51話「非才無能、改めて問いかける」
一つだけ、はっきりしていることがある。
俺とマリィだけではハーゲンティに勝てない。
それは、手数の問題だ。
『錬金』の権能による質量範囲攻撃を、魔剣一本で捌ききることはできない。
できたとしてもそれは一時的なものであって無限には続かない。
「だから、俺達の勝機は一つだけだ」
『《裂》』
「UO?」
裂空斬による真空刃をゴーレムに向かって放つ。
これまでの応酬で、効かないことはわかっている。
だが、一瞬ではあるが視界をふさぎ動きを止めることはできる。
その隙を見つけて、駆け出した。
「私を倒しに来ますか。なるほど、受けて立ちましょう」
ハーゲンティは、俺の狙いをハーゲンティ本体を殺すことだと判断したらしい。
蹄で地面を踏み鳴らし、ダンジョンの床から黄金色の蔦を生やし、自身の周囲に展開し始めた。
その判断は決しておかしくはない。
ハーゲンティを殺せば奴の制御下にあるゴーレムも止まるのだから。
だからやつの読みは決して的外れではなくて。
だからこそ――俺の狙いまでは読めなかった。
「待て、貴方、どこに向かって――」
俺の狙いはハーゲンティではない。
全く別のものだ。
俺は、黄金像に駆け寄った。
「はははっ」
ハーゲンティは大笑する。
よほどおかしかったのだろう。
彼の中では、そうとしか考えれないだろう。
「仲間を助けに来ましたか?無駄なことです。私が望むか、私が死なない限り《黄金化》は絶対に解除されません。つまり、お仲間に駆け寄っても無駄なんですよ?」
「…………」
「馬鹿なことをしたものです。無意味であり、何より醜悪。ああ、なんと愚かで醜いのでしょうか?」
ハーゲンティが何やら喚いている。
だが、雑音は耳に入ってこない。
むしろ、思考は研ぎ澄まされていた。
前々から考えていた。
元々、メルフィーナはダンジョンの深層に至った、Sランクパーティのメンバーだった。
加えて、【医師】の恩寵を持ち、治すことに関しては誰よりも優れている。
であれば、彼女ならば持っているのではないかと思った。
いずれは、聞き出して、金を積んで交渉することさえも考えていた。
それこそ、Sランク冒険者になった後で、大金さえ手に入れてしまえば
けれども、聞き出すことはできておらず。
今となっては。
それに、賭けるしかなかった。
「マリィ!」
アイテムボックスに、剣を振り下ろす。
万象両断の剣はアイテムボックスを破壊、中身がぶちまけられる。
「あった」
小さな瓶に入った、ヒスイ色の液体。
それを、俺はよく知っている。
写真で何度も見たから。
もう何年も、それを手に入れるためだけに生きてきたから。
『発見。万能霊薬、見つけました』
「ああ!」
俺はすぐさま『万能霊薬』の蓋を開ける。
この薬は、いかなる病も治すことが出来る。
実際、『黄金病』にも効いたという資料もあった。
時価十億を超える薬だが――。
「あとで弁償するから、許してくれ!」
翡翠色の液体を、三人に振りかける。
ただ、仲間を救うためだけに。
「おや、なるほど、そう来たか」
「あれ、わたし、死んだはずじゃ」
「わ、お兄さん、ボロボロ!」
「モミトちゃん……ありがとう」
四者四様の反応を示した仲間たちに、俺は簡潔に状況を伝えた。
「4人とも、一緒にこいつと戦ってくれ」
敵は恐るべき怪物だ。
はっきりいって、今すぐ逃げ出しても、あるいは意識を手放したとしても責めることは誰にも出来ない。
「了解。あ、貸一つね」
「や、やります」
「作戦考えてね?」
「まあ、もう逃げれないしね。一連托生だよ」
四人は頷いてくれた。
その意思こそが頼もしい。




