5話 狩りの始まり
「リッカストップ」
「え、もう着いたのですか?」
歩き始めて十五分が経った頃だろうか。唐突にエリスが腕を伸ばして隣を歩いているリッカを止めた。
先程まで二人は静かに歩けていた。周りの景色が変わる訳でもなく、魔物の気配すら相変わらず薄いままだ。
違いがあるとすれば太陽が雲に隠れてしまった事か。
お陰で森は薄い暗闇に覆われ、多少の恐怖心を煽るようになってしまった。主にリッカの恐怖心を。
だから彼女は震える心に従って、神経と魔力を尖らせているが全くの反応無し。リッカの魔法はこの近くに魔物は潜んでいないと応えていた。
なのにエリスは歩みを止めた。
リッカは半信半疑で、しかしエリスは確信した表情で。
「ついた。その証拠にほら、少し下を見れば」
「え……えっ、保護色の何らかの糸が……! しかも丁度採ろうと思ってた宝珠石の手前に……!」
エリス達の進行方向上に緑色に施された糸が見えた。足元にある上に雑草で隠れている事も相まって自然に溶け込んでいる。
ベテラン冒険者が設置した罠だろう。保護色や絶妙な罠の位置に死角になりやすい雑草といった障害物。それらが相手に気付かれにくい方向で上手に絡み合っている。
リッカだけで見つける事は到底無理だっただろう。
獲物でおびき寄せながら、その手前に命を刈り取る罠を張っている構図はもやはネズミとりである。
いやこの場合だと魔獣取りと言うべきか。
「主に森とかで多いんだけど、ダンジョンには終末事変で設置された罠が残っているんだよね。しかもその時の凶暴な魔物を想定しているから殺傷性が高い」
「ソ、ソレハコワイデスネ」
成程。エリス先輩は罠の見つけづらさと危険性を教える為にここへ来たのだろう。とても勉強になったから、こんな危ない所からさっさと離れて──
「……場所もオッケーで罠の連動も無し。それっ」
なんかエリス先輩が風魔法(無詠唱)の刃で糸を切りやがった。
「え、先輩一体何を──」
張っていた糸が真っ二つになればすごい勢いで草の中に引っ込んでいく。
同時に糸が張っていた場所の上から何か音が。音が聞こえた時には大きな丸太がカーブを描いて下を通り過ぎていった。
推定百キロはありそうな短くて太い棘付きの物体。カーブを描いた先にあった木との衝撃は森を軽く揺らす。どころか少し離れていたリッカ達にも風の衝撃波で髪が揺れるほど。
どれほどの威力だったのか……。
「ひえぇ……」
もし自分一人でここに来ていたら……そう思うとゾッとするリッカだった。顔真っ青である。
さっきまで美しいと思っていた自然の光景が、今では一歩踏み外せば命がない処刑場に見えた。
「……それにしてもエリス先輩。色々知っているんですね。先輩はエンコウン街に来てまだ日が浅いと聞いたんですが」
「色々知っていると言うか、知るべき情報の優先順位を理解しているだけだよ。街に滞在する時は近くにあるダンジョンの情報は調べろ、特に大まかな生態と特色にあとは罠。ってね」
一日前にエリスを追放した先輩から教えてもらった事である。
「あのー先輩。もしかしてここで採掘作業するんですか……?」
恐る恐る聞いてくるリッカ。
微弱ながら光っている宝珠石は健在のまま。手前にあった罠は強引に解除してあるが、罠が一つだけとは限らない。
エリスは分かっているかもしれないが、リッカが気付いていないだけで、すぐ近くに即死級トラップが潜んでいるかもしれない。最悪の光景を想像してリッカは体をブルブル震わせるしかなかった。
「ううん。リッカにここは早すぎるからしないよ」
「……ハァー。そうですよね良かった」
「いつかは罠解除もやってもらうけどね?」
「えっ」
「やった方がいいよ。解除されてない罠なんて何処にでもあるし、何よりお金にもなる」
罠が張ってあった場所から少し離れた所で話す彼女達。相変わらず風は穏やかで余計な音も聞こえないから二人の声はよく届く。
