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打ち砕くロッカ   作者: ジェームズ・リッチマン
第二章 貫く鉄錐

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擦022 飛び交う鉄槌

「“スティ・レット(いでよ鉄槍)”」


 喧嘩の癖が土壇場で露出した。

 振られるメイスを大きく、後ろに跳んで避けてしまったのだ。

 クラインからは何度も、地面から足を離すなと言われていたのに。

 貰った指導書にだって書いてあった。


 大失敗だ。

 空中では、どこへ逃げようもないのに。

 ナタリーのメイスから、鋭い鉄針が撃ち出される。


 妖しい魔光の煌き。光の中から伸びる、黒光りする鋭利な殺気。

 絶体絶命の状況下、私は反射的に左手の杖を向けていた。


「“ステイ(顕鉄)”!」


 それは私が最初に覚えた鉄魔術。

 魔術投擲を習得していなければ、杖の先から大きな岩を出すだけの、初等術中の初等術。

 針の先が私の腹を狙う中で、ほとんど無意識のうちにこの術を発動させていた。


「うぐっ」


 杖から生み出した岩に、針が突き立てられる。直撃は防いだ。

 しかし針は岩ごと私へと押し寄せ、腹部を強く打ち付け、浮いた身体を更に後ろへ押しやる。

 服をえぐる岩の感触。飛び退いた最中だというのに、凄まじい衝撃だ。


 そして目先の痛みだけに留まらない、死傷を伴う第二波こそが最も恐ろしい。

 もしも鉄針が岩を貫通すれば、それはただ痛いだけに収まる話ではなくなる。

 勝利判定の厳しい上級保護の決闘とはいえ、体の中心を貫かれてしまえば即終了だろう。


 頭大の岩が内側から軋む。

 岩に亀裂が走る嫌な音だ。

 針は私の岩石をいとも容易く、レモンを等分に切り分けるように、綺麗に打ち砕いた。

 鉄針は勢いに余力を残して、更に私の腹部へと迫る。

 切っ先の鈍っていない、黒光りする先鋭が頭を見せる。


 岩の防御は壊された。避ける手段はもう残されていない。

 なら、私はこのまま大人しく串刺しにされるのか。

 そんなのは、ありえない。


「させっかァ!」

「!?」


 身体は空中で泳いでいる。岩の衝突で体勢も崩れた。

 それでも足掻いてやる。

 魔道士的には常識はずれだろうが、私自身の本能を総動員させてでも、絶対に最後まで諦めない。


 私はこちらへ押し寄せる鉄針を右手で掴んだ。

 正面からの強烈な鉄塊の重力が、右手を通じて力を入れた全身を襲う。

 それでも、耐える。

 凶器を掴む右腕に力を込める。

 身体強化は使わない。それでも全力で、自力だけで受け止めてやる。


「ぐぅ……!」


 鉄針の重みが腕の力に勝り、握力をすり抜けて腹部へ近づく。

 ブーツが床を擦り、身体は奇跡的に立ったまま、床を滑る。


「へっ……」


 そして、脚が止まった。

 私を食い殺そうとする鉄針の勢いは完全に死んだ。

 右腕の中で、なんとか完全に勢いを止められて。


 会場に大きな歓声が響いた。

 それは一撃を防ぐだけの、短い時間の攻防だったかもしれない。

 けど真正面からナタリーの魔術を防ぎ、受け止めた。回避ではなく、防ぎきった。

 観覧席は、そんな一場面に打ち震えたのだ。




「見たか、ナタリーのスティ・レットを正面から、あんな僅かな術で防いだぞ」

「詠唱はただの“スティラ(顕鉄)”ですよね?」

「鉄の術を、あれだけで受け止めるのか」

「身体強化でしょ?」

「転送されてない、不正はないらしい」

「おいおい、あいつバケモノかよ。ワイヤードみたいだな」


