黒幕
カオルさんに連れられて行った場所は、総合生産施設の近くにあった喫茶店だ。
中に入ると、落ち着いた雰囲気のお店であった。
「いいところでしょ、休憩する時によく来るのよ」
「そうだな、落ち着いた雰囲気で休むにはちょうどいいと思う」
席について飲み物を頼むと、カオルさんから話を聞く。
「さっきのやつの話だけど、ヨルはポーションの値段が上がっているのは知っているかしら?」
「知っているけど、それが奴と関係あるのか?プレイヤーが急に増えてポーションや材料の薬草が足りなくなったのが原因だろ?」
「それが関係あるのよ。あいつが所属しているパーティーを含めて何組かのパーティーが、薬草を一日目に買いあさったの。確かにプレイヤーが急に増えた事でポーションの消費が多くなったけれど、材料の薬草があれば品不足になるなんていうことはないわ」
「一日目に買い漁る事ができるほどの金を持っていたのか?それに買い漁られても薬草ならフィールドで採取できるだろ?」
「お金については、あいつらの中にβテストに参加していたプレイヤーが何人もいて、テスターの特典で初期金を上げていたみたいなの。薬草は一度採取すると一日たたなければまた採取できるようにならないから、そんなに数を集めることができないのよ。そういえばヨルはどうやってそんなに薬草を集めたの?平原の薬草は取りつくされているはずだけど」
「森にならたくさんあったぞ。平原がとりつくされてるのなら森にいったらどうだ?」
「そう思って森や他のフィールド行ったプレイヤーもいたけれど、少ししか採取できなかったり死に戻りしていたわ」
「そんなものなのか?俺は普通に薬草を取っていたが」
カオルさんが俺の話を聞いて、何とも言えない顔をしたので話を元に戻す。
「あいつらのせいでポーションの値段が上がっていることは分かったが、何が目的でそんなことをするんだ?」
「あいつらの目的だけど、ポーションの値段がもっと上がってきてから、買いあさった薬草で作ったポーションを売りさばくのが目的なのよ。高くてもポーションは必要なものだから買うプレイヤーは少なくないわ。ヨルからポーションを買い取ろうとしたのも、自分たち以外でポーションを売る人を少なくしようとしているからだと思うわ」
「あいつが嫌われているのはそれが理由か?」
「そうよ、みんなポーションの値段が上がった理由を知っているからね」
話を聞いてあのしつこいエルフとその仲間が屑なことは分かったが、俺にはどうすることもできない。
とりあえずカオルさんに七日後にはポーションの不足が解決することを教えておく。
「それは確かな情報なの?もしそれが本当なら、あいつらが泣きを見ることになるけれど」
「道具屋の人に聞いたから間違いないだろう」
「それはいいことを聞いたわね、この話を私以外にした人はいるかしら」
「いないな、プレイヤーと話をしたのもカオルさんで四人目だしな」
道を聞いた女性プレイヤー、リュウ、しつこいエルフ、カオルさんの四人だ。
俺がそういうと今度はかわいそうな人を見るような顔をされた。
何か誤解をされているようなので、誤解を解くためにも話をしようとしたが、カオルさんに「何も言わなくてもいい」と優しい顔で言われた。
その対応は俺を気遣ってのものと分かるが、納得いかない。
俺が何か言おうとすると、カオルさんが話の続きを始めてしまう。
「ヨルさえよければ、この話はほかの人にはしないでほしいの。ポーションの値段が上がっていると言っても、買えないような値段になるにはまだ時間がかかって、高くてもポーションや薬草自体は売られているし、薬草もまったく採れないわけではないから、七日程度なら普通のプレイヤーでも大丈夫だと思うの」
「七日間黙っていれば、少し苦しくはなるが最終的に買占めをしている奴らが泣きを見るってことか」
「そういうこと、どうかしら?」
「わかった、黙っていよう。俺もそんなことをする奴らは、泣きを見ればいいと思うからな」
話が終わった後は、カオルさんとフレンド登録をして別れた。
ポーション不足の理由を知った俺は、ノーラさんからの依頼を必ず果たそうと心に決めた。
プレイヤーはポーションが足りなければ少し困るだけだが、ホルトさんやこの町の住人にとっては大きな問題になるのだ。
事情を知らないにしても、意図して混乱を起こすようなことをしているのがプレイヤーなら、同じプレイヤーの俺ができる事をしなければならないだろう。
七日後にはしつこいエルフとその仲間たちは泣きを見るがいい。
俺はそんなことを考えながらログアウトした。
たぶん矛盾点はないと思いますが、作者の表現が間違っているかもしれないので、温かい目で見てほしいです。