「宝珠石の採掘クエストだけでやってくのは……ダメですよね」
「ダメだねー。こういうリスクが少なくてリターンが大きいクエストは人気なんだよ。まあ宝珠石のクエストは受けやすい方だけど」
「まぁ確かに分かります。奥に行けば行くほど宝珠石の質は上がりますからね」
「お、もしかして魔力の読み方が一段と上手になった?」
感心したようにエリスは声を出した。
魔法石に潜む魔力を見るのは難しいからだ。
そもそもギルドで魔力量を見る時は専門の道具を使用するが、その専門道具無しで判断するとなると主に二つに限られる。
魔法石の輝きで判断するか。
直接魔力を見るか。
後者だと魔法石を見慣れた人でなければ、内蔵されている魔力量が違う事すら分からないだろう。
なら前者かといえばそうではない。さっきエリスが周りを確認した時に輝きが増した宝珠石は見えなかった。
よって消去法で後者が正解のはずだ。
そう思ってエリスは少し嬉しそうに聞いてみるが。
「いえ。宝珠石が輝き始めたので……」
「え……?」
答えは違った。
予想外の答えを受けたエリスは少し驚きつつ、リッカが指を刺す方向へ顔を向ける。最初に見た宝珠石がある方向だ。
さっきは全く輝いていなかったはず。
むしろ内包している魔力量は少なかったはず。
だが見えてきたのは──
「輝いてる……?」
紫色の一等星だった。
暗闇の中で存在感をこれでもかと誇示する光源。
おかしい。
魔法石の輝きが変化する事は基本としてない。
あるとしても異常な魔力量を放つナニカが近くに居て共鳴する場合のみ。
「エリスさん。周りの宝珠石もだんだん輝き始めてますね……」
自分達の周りには魔物がおらず危険はないはずだ。
けれど妙にエリス自身は謎の不気味さに体を震わせる。
そう。
一匹も魔物がいない。
みんな狩られてしまったかのように。
「────ッ!?」
「うわっ!?」
瞬間にエリスはリッカを吹き飛ばす。
明確な理由があった訳でもない。
確証がある訳でもない。
彼女が従った自分の勘。理由はそれだけ。
その結果、彼女は魔法を用いてリッカを全力で吹き飛ばす。怪我も後先の事を考えずに。
それは間違った判断だったのか。
正しい判断だったのか。
答えは二人が居た所を通り過ぎていったビーム状の魔法を見れば明らかだった。
土が弾け飛び轟音が通り過ぎ、木を容易く吹き飛ばす。真横を通り過ぎていった轟音が二人の聴覚を一時的に壊す。
耳はキーンとなって使えない上に、土煙が舞い上がり周りの状況は全く見えない。
視覚も聴覚も使えないがボッーと立っていい理由にはならない。
もう狩りは始まってしまったのだから。
「リッカ喋るな! 木の影に隠れて魔力も隠せっ!」
エリスと違いリッカは風でぶっ飛ばされたお陰で魔法の爆音から逃れている可能性がある。そう信じて自分の居場所がバレる事も厭わずに大声で叫んだ。
(今はピンチ。やらなきゃやられる!)
考えろ。
今分かっている情報をいち早く整理して状況を好転させろ!
(やる事は一つ! 今までと同じ事をすればいい!)
敵はおそらく隠密行動が得意なタイプ。
不意打ちの魔法を見るからに火力も高いと見た。魔力の砲撃が来た方向に何発か魔法を放つ。精度なんて二度の次だと方向を調整する時間すら放棄して投げた。
ここは戦場。
少しの隙が死に繋がる。
相手が格上だと言うなら尚更だろう。
狙われる危険を承知の上で煙を風魔法で晴らせば、見えてくるのは襲われる前と何も変わらない自然の光景。
けれども敵は確かにいる。
エリスが放った魔法が爆発と爆音を生み出して森を掻き乱し、その報復として一回り大きい魔弾が返ってきた。
だが魔弾が着弾する場所にエリスは居ない。
既に彼女は無詠唱魔法を複数同時に行いながら、人を超えた速さで走っている。
(回復魔法で聴力は回復……方向確認もできた。距離は近い……そこっ!)
