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第7回なろうラジオ大賞参加作品

「年賀状仕舞い」は思わぬギフトをもたらしました。

作者: 辻堂安古市
掲載日:2025/12/02



なろうラジオ大賞参加作品です。







 

 年々届く年賀状が減っている。

 私も書く枚数は減っている。

 


 SNS全盛の時代に、こんなお金も手間もかかるものは時代遅れなんだろう。それでもまだ書く理由が、私にはたった一つだけあった。


 でも、それももう今年で終わりそうだ。

 

 


「本年をもちまして年賀状によるご挨拶を控えさせて頂きます」




 今までも毎年の様に友人・知人から届いていた。

 それがまさか彼から届くとは思っていなかった。



 彼と別れたのは、どれくらい前の事だろう?


 高校卒業後に別れてしまったけど、その後も年賀状だけは届いていた。「おめでとう」と簡単な近況報告。ただそれだけ。だから特別と思ってもいなかった。それがなくなるだけで、こんなにも心が乱れるなんて。




 何かあったの?

 理由を聞かせて欲しい。

 でも、理由を聞くのが怖い。

 聞いて、細い糸のような繋がりが完全に無くなるのが、怖い。


 


 別れてから、もうかなりの年月が過ぎている。繋がりが消える事を受け入れないといけないのも、分かる年齢にはなった。


 私の我儘なら飲み込まないと……でも。






 そんな気持ちで2週間ほど過ごしていたある日の夕方、玄関のチャイムが鳴った。返事をしてモニターを見た瞬間、ドクンと心臓が脈打った。



 何年も会っていない。

 けど、分かる。

 心で、感じる。



 ドアの外に立っているのは、彼だ。


 





 

 早鐘の様な鼓動なんて、いつ以来だろう?

 

 深呼吸を、2回。

 私は扉を開けた。 



「久しぶり。元気にしてたかい?」


「なんで……ここに?」


「年賀状仕舞は届いただろう?」


「ええ。それが何か関係あるの?」


「ああ。だから、これを渡しに来たんだ」



 差し出されたのは、白い古びた箱。



「ずっと昔に用意していたものだよ」



 蓋を開けてみれば、銀色の指輪が光を放っている。私は表情を変えまいと、必死になった。



「……何よ、これ……いつ、買ってたの?」


「別れる少し前、かな」



 彼は、どんな気持ちでこれを持ち続けたのだろう。

 私は、どんな顔をしてこれを受け取ればいいのだろう。



「私……もう歳だよ。いいの?」


「関係ない。距離は離れていても、心はずっと君の傍にいたんだ。結婚式は、銀婚式と一緒に挙げよう。今年がちょうど付き合い始めてから25年目だろう?」


「……本当にバカね。相変わらず!」



 そう言いながら私は彼に抱きついた。

 そうでもしなかったら、溢れる涙を隠すことができなかったから。



「……もう、年賀状はいいだろう?」



 確かにもう、いらないわ。

 25年分の話題は、1枚の葉書には収まらないもの。

 














お読みいただきありがとうございました。



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