報酬
少なめです。
カオルさんと喫茶店で話してから七日経ち、最後のポーションをノーラさんに納品した後で俺は公園に向かっていた。
この七日間は特に変わったこともなく、森に入って薬草を採取してポーションを作りノーラさんに納品していた。
あえて変わったことと言えば、ポーションの値段が上がったことである。
公園に着くと初めて来た時とは違い、幾人かの話をしているお年寄りと遊んでいる子供たちがいる。
すると遊んでいた一人の男の子が、俺に気付いて走り寄ってくる。
「ヨル兄ちゃん!今日こそは遊んでくれる?」
「いいぞ、俺の仕事も終わったからな。でもその前にホルト爺ちゃん達と話をしないといけないから、その後でな」
「えー、すぐに遊んでよ」
「そんなに長く話すわけじゃないから、友達と遊んで待っててくれ」
「わかった、でも話が終わったらすぐに遊んでね!」
男の子が友達の所へ戻ると、子供たちが歓声を上げる。
前から遊んでくれと頼まれていたが、歓声を上げるほど喜ばれるとは思わなかったな。
そう思いながらホルトさん達のほうへ向かうと、俺と子供たちの様子を見て皆笑顔を浮かべている。
このお年寄りや子供たちは俺の話を聞いてお礼を言う為に会いに来て知り合った人たちだ。
お礼を聞いてからも、この公園で会って話をしたりしている。
ホルトさんたちのそばまで来ると、声をかけられる。
「子供たちに大人気じゃの、ヨル君」
「ホルトさん、確かに慕われているとは思いますが、完全に遊び相手としてですよ」
「男の子はそうかもしれんが、女の子はそうじゃないかもしれんぞ」
「もしそうだとしても、年上のお兄さんに憧れているだけです。大きくなったら、そんなことも思わなくなりますよ」
「そうかの?まあこの話はこの辺にして本題に入るとしよう」
「そうですね、ポーションは今日もしっかりと納品してきました。これで依頼は達成ですか?」
「もちろんじゃ、皆ヨル君のおかげで助かったのじゃから。途中から納品する数も増やしてくれたしの」
俺とホルトさんの話を黙って聞いていたお年寄りたちもお礼を言ってくれる。
「皆さん、ありがとうございます。俺が役に立てたならよかったです」
「それでお礼なんじゃが、ヨル君が自由にできる土地をあげようかと思うのじゃが、受け取ってくれるかの?」
「ちょっ!土地ってそんなもの貰えませんよ!俺がしたことはポーションを作っただけですよ!」
「いいのじゃ、その土地は昔ワシ等が畑にしておった場所じゃが、町が大きくなって仕事も増えて、畑を作る者もいなくなり今はただの荒れ地じゃ」
「それでも土地だなんて…しかもワシ等ということは、そこそこの規模になるのではないですか?」
「場所は南東で、2500㎡くらいじゃ」
「2500㎡ですか?いくらなんでも広すぎでは」
「ヨル君は店を出すつもりなんじゃろ?それならいつも材料を取りに行っているわけにもいかないじゃろうから、店舗以外を畑や庭にでもして素材を育てればいいじゃろ」
確かに店を出すのなら店舗を建てる土地はいるし、素材を取りに行ってばかりいて店を空けるわけにはいかないから畑もあると助かる。
そう考えれば俺にとっては大変ありがたい。
しかしポーションを作っただけでそんなにもらっていいものか?
俺が悩んでいるとホルトさんは、さらに理由を付け加えてくる。
「ヨル君は報酬が大きすぎると考えているかもしれないが、この七日間でヨル君が作ったポーションを今の値段が上がった状態で売れば、もっときちんとした土地が買えるのじゃよ」
そういう考え方もあるのか、俺は途中からさっきも言ったように50本よりも多く納品しているし、今売ればそのくらいの金は手に入ったかもしれない。
これ以上遠慮していてもホルトさんたちは引きそうにないので、有難くもらうことにするか。
「分かりました。有難く受け取りたいと思います」
「それでいいのじゃ、若者が遠慮なんてするもんじゃない。それに渡せるのは土地だけで今はただの荒れ地じゃ。土地の整備や店舗もヨル君が用意しなくてはいけないんじゃから」
ホルトさんの言う通り土地は手に入れたが、店は俺が準備しなければならない。
目標には近づいたがこれからも忙しくなるだろう。
しかし今日は依頼を終えたばかりで、子供たちと遊ぶ約束もしているのでゆっくりしよう。
その日は子供たちと遊び、貰った土地の様子を見てからログアウトした。
目標の店に一歩近づきました。
ちなみにヨルはロリコンではないです。
事件の顛末は次話で明らかになりますがヨルも巻き込まれます。