 右手に掴んだ大きな鉄針を肩へ担ぐ。持ってみれば、かなり重い生成物だ。

 魔術投擲ではこんな危なっかしいものを、杖を振るだけで相手に投げられるのだから、恐ろしい。

 心底うらやましいぜ、ナタリー。

 私はそれを防いだけどな。


「……さすがに、初めてだよ。アタシの“スティ・レット”を、強化無しに、手で掴んで……受け止めた奴はよぉ……!」

「ふっ」


 ナタリーの声とメイスは、屈辱と怒りに震えていた。

 魔道士が誇る自らの魔術を、岩というちょっとした遮蔽物はあれど、ただの腕力で防がれたのだ。

 それは予想外でもあり、しかしあまりに原始的すぎる方法であるが故に、彼女のプライドは大きく傷つけられた。

 私がお高く止まったトゲ女の顔に泥を塗ってやったのだ。

 この私が。


「もう一度やってあげようか?」


 ナタリーとは違い、何も撃ち放てない杖を差し向ける。

 短気な相手の脳を沸点まで押し上げてやるには、充分な仕草と言葉だった。


「“スティ・リオ・レット(いでよ鉄槍)”!」

「“スティ(鉄よ)ラギロ(隆起し)アブローム(柱となれ)”!」


 三本の鉄が石柱にブチ当たり、闘いの様相は振り出しへと戻る。

 だが、相手の心は揺さぶってやった。

 ここからだ。

 周囲への意識が散漫になったこれからが、私の攻撃機会を増やす本番となるのだ。


 会場も良い感じに盛り上がっている。

 冷や汗は出てきたものの、何の問題もない。試合再開だ。




「“スティ(鉄よ)ラギロ(隆起し)アブローム(柱となれ)”!」


 石柱は頑丈だ。三本までならば、なんとかギリギリ鉄針の勢いを受け止めきれる。

 上部に当てられると衝撃によって倒れてしまうだろうが、私狙いで飛んでくる低い弾道では、柱を倒すことができない。

 私の石柱の質とナタリーの術の威力が偶然にも、ギリギリの所で最適なバランスを取っていたのだ。

 これは実戦に及んだ今になって初めて見えてきた幸運である。

 もしも私の石柱が通常の鉄針の一撃で倒れてしまう物であったならば、この闘いは成り立たないからである。


「どぉんな環境戦だよ、こりゃあよ……いや、環境か? これ」


 壇上は無数の石柱で埋め尽くされていた。

 鉄針はところどころの床に突き刺さり、岩から枝のように伸びるものだってある。

 モノで埋め尽くされた戦場である。視認性も段々と悪くなってきたし、不用意な動きをすれば、深く固定された鉄針にぶつかる危険もある。

 元々は平坦な壇上だったことが信じられない戦場だ。


「……」


 石柱の影に隠れながら、足元に落ちていた白い石を握る。

 この石は闘技演習フィールドの床の石だろう。軽く、脆い材質だ。乾いた泥岩に近い感触といえる。

 材質や硬さなどはどうでもいい。投げることができれば、私としては何だって良かった。


「ふッ」


 それを斜め前方に高く投げ放つ。

 小石は石柱の遥か上を飛び、鋭い弧を描いて下へと落ちてゆく。


 小さな音が遠くで響き、それに伴い誰かの足音も聞こえてきた。

 ナタリーの足音だ。


「……!」


 私は足音を忍ばせて、素早く石柱の影から飛び出す。

 お互いに姿を見失いつつある中で私が仕掛けた、騙し打ちの奇襲作戦だった。

 ナタリーは私の接近に気付いていない。

 小石を落とした場所から迂回に迂回を重ねた私は、既にナタリーの警戒網から抜け出していたのだ。


 ナタリーのすぐ近くまでやってきた私だが、さすがに近付き過ぎれば足音が聞こえてしまう。混沌とした歓声の力もあるとはいえ、五メートル以内にまで接近されれば気取られる危険は高い。

