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Eternity World Online  作者: 桐生紅牙
町と始まり
28/46

狐の少女

 ナンパを撃退した後、俺はハヅキを連れていつもの喫茶店へと向かい、話をすることにした。

 

「本当にナンパって迷惑!ヨルもそう思うでしょ!」


「俺は男だからナンパなんてされたことはないが、確かに迷惑そうだったな」


 今は喫茶店へと向かっている途中なのだが、ハヅキがナンパがいかに迷惑かを語りだしている。


「迷惑なの!断ってもしつこく話しかけてくるし、下心が見え見えだし、碌な奴がいないんだから!」


「ハヅキはそんなによくナンパされるのか?」


「うん、現実でも時々ナンパされるけど、ゲームだと三倍くらいナンパされるようになったかな」


「三倍………それはある意味ではすごいな。それに現実でもナンパされるのか?」


「時々ね。こんなことになるんだったら、目や髪の色を変えるだけじゃなくて、顔を変えれば良かった」


 ハヅキの髪の色は山吹色で、いかにも狐といった様子だ。

 そしに目は茶色ではなく、黒色をしている。


「それならハヅキは俺と同じだな。俺も髪や眼の色を変えただけだからな」


「えっ!ヨルの顔って色以外はいじってないの!」


「そうだが、何か変だったか?」


 俺がそう返事をすると、ハヅキが驚いた顔で俺の顔をじっと見てくるので、俺もハヅキの顔を見返しておく。

 目をそらしたら負けの様な気がするので、ハヅキの顔を見続ける。


 ジー


 ジーー


 ジーーー


 しばらくお互いの顔を見続けていたが、ハヅキが照れた様子で目をそらした。


 勝った


 具体的に何に勝ったかはわからないが、とにかく勝った。

 それよりさっきの質問の答えが返ってきていないので、もう一度質問する。


「なんで俺の顔をじっと見てきたんだ?やっぱりどこか変か?」


「別に変じゃないよ。現実では見たことないから、驚いてずっと見ていただけだから」 

 

 ハヅキは照れながらも、そう返事をしてくれた。

 それよりも現実では見たことがないとはどういうことだろうか?

 目や髪の色は、変えていると言ったので、関係はない。

 すると顔に理由があると思うが、俺の顔は普通である。

 ゲームを始めるときにも髪以外は・・・

 


 ・・・よく考えてみたら、現実の男でこんなに髪が長い男は珍しいな。

 ハヅキは俺の髪の長さに驚いていたのか。

 俺の顔がどこか変で、驚いていたのではなくてよかった。


「ハヅキ、言い忘れていたが髪の長さも変えていた。驚かせて悪かったな」


「えっ、そういうわけじゃ・・・」


 俺の言葉を聞いたハヅキが、何とも言えない顔をしながら言葉に詰まっている。


「俺の髪の長さに驚いていたんだろ?」


 続けて俺がそういうと、ハヅキは呆れた顔をしてこんなことを言う。


「うん、ヨルはそういう人だったね」


「何か間違っていたか?」


「何も間違えてないよ。それより早くお店に行こうよ」


 ハヅキはなんとなく労わるような声と顔でそういうと、店に行こうと促してくる。

 どことなく納得がいかないが、確かに店には早く着いた方がゆっくりできるので、ハヅキに促されるまま店へと急いだ。

 途中でなぜか、リュウのため息が聞こえた気がしたが、きっと気のせいだろう。

  



 店に着いてからは、さっそく依頼の話をすることにした。


「これが頼まれていたエーテルだ。店売りの物よりかは、少しだけだが効果が上がっている」


「ありがとう。ヨルが作ってくれたおかげで、わざわざエーテルを作る事の出来る人を探さなくてよかったよ。それでいくら払えばいいかな?」


 そういえば、作る事を頼まれただけで、依頼の報酬を決めていなかった。

 ホルトさんやノーラさんの依頼で、金は貰っていなかったので忘れていた。 

 それに報酬だが、ハヅキからは魔力草についていろいろ聞いたので、無料のつもりだったのだ。


「ハヅキからはいろいろ聞いたこともあるから、今回は無料でいい」


「そうなの?ヨルがそう言ってくれるなら、エーテルは高いから、私も助かるけど」


「それでいい。ついでに言うと、これから俺の店でそれより高い効果があるポーションやエーテルを売るから、よかったら買ってくれ」


「そうなんだ。どれくらい効果があるの?」


「実際に見てくれ」


 そう言って俺は、【魔力付与】を使ったもの以外を机の上に並べていく。

 ハヅキは一つづつポーションやエーテルを見ていくが、効果が高くなっていくにつれて顔が引きつっていく。

 蒸留水や上薬草を使い、効果が上がる作り方をしたポーションを見た時には、せっかくの美少女の顔が大変なことになっていた。

 すべてのアイテムを見終わると、顔をうつむけて何も言ってくれないので、心配になり俺から声をかける。


「これらのアイテムを売ろうと思うのだが、買いに来てくれるか?フレンドには割引も考えているのだが」


 ピクッ


 ハヅキは俺の声に反応して顔を上げる。

 そこには美少女が懇願するような顔があった。

 

「ヨル、割引って本当?」


「ああ、本当だが・・・」


「よかった。私も買いに行きたいけど、値段が高そうで、ちょっと無理かと思っていたから。ありがとう、ヨル」


 ハヅキがいい笑顔でそんなことを言う。

 これは、割引は絶対にしないといけない。

 俺はハヅキの顔を見ながらそう考えた。


 その後はティアを紹介したり、店について話をしてからハヅキとは別れた。

 ハヅキと別れてから、俺は改めてこう思った。


 それにしても、不意打ちであの顔は卑怯だ。


 そんなことを思いながらも、俺は不快な気持ちにはならない。

 今なら、ナンパする奴らの気持ちも分かるかもしれないな。

 俺はそんなことを考えながら、畑を作りに向かうことにした。


いつもとは少し違うかもしれません。

面白いか心配な作者です。


温かい目で見てください。

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