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英雄魔術師はのんびり暮らしたい  のんびりできない異世界生活  作者: 柊遊馬
第二部

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1903/1908

第1893話、違和感の正体


 包囲される状況で戦うなんて、避けられるなら避けるべき状況である。

 まったくそう。まぎれもなくそう。

 だから俺は、討伐艦隊を移動させることにした。地上部隊を載せた艦艇は地上へ送り返す一方、戦闘――護衛艦隊は残し、向かってくるシェイプシフター艦を一掃することに決めた。


「艦隊転移!」


 戦術モニターで敵艦の位置、移動速度、針路を把握した後で、魔導放射砲で十数の敵を一撃で吹き飛ばせる位置へ討伐艦隊を転移させる。

 敵は、目標としていた俺たちの同盟艦隊を見失い、味方と衝突しないように速度を緩め、索敵をはじめた。

 その混乱が手に取るようにわかるが、すぐに俺たちの転移場所がわかり向かってくるだろう。


「『ヴァリアント』、『ウォースパイト』、魔導放射砲、発射!」


 二隻のドレッドノート級戦艦が、敵シェイプシフター艦隊にバニシング・レイを放ち、それらを蒸発させた。

 今ので敵艦27隻が消滅。残りは8、いや9隻だが、おそらく次のウェーブがくるんでしょう――


『敵の増援、出現」


 シェイプシフター・オペレーターが知らせる。戦術モニターにも、新たな赤い光点が複数点灯。

 ほらみろ! それも一方向だけじゃないところが、やってくれる。


 まとめてやっつけられるよう誘導のち掃射だな。まあ、これもそのうち対策してくるんだろうけど、やれるうちはやっておく。

 などと対処していると、ラスィアが副長席から顔を上げた。


「ジン様、違和感の正体がわかりました」

「報告を」


 戦いながらではあるが、話を聞くくらいの余裕はある。それで?


「地形データの調査をしていました」


 ダークエルフの副官は端末を操作し、戦術モニターの一部にデータを共有させた。


「ヒントは『丘一つ、丸々シェイプシフターが化けていてもおかしくない』という言葉です」


 過去の地形データと、つい先ほどスキャンしてとられた地形データ、それらを比較――からの地形データ同士を重ねる。


「おや、これは……」

「はい。前回観測したデータに比べて地面がおおよそ50センチほど高くなっています」

「50センチ!」


 ベルさんが目を丸くした。


「こんな短時間で土砂が増えるもんかよ。しかもこんな広い範囲で――」


 戦術モニターで土が嵩増しされている範囲が表示される。この広大な平原のほぼ全てがそれなんだが?


「これって……あれだろ?」


 ベルさんが俺を見た。言いたいことはわかるよ。俺も信じたくないが。


「ああ、増えた分は全部シェイプシフターが化けているやつだ」


 なるほどね。見つからないくせに突然敵が現れるわけだ。


「こちらが魔導放射砲でごっそりやるから、地形に変身することで集まっているのを隠しつつ、地上への出入り口近くに布陣していたわけだ」


 奴らも必死だねぇ。そうやって潜伏してやり過ごそうとしたわけだ。俺たちが敵を追い込んだと思っているのを後ろで何食わぬ顔で見守りつつ、戦いは終わったと地上へのゲートを開いたところで一気に……というやつだ。


「どうするよ、ジン。まあ、やっつけなきゃいけないのは確定だが」

「やっつけることは決まっている」


 俺はベルさんのそれを繰り返した。


「で、どうするとは?」

「地上降下は中止しただろ?」


 揚陸艦と空母は帰した。まだ掃討段階じゃないから。


「地上に降りないわけだが、今日のところは出てくる奴らを叩いて終わりにするのか、それとも下で隠れている奴らも叩くのか……って聞いたんだよ」


 そこでラスィアが眉をひそめる。


「地上で隠れている敵は叩くんじゃなかったんですか?」

「叩くよ」


 俺は腕を組む。


「だがそれを今日やるか、次にやるかって話をしているんだ」

「今日できることは今日やるべきでは?」


 仕事の話かい? いや、こっちも仕事の話だけど。


「今日吹っ飛ばしても、次にきた時、また地形になりすまして戻っていたりするんだろうな、って考えると無理に今日吹っ飛ばさないほうがいいんじゃないか、とベルさんは言いたいんだよ」

「次はもっと巧妙に擬装してくるかもしれんしな」


 ベルさんは口をへの字に曲げた。


「やるなら一気に。中途半端に知恵をつけさせると、ろくなことにならねぇ。ウーラムゴリサに陣取っていた山賊もどきとは頭のデキが違うからな」


 地底シェイプシフターは学習している。倒しても別個体がそれを目撃すれば、そこから情報は広がっていく。共有し出すから、末端の一匹でも雑魚呼ばわりできない。

 ラスィアは首をかしげた。


「では、ベルさんは、今日のところは撤収すべきだと?」

「何か言われるか?」


 ベルさんが俺の方を向いて聞いてくる。俺は肩をすくめる。


「そりゃあ軍や同盟議会も、ほとんど戦力を残している状態で撤退とはどういうことか、って問うてくるだろう」

「余力がある時に撤退は、あり得ませんからね」

「敵さんの規模を考えりゃ、余力なんてあるか?」


 ベルさんが皮肉げな顔になった。まあ、そうね……。


「戦う前から弾薬不足になると察してしまった場合ってやつだからね。圧倒的な物量差……。そもそも想定していた状況と違う」


 言い訳は立つだろうが、あまりいい印象はない。

 とはいえ、これは杞憂(きゆう)で終わった。

 地底シェイプシフターは、次々と艦艇を送り出してきて、こちらの艦隊は魔導放射砲の在庫が三分の一にまで消費してしまったのだ。


 効率よく立ち回ったんだが、これは地上掃討に火力が不足するのが、コンピューターの計算でも出た。

 結果、撤退推奨、と旗艦コアが判定をするのであった。……これは仕方がないね。

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― 新着の感想 ―
こりゃもうホウ酸団子でも食わせるしかなくね(゜д゜)
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