リッカから離れるように移動したエリスから放たれるのは不可視の刃。無詠唱によって無音の風の魔法は対象者に気付かせる事なく命を刈り取ろうと迫った。
ガキィン!!
しかし容易く弾かれる。
不意打ちを受けてからの切り返しは我ながら上手だと思ったが、現実は上手くいかないらしい。
魔力探知に引っかからない程の隠密状態から刹那に発動したビーム状のアレ。即死クラスの威力を持っていたと言う事は魔力操作はさぞ上手だろう。
尚更、姿が見えない状態の中、そんな相手を魔力で確認するなんて無理だ。
(ただ相手の位置情報は掴めた。魔法を斬った音を辿れば……!!)
だから別の方法で相手を探す。
少し前まで静かだったのが嘘のように森は激しさを増していくが、その中でも風を斬る音はよく響くし印象に残りやすい。
というより鍛錬で三桁に登るほどヴォルフに斬られたなら嫌でも頭に残った。
《体よ、風のように》
風が斬られる音は脳裏にこびりつくように記憶していたが今回はそれが幸いした。後はゴール地点まで加速するだけ。
詠唱省略で魔法を発動すれば体が木の葉のように軽やかな体へと上書きされる。
『ヴォォォォオオオ!!!!』
敵も隠密行動に意味が無い事に気付いたようだ。
己を鼓舞する為に放たれた叫び声は、声というより衝撃波に近い。木々が揺れ葉は散り通り道にある障害物を揺らしながらその圧はエリスへ迫る。
やはり相手はただものではない。魔法とは無関係である自然な動作にも魔力が乗っている。魔力が乗った叫び声なんて最早ちょっとした魔法だ。
だが大の大人でも受けときれないソレは……エリスに届く事はなかった。
「微力ながら魔力を譲ってくれてありがとう!」
突風はエリスに纏う魔力の微風に受け流され取り込まれた。
無意識に行った魔物の幼稚な魔法より、精密な操作で行われている彼女の魔法が上回っただけの事。
恐怖による身震いを武者震いへ。
相手の魔力を己の魔法のガソリンにしろ。
そうして体をさらに加速させて、相手の首を取る為に鼓動を早く、殺すまでの工程を短縮させろ。
あらゆる要素を活かして自分が有利になるように動け。
殺しの化身はいつもそうやって超人と並んでいた。
飽きる事なく放ってくる相手の魔弾を、今度はジグザグ動いて木と宝珠石の岩を盾にしながら進む。
ある宝珠石はひしゃげて倒れる。
ある木は突然燃える。
ある木は、ある宝珠石は、ある木は──
そうやって自然は壊されていく。
確実に化け物の魔弾で木と宝珠石が殺されていく。
だが何度やっても彼女には当たらない。
障害物の方から魔弾へ擦り寄っているのかと思えてしまう程に木や宝珠石の岩によく当たる。
四回も五回も起きれば魔物も焦り始めるだろう。
着々と迫る相手と、状況が変わらないどころか悪化するこちら側。自信と恐怖のバランスは徐々に傾き、魔弾の精度も下がるばかり。
7度目の不発が起きた時には、エリスの目には敵の姿が見えていた。
(身長は三メートルで全体は赤い体毛。顔は熊と狼の中間っぽくて、丸太を軽く輪切り出来そうな立派な長い鉤爪か……分かった)
不意打ちして来た敵だがその正体までは不明ではなかった。エリスの脳内にある魔物図鑑に今の特徴と一致するシルバークラスの魔物が一匹。
ランク:シルバー
『ガウスヴェルフ』
(気配遮断が上手で、魔法も使用できる敵……うん、教科書通りだね)
気配遮断の基本、魔力操作が上手な魔獣。その強みを活かして、相手の魔力探知に引っかからず強力な魔法で遠くから一撃で仕留める。
ビーム状の魔法を使う話は聞いた事ないが、恐らくこの個体はガウスヴェルフの中では強い方だ。
とにかく奴に狙われた獲物からすれば姿すら見えない。魔獣としては珍しく正面突破しないが故につけられたあだ名。そこまでの立ち回りができるならさぞかし冷静に動けるだろう。
だがエリスの前に立っていた敵からは……焦りが見えた。
己が狩られるかもしれないという恐怖。
早く次の攻撃をしなければという焦り。
殺されるかもしれない恐ろしさから突き動かされる腕と魔法。
動きは早いがそれだけ。
精度は決して褒められたものじゃない。
その程度なら……
(いけるっ!!)
