相談
現在、仕事が忙しいので感想の返事が返せておりません。
感想を下さった方々、申し訳ありません。
次の日、俺は昼からログインして、カオルさんの店に向かっていた。
何故昼からかというと、昨日カオルさんに連絡をしたとき、昼からなら会うことが出来ると聞いていたからだ。
午前中からログインして畑の続きをしようかとも考えたが、最近は最低限の鍛練しかしていなかったので、久し振りにしっかりと鍛練をすることにした。
しかし鍛練をしていて思ったが、やはりゲームの中の肉体は現実の肉体と比べて遥かに高い能力を持っている。
ゲームをする上で高い能力があることは便利だが、その能力に頼りきっていては自身の技量が上がる事は無い。
現状では、羅刹の肉体でも斬鉄の薙刀を十全に扱えていない。
やはり技量を上げるためにも、現実での鍛練を欠かしてはいけないな。
それに俺自身、技量をあげたいとは考えているが、祖父が留守の間にまったく技量が上がっていなければ、祖父が帰ってきてからの鍛練で恐ろしいことになるだろう。
どうなるのかは想像するのも嫌だな。
まあ、祖母と旅に出ている祖父に、最低限の鍛練しかしていなかった事がばれる事はないとおm
ゾクッ
背筋に悪寒が走った。
こんなことは昔、祖父の大切にしていた刀で達也とチャンバラをs…………………………。
よし、これ以上は気にしない、考えない、思い出さない。
悪寒だって偶然だ!
……………………偶然だよな?
とにかく、これからは今まで以上にしっかりと鍛練をして技量をあげればいいのだ。
俺はそう決意をしながら、何となく速足でカオルさんの店へと急ぐことにした。
まるで、何かから逃れるように。
西通りから中央広場に出て、北通りを少し進んだ所でカオルさんの店が見えてきた。
カオルさんの店は、服だけでなく防具も扱っているからか、カオルさんの趣味かは分からないが、二階建ての重厚な造りをしている。
それにしても、通り沿いには立派な店が多いな。
俺の店が出来る予定の南西地区とは大違いだ。
やはり、人が多い場所の方が儲かるのだろうか。
まあ、街中に畑を作る事は難しそうなので、俺は今の場所の方がいいが。
ちなみに、人が多い理由だが、西通りや北通りというのは東西南北にある門と中央にある広場を結ぶ大きな道で、多くのプレイヤーやNPCが移動する時に通る事になるからだ。
他の建物を見るのも面白そうだが、今はそのままカオルさんに会いに行こう。
カラン、カラン。
店の扉をあけると来店を報せるベルがなる。
俺はベルの音を聞きながらも、目の前にある光景から目が放せない。
店の内装は外観とあった内装で、服が置かれている場所と防具が置かれている場所がわかれており、今も数人の女性プレイヤーが服を見ていたり、反対では男性プレイヤーが防具を買うか悩んでいる様子が目につく。
ここまでなら、内装も綺麗で品揃えも豊富そうないい店に見えるのだが、一つだけよく分からない物があった。
いや、店の内装には合っているのだ。
しかし何故それがここにあるのか、というより居るのか分からない。
俺は思わず呟いてしまう。
「執事とメイド?」
そう、何故か執事とメイドが接客をしていたのだ。
「私の趣味と実益よ」
メイド姿の店員に声を掛けられる事で衝撃の光景から立ち直り、カオルさんの所まで案内された俺は、自分の相談より先に執事とメイドについて聞いていた。
「趣味というのは、俺の装備を作る時の事を考えればまだ分かるが、実益っていうのは?」
「始めは冗談で、1日店員の服装を執事服やメイド服にしたんだけど、それが思ったよりお客さんに受けたのよ。それで服のPRと合わせて、しばらくそのままの服装にしてみたんだけど、店の売上が伸びたのよ」
「それでそのままにしているって事か?」
「そうよ。店の売上は伸びるし、従業員の反応も良いわよ。それに私の趣味でもあるしね」
「従業員の反応も良いのか?」
「ええ。それよりヨル、今日は何か用があるんでしょ?」
そうだった。
執事とメイドに衝撃を受けて忘れていたが、今日はカオルさんに相談しに来たのだ。
「そうだった。実はいくつかカオルさんに相談したい事があるんだ」
「私に相談?」
「ああ、まず・・・・」
それから俺は、店を開く上で人手が足りない事や【魔力付与】、【魔力付与】を使ったアイテムについて話していった。
「相変わらず、ヨルは普通では無いみたいね」
俺の話を聞いたカオルさんの第一声がこれである。
俺は普通にゲームをしているつもりなんだがな。
まあ、【魔力付与】を使ったアイテムに関しては、俺も普通では無いと思うが。
「それで、人手に関してはNPCを雇えばいいと思うわよ。私の店の従業員も全員NPCだし。問題は【魔力付与】ね」
人手に関してはNPCならホルトさんにも相談出来るので、それでいいとしても、やはり問題は【魔力付与】か。
「俺は出来るだけ騒ぎにならない様に、隠そうと思っているんだが」
「それは止めた方が良いわよ。逆に早く情報を広めた方が良いわ」
「そうなのか?」
「ええ、隠していても使っていれば何時かはバレると思うし、【従魔】のスキルがあるから、妖精を従魔にしたプレイヤーが気付くと思うわ。ヨルみたいに自分で【魔力付与】を使う事は出来ないけどね」
【従魔】のスキルか。
確か、モンスターを一体だけ従える事が出来るスキルだ。
俺は【百鬼夜行】があったので気にしていなかった。
「そうか、ならどうすればいいと思う?」
「ヨルは掲示板を知っているかしら?」
「知ってはいるが、使った事は無いな」
俺は見た事も無いが、リュウから話を聞いた事はある。
「そう。ならヨルの許可さえ貰えれば、私が掲示板に上げて情報を広めておくけど」
リュウに頼んでもいいが、カオルさんがやってくれるなら、折角なのでお願いしよう。
「それじゃあ頼む。俺がやっても、何か抜けている事があるかもしれないからな」
「任せて。今日中にはやっておくから」
「ありがとう」
これで何とかなりそうだ。
この後はどうしようか。
早速ホルトさんに相談しに行こうかな。
俺がこの後の予定を考えていると、カオルさんが声をかけてきた。
「それより、私からもヨルに頼みたい事があるんだけど」
カオルさんがとても良い笑顔で言う。
「何だ?俺に出来る事なら、相談にものってもらったから引き受けるが」
俺は特に何も考えずに、そう返事をする。
「ありがとう。それじゃあ今日は私に出来る限り付き合ってね♪」
それからは大変な目にあった。
俺はカオルさんの指示に従って様々な服を着る。
実験ということで、【魔力付与】を使ってアイテムを作る。
途中でMpが足りなくなったが、エーテルを飲まされて作業を続けた。
まあ、【魔力付与】のレベルが上がったり、今後は【魔力付与】を使った依頼を貰える事になったのだが。
ちなみに、ティアも【魔力付与】は使えるのだが、カオルさんの着せ替え人形になっていた。
始めは喜んでいたが、途中から逃げようとしていたと思う。
しかし、俺には助けることが出来ないのだ。
許せ、ティア。
お前の事は忘れない。
そうしてその日は過ぎていった。




