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打ち砕くロッカ   作者: ジェームズ・リッチマン
第四章 輝ける姿

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杁006 購入するブーツ

 ミネオマルタの杖市場から、ジューア魔具店横の脇道を抜け、住宅地帯へ。

 杖市場よりも幾分静かな通りをさらにずっと行けば、生活用品を取り扱う店が立ち並んでいる。

 目移りする雑貨類を振りきって更に進めば、段々と日用品とは言い難い、取っ付きづらさの目立つ店が並び始めてくる。

 今私達がいるブーツ専門の靴屋も、そこにひっそりと佇んでいた。


 店内は明るく、客こそ少ないものの、しっかり体裁を整えて営業されている。

 私がよく見知ったタイプの作業用ブーツもあれば、のっぺりした表面の変わったものもあるし、外観のみを追究したような、可愛げのあるブーツも、目立つ場所に置かれていた。

 ブーツと一口にいっても実に様々だ。

 しかし私の買うものはたったひとつ、これは動かない。私はこういう物に目移りはしないタイプなのである。


「沢山あるね」

「お店や職人からいろんなブーツを集めて売ってるのよ。直接の販売じゃないから高いんだけど、種類は豊富よ」


 この店には、ソーニャの案内でやってきた。

 ルウナとの昼食を終えて一足も二足も遅く講義室に戻ると、ソーニャがぼーっとしながら座っていたので、連れてきてもらったのだ。

 眠っていたり、ぼーっとしていたり。

 人のことは言えないけど、私は時々、そんな彼女の危うさが心配になる。


「あ、ロッカ。これ良いんじゃない?」

「どれ?」


 ソーニャが指さしたのは、黒っぽいロングブーツだった。

 ヒールも落ち着いた高さだし長さもある。けど、ちょっと違う……。


「もうちょっと厚みのあるやつがいいかな」

「あ、厚み?」

「うん、石の破片が勢い良く飛んできても大丈夫なくらいの」

「そんなこと、ミネオマルタで出くわす状況じゃ……」

「ない?」

「……あるかもね」


 ソーニャは私を見て納得してくれた。

 うん、そうだ。あるんだよ。割と、何回も。


 それに薄手のブーツだと、何か落ち着かないというか。

 柔らかいものではなく、硬い生地のブーツが好みだな。


「じゃあ、これ?」

「おっ」


 しばらく物色していると、またしてもソーニャが候補となる品を発掘した。

 目につきにくい場所に並んだ場所から拾い上げられたそれは、以前に私が履いていたような物と同じ、茶褐色のロングブーツであった。


「良い、良いねこれ。こういうの探してたんだ」

「ふふん、私にかかればこの街で見つからないものはないわよ」

「ありがとう、ソーニャ! なんだか、私、いつも世話になっちゃうね」

「いいのよ、見てまわるだけでも楽しいしね。それに、ご飯も奢ってくれるって約束してくれたじゃない」

「それは、それだけどさ」


 ブーツを自分の脚に並べて置いてみる。

 うん、高さもちょうど良さそうだ。サイズも、こうして見る限りでは問題ないだろう。

 多少の誤差は、横のベルトで調節すれば問題ない。


 店を教えてくれて、望みの品を見つけてくれたソーニャには、感謝をしてもしきれない。

 ご飯を一度奢った程度では到底返しきれないものを、今までのこともあるし、私はさんざん受け取るばかりである。

 そろそろ、返さなければならない時だろう。


「私、ここにきてからずっと、ソーニャに助けてもらってばかりだし……何か、手伝えることがあったら力になりたいんだけど」

「えー? 手伝い?」


 ソーニャが私に何を頼もうとも、クラインのような頼み事をしてくる事はないだろうという確信がある。

 けどあまり繊細な事はできないし、頭も悪いから学園関係の手助けはできない。

 彼女にできないような力仕事なら、私にはうってつけだ。

 そんなところで恩返しができれば、良いんだけど……。


「うーん……手伝い?」

「手伝い、なんでもいいよ」

「じゃあ、いつか荷物持ちをやってもらおうかしら。おっもーいの、持ってもらうから、覚悟しなさいね」

「それだけ買うってことか……その買い物、むしろ楽しみかも」

「ふふふっ」


 都会での暮らしも、悪くない。


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