるぜ!」


 話も付いたので、さっそくアイテムを売る。

 するとガンドさんが途中でこんな事を言う。


「そういえば、宣伝する為にここまで来たのか?宣伝なんてしなくても、これだけの効果のアイテムなら、フレンド経由で自然に広がっていくだろ?」


「俺のフレンドは三人ですから。皆、忙しいくて店には来ていませんし」


 リュウは攻略があるしカオルさんは店がある、ハヅキは金が無いらしいし、商品が無いのに宣伝なんて頼めない。

 そう言う訳で俺が宣伝に来ているのだが、ガンドさんは何を思ったのか、すごく優しい顔をしてこんなことを言う。


「そうか…………ところでヨル。やっぱり家のギルドに入らないか?きっとフレンドも沢山できるぜ。なんならここで俺とフレンド登録しよう!」


 なんでそんな顔をするのか、さっきはあっさりと誘うのを止めたのにまた誘うのか。

 そんな疑問が俺の頭に浮かぶが、それより思うことがひとつ


 納得いかない!


 何故、皆俺のフレンドの話をすると優しい顔をしたりするのか。

 俺は決して知り合いが少ないわけでは無い。

 知り合いの中のプレイヤーの比率が低いだけだ!


 勘違いしているであろうガンドさんに話をしようとしたところで、ひとつの声が聞こえる。


「ガンドさーん、そろそろ大ボス戦に行きますよー。早く来て下さーい」


 どうやらガンドさんのギルドのメンバーの様だ。

 その声を聞くと、ガンドさんは慌てだす。


「おっと、悪いなヨル。早く行かないと叱られそうだ。宣伝はきちんとしておくから、今度会ったときにでもフレンド登録しようぜ。それと気が変わったら何時でもギルドに来いよ。歓迎するぜ!」


 それだけ言って走っていってしまった。

 勘違いを正すことは出来なかったな。


 いろいろ有ったが、目的は達成出来たのでよしとしよう。

 客も来るだろうし、取り合えず店に帰って商品を作ろう。

 そう考えて、俺は店へと帰ることにした。






~ガンド~


「もー、ガンドさん遅いですよ」


「悪かったな。でも良いアイテムを買うことが出来たぞ」


 そう言って俺は、ヨルから買ったアイテムを仲間達に見せていく。

 全員アイテムの効果を見て、愉快な顔になっている。

 まぁ、それも仕方が無いだろう。

 俺も効果を見たときは、愉快な顔になっていたと思う。


「ガ、ガンドさん、こんなアイテム何処で手にいれたんですか!?」


 生産職の一人が慌ててアイテムの出所を聞いてくる。

 ここはヨルとの約束通り宣伝をすることにしよう。


「さっき、ヨルって言うプレイヤーから買ったんだ。今持っているアイテムは俺が全部買ったから、追加で欲しかったら、始まりの街まで行けば買えるぜ。ヨルはそこで店をやってるらしいからな」


「そうなんですか、それで店の詳しい場所と店の名前は何て言うんですか?」


「それは……」


 やばい、詳しい場所どころか、店の名前も聞いていなかった。

 でもまぁ大丈夫か。

 生産職のプレイヤーの店は街の北側に集中しているから、ヨルの名前で探せば良い。

 それにこれだけの効果のアイテムなら、噂くらいはあるだろう。


「悪い、聞くのを忘れてた。でもヨルって言う名前と、始まりの街で店をやってるのは確かだ」


「えー、しっかりして下さいよ。でも、それだけ分かってるなら何とかなりそうですね」


「気を付ける。それと、これ等のアイテムの事を広めてくれないか?ヨルと約束したんだよ」


「何の約束かは分かりませんが、広めれば良いんですか?」


「ああ、積極的に広めろとまでは言わないから、適度に頼むわ」


「分かりました。それじゃあ、大ボスに行きましょう!」


 これでヨルとの約束も大丈夫。

 それじゃあ、気合いを入れて大ボスをぶっ飛ばすか。


~End~                            

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