「年賀状仕舞い」は思わぬギフトをもたらしました。
なろうラジオ大賞参加作品です。
年々届く年賀状が減っている。
私も書く枚数は減っている。
SNS全盛の時代に、こんなお金も手間もかかるものは時代遅れなんだろう。それでもまだ書く理由が、私にはたった一つだけあった。
でも、それももう今年で終わりそうだ。
「本年をもちまして年賀状によるご挨拶を控えさせて頂きます」
今までも毎年の様に友人・知人から届いていた。
それがまさか彼から届くとは思っていなかった。
彼と別れたのは、どれくらい前の事だろう?
高校卒業後に別れてしまったけど、その後も年賀状だけは届いていた。「おめでとう」と簡単な近況報告。ただそれだけ。だから特別と思ってもいなかった。それがなくなるだけで、こんなにも心が乱れるなんて。
何かあったの?
理由を聞かせて欲しい。
でも、理由を聞くのが怖い。
聞いて、細い糸のような繋がりが完全に無くなるのが、怖い。
別れてから、もうかなりの年月が過ぎている。繋がりが消える事を受け入れないといけないのも、分かる年齢にはなった。
私の我儘なら飲み込まないと……でも。
そんな気持ちで2週間ほど過ごしていたある日の夕方、玄関のチャイムが鳴った。返事をしてモニターを見た瞬間、ドクンと心臓が脈打った。
何年も会っていない。
けど、分かる。
心で、感じる。
ドアの外に立っているのは、彼だ。
早鐘の様な鼓動なんて、いつ以来だろう?
深呼吸を、2回。
私は扉を開けた。
「久しぶり。元気にしてたかい?」
「なんで……ここに?」
「年賀状仕舞は届いただろう?」
「ええ。それが何か関係あるの?」
「ああ。だから、これを渡しに来たんだ」
差し出されたのは、白い古びた箱。
「ずっと昔に用意していたものだよ」
蓋を開けてみれば、銀色の指輪が光を放っている。私は表情を変えまいと、必死になった。
「……何よ、これ……いつ、買ってたの?」
「別れる少し前、かな」
彼は、どんな気持ちでこれを持ち続けたのだろう。
私は、どんな顔をしてこれを受け取ればいいのだろう。
「私……もう歳だよ。いいの?」
「関係ない。距離は離れていても、心はずっと君の傍にいたんだ。結婚式は、銀婚式と一緒に挙げよう。今年がちょうど付き合い始めてから25年目だろう?」
「……本当にバカね。相変わらず!」
そう言いながら私は彼に抱きついた。
そうでもしなかったら、溢れる涙を隠すことができなかったから。
「……もう、年賀状はいいだろう?」
確かにもう、いらないわ。
25年分の話題は、1枚の葉書には収まらないもの。
お読みいただきありがとうございました。




