続ー23サツキ編 結婚式と披露宴
城に着いた私達は、ニィの案内で妙に豪華な部屋へとやって来た。ここ、何の部屋かなぁ。やたら人が集まって歓声上げてるけど……って、え!?
何気なく部屋の奥に視線を移して、私は驚いた。あの、やたら豪華な椅子に座ってるのって……、
「レムじいちゃん!?」
そうだよ、レムじいちゃんだよ! しかも、ちょうちん袖の服着て、かぼちゃパンツに白いタイツ穿いて、マント着けて、おまけに頭には宝石をちりばめた黄金の冠をのっけてるじゃない!
この『いかにも』な格好、まさかレムじいちゃんって……。
私は慌ててダンを見上げる。
「ダン、レムじいちゃんって――」
王様なの? という言葉を言う前に、周囲が急にざわめき始めた。え? 何、この雰囲気?
戸惑っていると、レムじいちゃんが立ち上がり、私達の前に立って優しく話し始めた。
「サツキちゃん、ダンが帰ってきて良かったね」
「レムじいちゃん……、えーと……」
王様なの? って訊いてもいいのかな?
ちょっぴり迷う私の肩に、ダンが手を置いて囁く。
「サツキ、違う」
ん? 違う? 王様じゃない? 首を傾げる私に、レムじいちゃんが言った。
「『レムじいちゃん』がいい」
そして頭を撫でる。
うーん、結局王様なの? まあ、いいけど。
で、そのレムじいちゃんが、ニィから紙を一枚受け取って、読み始める。
「ダン・ワーガルの、愛の×××と、愛の×××と、愛の×××を認める」
…………。
私は耳を疑った。はい? 今、なんていったの? 知らない言葉ばっかりで、いまいち分からなかったけど、でも確かに聞こえた。愛を――認める? 何それ?
私はダンの腕を掴んで、顔を見上げた。
「ダン……」
愛を認めるって、何?
するとダンは、何かを訴えるように私をじっと見つめ、それから私の左手を取った。ダンがポケットから取り出したモノが光る。嘘、それって……!
私の左手の薬指、そこに指輪がはまった。更にダンは、ポケットからもう一つ指輪を出す。
ペアリング、愛を認める……。つまり、これは――そういうことなの!?
ダンからもう一つの指輪を受け取り、私はそれをダンの左手の薬指にはめた。
「ダン……!」
思わず抱きついた私の顎を軽く持ち上げ、ダンが口付けをする。誓いの口付け、だよね。やっぱりそうなんだ。
これは……、結婚式だよね!
ダンの顔が離れると、みんなが拍手をしてくれる。次いで、机が用意された。机の上に置かれた紙に、ダンがサラサラとサインをする。
「サツキ、名前を」
うん。分かった。
受け取ったペンで、私も紙に――婚姻届にサインをした。レムじいちゃんが二人のサインを確認して、大きな声で言う。
「さあ、お祝いだ!」
促されて大広間に移動すると、そこには天井まで届きそうなくらい大きなケーキが用意してあった。
披露宴まで用意してたの? よく見たら、お父様とお母様、それにマチルダとヤンも居るじゃない。散々待たしたくせに、お城で結婚式と披露宴なんてサプライズ用意してるなんて……もう、馬鹿! 嬉しいじゃないの!
「ケーキだ」
うん、分かった。
「ダン」
係りの人から渡されたナイフを二人で握る。そしてゆっくりと、二人の初めての共同作業、ケーキ入刀をした。
う……、涙が溢れてきたよ。
「サツキ……!?」
私はダンを見上げて訊いた。
「愛してる?」
「ああ、当然だ」
ダン……。
ダンが私を抱きしめる。周りから聞こえる、「おめでとう」の声。ふと見ると、そこには屋敷まで押しかけてきた、ダンの浮気相手の姿もあった。
あの人達に勝ったんだ、私! ダンは私のものなんだから、名実ともに妻になったんだから!
もう絶対、浮気なんてさせない!
私はみんなに見せつけるように、ダンにギュッと抱きついた。




