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コードネームNo.3【任務】

「うわぁ〜!!このクレープすっごぉ〜い!!」


駅近くの商店街にあるクレープ屋のベンチに座って綾瀬は自分の持っているクレープを見ながら目を輝かせていた。


綾瀬の顔1つ分以上はある巨大なクレープには綾瀬の注文通り半分に切られた真っ赤な苺と生クリームがこれでもかと言うほど詰め込まれている。


「ねぇねぇ拓夢くん!拓夢くんは何頼んだの?」

「俺?俺はコーヒーだ」


「コーヒーだけ?」

「ああ、昔からあまり甘いものが得意じゃなくてな。あの店にあるのはコーヒー以外全て甘いものそうだったから」


「そうだったんだ、ごめんね苦手なものに付き合わせちゃって」

「いや、大丈夫だ。俺は綾瀬の護衛だから綾瀬の行くところについて行く必要があるしなにより綾瀬の楽しそうな顔を見るだけで報酬だからな」


その言葉を聞いた綾瀬の顔は何故か手に持っているクレープの苺と同じ位の赤さになっていた。


「綾瀬、大丈夫か?」

「ひ!う、うん…大丈夫だよ!いや〜このクレープ美味しいな〜!!」


綾瀬はまだ少し赤い頬が膨らむくらいクレープを一気に頬張った。

その光景はまるで餌を運ぶリスのようだ。


+ + +


「う…思ったよりお腹に来た…」

「だから頼む時に大盛りはやめとけって言ったろ」


「だって!美味しいものは沢山食べたいじゃん!!」

「それで全部食べきれなかったら意味ないだろ…」


俺は綾瀬と会話をしてため息をついた。

その時俺はあることに気がついた。


『これは…視線?それも殺意のこもった物だな』


この情報だけでも明らかに綾瀬を狙っている奴らだと分かる。

運の良い事にここは人通りのほとんどない路地裏。

目撃者は無し。


「綾瀬」

「ん?なに?」


「ちょっと俺が良いって言うまで目と耳を塞いでおいてくれる?」

「え…あ、う、うん、わかった」


綾瀬が言った事に従ったのを確認してから俺は視線の方向を向いた。


すると物陰から3人の男達が出てきた。


「おいおい、こんなガキが護衛だぁ?舐められたもんだなぁ!」

「こんな奴に3人も要らないだろ〜一人で十分だって〜」

「さっさと始末してターゲットも殺しちまおうぜぇ!!」


「はぁ…お前らそのセリフまじで雑魚っぽいからやめた方がいいぞ」

「あぁ!?なんだとゴラァ!」


俺の放った挑発にかかった先頭の筋肉ゴリラが殴りの体勢で突っ込んできたので俺はこいつより早く動き腹に拳をめり込ませた。


見かけで分かるようなパワーがあったとしてもあまりに殴りの速度が遅い。


「ごふぅ!」


無駄なくらいにデカい巨体は宙を飛んで壁に激突し気絶した。

必要に応じて手加減はしたので死んでいないはずだ…多分。


「お、おい!なんだあの威力!明らかにガキの素人がする殴りの威力じゃねぇだろ!」

「相手の情報が一切ない状態では疑うことから入り疑い続けろと上から習わなかったのか?どっちが素人なんだか」


「くっそ!思い上がるなよクソガキ!」


左側に立っていた男が手にナイフを持ってこちらに近寄ってきた。

刃渡り15センチ程のサバイバルナイフのような物を両手で掴んで突き出している。


「ナイフの使い方がまるでなっていないな。よくそれで殺し屋が出来ているのかが不思議なレベルだぞ」


俺は男が突き出しているナイフの柄の部分があるであろう手の位置を思いっきり横から蹴り上げた。


すると男の手からナイフがすり抜け飛んで行ったので驚いている男のみぞおちを思いっきり蹴り気絶させた。


「ナイフを扱う時は両手で持って突き出すのではなく片手で持って相手の隙を見つつタイミングがあれば切りつける。そうしなければ今のように避けられた時の対応が遅れて命取りになるからな」

「お、お前!い、一体何者だ!!」


残っている1人の男が座り込みながら叫んだ。

まるで産まれたての子鹿のようにブルブル震えている。

殺し屋としてあるまじき姿だ。


「俺は元殺し屋【紅月】だ。お前らに分かりやすく説明するなら【不見の死神】とでも名乗れば分かるか?」

「ひぃ!そ、そんな…まさかお前があの最凶の殺し屋だとでも言うのか!?」


「その通りだ。まぁお前らに名乗ったところでどうだっていいからな。俺はさっさとこれを終わらせたいんだ」


そう言って俺は仕込ませていたガバメントを取り出し男の頭に突きつけた。

すると男は白目になり泡を吹きながら気絶した。


+ + +


『もう襲われたのかい!?まだ依頼開始から24時間経ってないというのに済まないねぇ』


ショッピングモール内の一角にある場所で俺は依頼主の綾瀬の父親と電話をしている。

さっきの殺し屋3人の身柄を回収するためにはこいつに事情を説明しなくてはいけない。


「ああ、それに関してはどうでもいい。仕事として雇われたのだから初日から雑務が入ったところで何者おかしな事は無いだろ?」


『…3人の殺し屋の撃退を雑務って…』

「所詮は日雇いレベルの雑魚共だ。これならまだ猫の世話の方が大変だな」


『そ、そうか』

「というかそんな雑談はどうでもいい。駅近くの商店街から出た3本目の路地裏の青いゴミ箱の中に気絶している男が3人入ってる。できるだけ早く回収しとけ」


『ああ、ありがとう。それじゃあウチのものを向かわせるよ』


殺さずに身柄を引き渡してくれなんて依頼はなかなか来ない為なんだか不思議な気分ではある。


「あ!拓夢くん電話終わったの?」

「ああ、ちょっと綾瀬のお父さんに言っておきたいことがあってな」


「私のお父さん?」

「そうだ。内容はちょっと言いづらい事だから言えないがな」


さすがに殺し屋を3人捕らえたから回収してくれなんて言う電話内容を説明する訳にはいかないだろう。


「そっかぁ〜じゃあ仕方ないね!!」


綾瀬があまり察しのいい子じゃなくて良かったと心の底から思った俺だった。

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