軽くちょっと走ればガウスヴェルフとは目と鼻の先。
自分の攻撃体制を整える為にエリスは両足で踏ん張って減速させる。だがガウスヴェルフは不幸中の幸いと爪を振るった。
つけられた名前こそアレだが、冒険者ギルドによる判定はシルバー。ただの人間が逆立ちしたって勝てない相手。
なら爪の間合いにいるなら手を出すのは当然の事だろう。普通の人間ならこれで確実に死ぬ。
まあ今回の相手は普通ではないし、これも仕組まれた罠だったが。
音速に近い速さで振られた爪を、まるで最初から軌道が分かっていたかのようにエリスは少ししゃがんで避けた。
「!?」
(胴体がら空き!)
瞬間にガウスヴェルフは魔力操作で体の防御を固める。だが時間が足りなさすぎる。魔力防御が固まり切る前に暴風を帯びた剣がガウスヴェルフを襲った。
「ガァアア!!?!」
驚きと悲鳴が混じり合った叫び声が三メートル代の魔獣から漏れ、三百キロ以上もある体が軽々と吹き飛ばされ、三メートルも距離がエリスとの間にできる。
だが致命傷ではない。
強力な打撃攻撃だったがガウスヴェルフの動きを妨げるほどではなかった。
起き上がれ。
命を狩られる前に相手の命を狩れ!
そうして反撃しようと体を起き上がった瞬間。
ガウスヴェルフの横から巨大な丸太がカーブを描いて魔獣の頭を撃ち抜いた。
「────!!!?!?!!!?」
完璧な不意打ち。
その下手人の正体はガウスヴェルフの下にある糸線……つまりここに仕掛けられていた罠だった。
脳震盪によって眼球から見える景色は揺れ足はおぼつかない。目の前に命を刈り取る敵がいると言うのにガウスヴェルフが取ってしまった行動は無防備のみ。
回復までの時間は五秒。
新人冒険者がいる状況なら短期決戦が好ましい。
短時間でも発動できる高火力一撃で仕留めるしかないか。
しかし一秒足らずの溜め時間では殺せないと判断し、覚えていた罠の位置を上手く使って作り出した数秒という僅かな隙。
だが──
『俊足』
『突風』
『爆発』
『焼却』
《言霊、四発装填》
完全詠唱を終わらせるには十分だった。
『──あの世で炎と踊れ』
抜刀する瞬間、剣と鞘の間から漏れたのは地獄の炎だった。鞘の中で収束されていた何重にも螺旋された炎の渦が、鞘という鎖から解き離れて獲物へと襲いかかる。
剣を一振り。
絡みつくようにガウスヴェルフを拘束すれば、三メートルもの巨大は炎の渦によって姿が見えなくなる。
緑と紫が入り混じった大地の海から紅い螺旋階段が空へと舞い上がる。遥か空まで届き敵を焼き尽くした後の僅かな時間でも残るそれは、彼女の努力の結晶。
戦闘開始から一分足らず。
決着は着き、エリスの狩りは終わりを迎えた。
「先輩、良かった無事だったんですね!」
「……………………」
炎の渦があった場所をエリスがずっと見ていると、後ろから走ってくる音が聞こえた。その声の主さっきまで隠れていたリッカのもの。戦いが終わったのを察知してここまで走ってきたらしい。
「すごく強そうな魔物でしたけど」
リッカはアリスが見ている先……木にもたれかけている焼死体を見てそう言う。人の形は保っているが所々黒焦げになっていて、今にでも灰になりそうだ。
一部なんて元の形が分からないほど燃えていて完全に死んでいた。
