026:黒原という男
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夏休み後半、川越ダンジョンで見知った男とそのパーティーが、インターンに引き連れられて、この数日間は毎日姿を見せていた。
秋に開催される『川越ダンジョンまつり』に向けて特訓に勤しんでいる……のだが、特訓の方向性がかなり斜め上を行っている。
「おぼっちゃん、まだダンジョンを周回しますか」
「ああ、最低でもあと一周は回りたい」
「承知しました」
インターン先のリーダーである鈴高が、1Fへと繋がる階段手前で黒原に対してへりくだる態度で確認を取ると、再びB1奥へと先頭で進み出すと、黒原のパーティメンバー五名がそれに続き、インターン先のサブリーダー丸川が最後尾につく。
黒原のことを”おぼっちゃん”と呼ぶこの男は、黒原工務店お抱えの探索者チームのリーダーを務めている鈴高宏という男で、黒原の父親からの依頼で、黒原のパーティーの面倒を見ている。
時々魔物と遭遇し、そのたびインターン先の鈴高と丸川は魔物を倒すのだが、パーティーメンバーの五人は何かを探すように周辺をキョロキョロと見渡すだけで、装備を装着してい
るにもかかわらず魔物に対して完全無視している。
本来意図したインターン制度とは、まるで正反対の不思議な行動だ。
「黒原さん、あそこ辺りは使えませんか?」
パーティーメンバーの1人が、少し先の天井を指差して声をかける。指さした先には、一メートル程度の幅の岩が、氷柱のように垂れ下がっていた。垂れ下がっている長さはおおよそ三メートルくらい。どこかに衝撃を与えれば落下してきそうなほど不安定に見える。
「そうだな」
そう言いながら、黒原は岩の柱に手をかざし、何かを試みている様子。その数秒後、黒原は納得したようにニヤリと笑う。
「点火!」
その瞬間、岩の柱の根元が爆発し、地面に落下しダンジョン内には地響きが響き渡る。
「黒原さんのスキル【爆薬】でしたっけ? なんか前よりえげつなくなってませんか」
「ああ、先週【+3】にバージョンアップして、破壊力と爆破のコントロールが出来るようになった。これでヤツに一泡吹かせてやるぜ」
「今みたいな爆破で落下した岩石の直撃食らったら、死んじまうんじゃないですか」
「ダンジョン内の事故なら別に問題ねーだろう」
「なるほど! 黒原さん流石です」
インターンを指導する立場にある二人にも、この会話は当然聞こえているはずだが、どうやら聞こえないふりをしているようだ。指導する気がないというよりは、好き勝手にふるまう黒原たちの行動を、面白がってむしろ助長するようにしているようにも見える。
鈴高達二人は、黒原工務店の社長ともうまくやっているので、そもそもが同じ穴の狢なのかもしれない。
「このまま、罠に使えそうな箇所を、あと数ヵ所見付けるまでは周回するぞ」
「了解っす!」
(ヤツさえいなくなれば、パーティーメンバーの三人のうち一人くらいはオレ達のパーティーに勧誘することができるはず。絶対この計画を成功させるぞ)
水面下でそんなことを思案しながら、黒原は川越ダンジョンを周回するのであった。




