魔力付与(戦闘)
ちょっとストイックかもしれません。
山脈に到着したので、とりあえず人が来ないような場所を探しに行くとするか。
他のプレイヤーが来るとしたら、やはり山頂に向かうと思われるので、おれはあえて山頂に向かう道には行かずに、前回砂鉄を採取した川の上流を目指してみることにした。
途中に出てくる魔物で【魔力付与】を試すことができるし、川がどこから流れているのか気になっていたのだ。
なぜならうまくいけば、砂鉄が取れる場所が見つかるかもしれないからだ。
うまく見つけることができれば、今度武器を作る時に役に立つだろう。
さて、とにかく川へ出て上流に進んでみることにしよう。
川に着き予定通り上流に向かっていると、【気配察知】によりモンスターの気配が感じられた。
その気配は上空にあるのでおそらくホークであろう。
前回は奇襲を受けることが多かったが、【気配察知】のスキルレベルが上がったことで、範囲が広がっている様だ。
このまま奇襲を受ける形でホークを引き付けてもいいが、今回はティアに【魔力付与】をして魔法で先制攻撃してみることにした。
ティアは自前でできるが、攻撃手段が魔法しかないのでMp温存のためにも俺が【魔力付与】を使う。
【魔力付与】を使うとティアの体がぼんやりとした光に包まれた。
これで強化はできているが、生物に魔力付与を使うとこんな風になるのか。
これは少し目立つかもしれないな。
俺がそんなことを考えていると、ティアが魔法を使ってホークを攻撃した。
ティアが使ったのは風魔法の様で、薄緑色の風の刃がホークに迫っていく。
ホークも風の刃に気がついて避けようとしたが、刃はかなりのスピードがあったので避けきれずに直撃して、空中で砕け散った。
どうやら一撃でHpがゼロになったようだ。
そういえばティアが使った魔法だが、プレイヤーが使う魔法にこのような風の刃はなかったので、同じ風魔法でもモンスターとプレイヤーが使う魔法は違うのかもしれないな。
それに、森で見た時よりも確実に刃が大きく速くなっていた。
おそらくこれが【魔力付与】で強化した影響だろう。
ホークを倒したのを確認すると、ティアが俺の目の前に来る。
ティアの体を見てみると、体から光が消えていたので【魔力付与】による強化は終わっている様だ。
俺がティアの様子を見終えて、モンスターを倒したことを褒めると、ティアは嬉しそうに飛び回った後、俺の頭の上に乗った。
俺の頭の上はティアのお気に入りの様だ。
戦闘中に頭の上に乗られると邪魔になると思うが、戦闘になるとすぐに降りるのでこのままにしておけばいいだろう。
他にモンスターの気配は感じないので、俺はまた川の上流へと向かうことにした。
しばらく進んでいると今度はホークより大きなモンスターの気配が感じられた。
大きさや地上にいることから考えると、未知のモンスターでなければロックゴーレムだろう。
前回遭遇した時には魔法で少しづつ削って倒すしかなかったが、今回は違う。
今の俺の武器は棒ではなく、説明文の通りなら、鉄さえも切ることができる斬鉄の薙刀なのだから。
気配に近づいていくと、相手の姿が見えてくる。
やはりロックゴーレムの様だ。
今度はティアには手を出さないように言っておく。
このロックゴーレムには、薙刀や【魔力付与】の練習台になってもらおうか。
さあ、戦闘を始めよう。
ロックゴーレムの動きはそれほど速くはないが、力が強く固い。
俺に殴り掛かってきたところを余裕をもって回避し攻撃に移る。
普通であればハンマーなどの打撃武器でなければ相手ができないが、斬鉄の薙刀の性能を信じて胴体を斬りつける。
ギャンッ
薙刀とロックゴーレムの胴体が接触したところから火花が飛び、音を響かせる。
一度距離を取って斬りつけたところを確認してみると、浅く傷がついていた。
薙刀の刀身も確認してみたが刀身には刃こぼれ一つ出来ていない。
薙刀の性能は説明通りの様だが、俺の腕が足りないか。
もっと集中して神経を研ぎ澄ませる
周囲の景色が遅くなり、ロックゴーレムの動きがよりゆっくりとしたものに見える
俺はまた、ロックゴーレムを斬りつけるために動き出したが、自身の肉体が決闘をした時よりも早く動けることに気付く
これは羅刹に進化した影響だろうが、急に肉体の性能が上がったのに体を完全にコントロールできる
生産で上がったDexの影響もあるのかもしれないな
そうした考えが頭に浮かんだがすぐに消えていく
目の前にいる相手に意識が集中していく
さっきと同じように振るわれた腕を避け、薙刀を振りかぶる
今度の狙いは胴体でなく、振るわれた腕
遅くなった世界で正確にゴーレムの関節部分に刀身を振るう
ドシャッ
薙刀を振り切った後に、音を立ててロックゴーレムの腕が地面へと落ちる
音もなく、完全に両断することできた
ロックゴーレムは、よくわからないうめき声をあげて残った腕を振り回す
腕を避けながら今度はまた胴体を斬りつけるが、完全に両断することができない
距離を取り、【魔力付与】で限界まで強化する
俺の体が光をまとったところで、再度距離を詰める
距離を詰めるとき、さっきよりも速く動くことができるが、体を完全にコントロールすることができない
それでも勢いをつけたまま、ロックゴーレムの胴体を薙ぎ払うように斬る
ギャリンッ
激しい火花と音がしてロックゴーレムの胴体が両断され、砕け散る
砕け散る光の中で思う
今の攻撃はステータスと薙刀の性能のおかげだと
まだまだ、鍛錬が足りない
戦闘が終わって【魔力付与】について考えてみるが、強力である事はティアの魔法やロックゴーレムを無理やりにでも両断できたことからわかった。
しかし俺の腕が、【魔力付与】した状態では足りない。
これから【魔力付与】を使っていくだろうが、俺の腕を上げることは必須だろう。
とりあえず確認は終わったが、腕を上げるためにもこのまま川の上流を目指すことにしよう。
新しい目標をもって、俺はまたティアと共に上流を目指して進んでいった。
やりすぎでしょうか?
でもヨルならオッケー?