「シルバーのガウスヴェルフだよ。今の私達にとって強敵だね」
「え、シルバー!? 確かに強敵ですが……でもエリスさん。一人で倒せてたじゃないですか! スゴイです!」
「まぁ……運が良かっただけだよ。色々こっちにとって都合のいい条件が重なったから……まぁ勝てた」
違和感。
「割と平気そうに見えますけど?」
「怪我はしてないからね。でも奥の手使ったから中身はすっからかんだよ」
ガウスヴェルフは確かに強かった。全ての攻撃を避けていたから圧勝してあるように見えただろうが、一発でも当たればエリスは大怪我していただろう。
出来うる限りの最善手を取り続けて勝つ事ができた。
それが今回の結果だ。だが……
あまりにも上手く行きすぎている。
(そもそも……なんでガウスヴェルフは焦っていたんだろう?)
違和感といえばエリスは疑問に思った事が一点ある。
接敵した時に見せたあの焦りの表情。恐怖に突き動かされていたが、それにしたって怯え過ぎている。
最初は攻撃が当たらない焦りからきているものだと思っていた。
だがよく考えてみればおかしい。
戦闘中は興奮していて気付かなかったが、他の魔物と縄張り争いといった殺し合いをしている化け物が初めて会ったエリス如きに怯えるのだろうか?
むしろ格上に怯えている方が辻褄が合うような……。
『気配を遮断する敵は気をつけた方がいい』
エリスはかつて先輩に教わった事を思い出した。
なぜこのタイミングに起こったのか。
『獲物が一番安心した瞬間に、奴らは襲ってくる』
さっきから感じている違和感のせいか?
それとも─────リッカの背後に魔物が居るからだろうか?
「リッカ、避け──────!!!」
「え?」
風魔法を発動した時には既に遅かった。
鉄を容易く切る爪が風を切る音。
肉が切れて地面の雑草が血で濡れる音に──
──吹き飛ばされた片腕。
「がぁ、ぁああぁぁああああ───!?!?!!!」
油断した罰則は重いものだった。
罰を受けたのはエリスではなく隣にいたリッカ。
エリスが気づいた時には……彼女の左肩から先は……消えていた。
「リッカ!?」
己の醜態に怒るエリス。
罰を受けて声にならない声を上げるリッカ。
そしてそれを嗜めるように見下す魔物。
消えた左片腕を探すように右腕を動かす彼女を、楽しみながら見ている魔獣の姿を端的に言えばガウスヴェルフの色違いだ。
だが腕は一回りも大きく、黒に染まっている爪は禍々しさを感じる。何より紫に染まった目が普通の魔物とは違う事を証明していた。
そしてその敵をエリスは理解しているからこそ、嫌でも知ってしまう。
『ディピィグルヴェルフ』
ガウスヴェルフの上位種。
今のエリスではどうやっても勝てない相手だ。
いやそれ以前の問題だ。戦いが始まる前からエリスはディピィグルヴェルフに負けていた。
(嵌められた……! 自分の下位種のガウスヴェルフを脅してこっちの戦力を削らせたなコイツ!)
新しいオモチャでも見つけたからだろう。体に多くの宝珠石を埋めているディピィグルヴェルフは、愉快に口を歪めている。
敵の魔力も体力も削った。
役に立つ事は無いだろうが、遊び半分に回復役らしき女の片腕も斬った。
ここから始まるのは一方的な蹂躙である。
故にディピィグルヴェルフは思う。
さあ……狩りを始めようじゃないか。