 相手にはトゲ付きのバトルメイスがある。

 さすがの私も、身体強化無しの状態でそいつとまともにやりあうつもりはない。私の右腕は義肢といっても、しっかり痛覚が通っているのだから。


 だから、石柱を倒す。

 当たれば一撃必殺間違いなしだ。


「っ」


 息を殺して石柱を蹴る。

 重量級の柱はぐらりとぶれて、視界の影にいるナタリーへと倒れこんだ。


「やっぱそういう場所にいたか」

「!」


 とはいえ、そう上手くもいかないのがこの攻撃だ。

 どうしても僅かな音は出てしまい、倒れきる前に相手に悟られてしまう。

 五メートルという中途半端すぎる距離は、攻撃のリーチ以前にそんな弊害をもたらしていたのだ。


 ナタリーは軽やかなステップを踏んで倒壊の危険区域から離脱する。

 そのままの動きで、姿を露わにした私へメイスの狙いを定めた。


「やるじゃないの、ロッカちゃん。まさかその馬鹿のひとつ覚えだけで、アタシがここまで手こずるなんてね」

「手こずる? “追い詰められる”の間違いだろ」


 足はいつでも動けるように。

 杖を握る左手はいつでも床を叩けるように、神経を研ぎ澄ませる。


「アタシは大抵のザコ相手には、攻撃魔術を“スティ・レット”だけに縛ってンだけどねぇ……テメェを認めるわけじゃねーけど、さすがに闘いが膠着して間延びしちまうのは、ショーとしてはいただけないんだわ」


 ナタリーの余裕ぶった口上を聞きながら、私は防御のための思索を巡らせていた。

 相手は単発のスティ・レットの他に、ディ・レットやリオ・レットなどの二本、三本同時攻撃を持っている。

 さすがに五メートルの至近距離では、三本同時に投げ放たれる鉄針を避けるのは困難だ。

 なので次の攻撃が何であろうと、私はアブロームを作り出すのが最善手となるだろう。

 相手の詠唱が素早いのが不安だが、防ぐにはこれしかない。


「だからここで、ちっとばかしオトナ気ねぇけど……アタシの得意技ってやつを見せてやるよ」


 技が発動する。

 しかも、どうやら今までとは違う術を使ってくるらしい。

 避けられるかどうかもわからない詳細不明の技を真っ向から見てやる趣味はない。

 私は判断を迷わず、すぐさま脚を折って床へ跪いた。


「“スティ(鉄よ)ラギロ(隆起し)”……」

「“スティグマ(再び貫け)スティ・レット(我が鉄錐)”!」


 その詠唱によって、私は思い知ることになる。

 ナタリーが今まで、一度も本気を出していなかったことに。

 私はナタリーと善戦できていると、大きな勘違いをしていたことに。


 正面から何かが飛んで来る前に、石柱は私の視界を遮った。

 高さ五メートル、頑張れば身体も隠せる大きな石柱。

 相手の魔術が発動する前に、防御を展開できたという私の短い安堵は、実に愚かだった。

 すぐ傍で聞いた詠唱速度は、完璧に相手の方が上回っていたというのに。

 この詠唱を、以前に一度だけ聞いていたというのに。


「つ……」


 熱い感触が左足を襲う。

 火にくべたゴテを当てられたか、熱湯をかけられたか。とにかく私の左足は、猛烈な熱を感じたのだ。

 それはとても耐えられたものではない苛烈な熱さで、苦悶のあまりに腰がガクリと下がったほどであった。

 

 まさか相手が火の魔術でも使ってきたのかと、咄嗟に自らの脚を見る。


「え……」


 しかし、足下には炎のかけらも広がってはいなかった。

 かわりにそこにあったのは、私の左脚のロングブーツを深々と抉り貫く、大きな鉄針だ。 


「ーッ!」


 自分の体に何が起こったのかを理解した途端、私は脚に帯びた熱が痛みであることを認知する。

 気付いた途端に、猛烈な痛みは恐怖へと変わる。

 防御成功を確信しきっていた私への突然の激痛。

 それゆえの不可解な負傷。


 私の頭は一瞬だけ恐慌状態に陥った。

 ブーツから血が流れているだとか、脚にこんな重傷を負うのは初めてだとか、そんな考えが一気に噴き出てくる。

 けど無駄な考えはその一度きりで、ある程度の恐怖を巡らせてしまうと、私はすぐに考えを建て直した。


「……」


 刹那の合間に、血走った目で辺りを見やる。


 鉄針によって突き刺されたブーツと左脚。

 幸い直撃ではなく、脚の肉を大きく掠めただけのようで、ブーツも地面に縫い付けられてはいない。

 この場から動くことは可能だった。


 そして鉄針。

 相手の魔術によって撃ち出されたであろう鉄針は、明らかに私めがけて、背後から飛んできたものだ。

 ナタリーがいる反対側から、私を襲った。

 紛れも無く私の背後から。


「“スティグマ(再び貫け)スティ・レット(我が鉄錐)”は戦場の種子を発芽させる。アタシが撒いた無数の種は、もう一度、猛毒の花を咲かせるのさ」

「……!」


 脚に突き刺さる鉄針が向く方向に、全ての謎の答えはあった。

 ナタリーがルウナとの戦いで、氷に動きを捕縛された危機的状況からでも逆転できた秘密が、そこにあったのだ。


 すっぽりと鉄針が抜け、暗い穴をこちらへ向けるひとつの石柱。

 他の石柱には深く鉄針が刺さっている中で、唯一向こう側にある石柱にだけ、鉄針が刺さっていない。


「一度放った鉄魔術から、新たにスティ・レットを発動しているのか……!?」

「ご明察ゥ! そんなお利口さんなテメェにもう一度くれてやるよ! “スティグマ(再び貫け)スティ・レット(我が鉄錐)”!」


 切り裂かれた左足から血が溢れる事などお構いなしに、その場から走り、逃げる。

 ナタリーへ背を向けるなど気にしてはいられない。

 もはや現状で、ナタリーという一つの発射台だけを注視してはいられなくなったのだ。


「ッ……!」


 私がいた場所にもう一本、鋭い鉄針が突き刺さった。今度は真後ろではなく、真横からだ。

 その場で狼狽え続けていたら、間違いなく餌食だっただろう。


 だがこうして一本を避けても、そのままではいられない。


「“スティグマ(再び貫け)スティ・レット(我が鉄錐)”!」


 既にフィールド上には無数の石柱と、それに突き刺さる鉄針が配置されている。

 絶妙な角度で床に突き刺さるものもあれば、横向きに転がっているものさえある。

 激しい回避と防御戦によって、それらの角度はほどよくバラバラ。

 鉄針の発射可能場所は、フィールドの全箇所、全方位に存在していた。


 ……ナタリーは最初からこうなる事がわかっていて、あえてスティ・レットだけで戦っていたというのか。

 一見ふざけているだけの、油断と慢心に満ちた策略のない単調な術による直線攻撃。そう思わせておいて。

 全ては終盤になって、私を一気に追い込むための布石だと……!


「っぐぁ!」


 ふらつく私の左脚を鉄針が貫く。

 真横から。今度は肉を切り裂くだけに留まらない、正真正銘そのままの“貫通”。

 ガリ、と硬い音で骨の一部まで削り、鉄針は脚の肉を抜けてどこかへ飛んでゆく。

 声にしたいけど声にしてもどうにもならない痛みが、左足を使用不能にさせた。


「ィヒャッハッハッハ! 良い悲鳴だ! そこにいたかぁロッカちゃん! なら今度はぁ、こっちの種を“発芽”させちゃおうかしらねぇ!?」


 どごん、どごん、と。

 大きな破壊音を立てながら、やや大雑把ではあるものの、私を狙うように鉄針が壇上を行き来する。

 暴れ狂う巨大な針は石柱に刺さり、砕き、何度も何度も破壊と発射を繰り返す。

 その度に私は傷を負い、クラインとの特訓の成果によって、あと僅かのところで回避はできるものの、左足は思うように動かない。

 さすがに全方位から襲い来る針には万全の対処もできず、じわじわと身体を掠め抉られ、血を奪われていった。


 上書きに上書きを重ねられる痛み。

 針が皮膚に刺さり、しかし太すぎる故に貫通しきらず、肉を圧迫しながら引き裂いてゆく。

 実際にやられたことはないものの、まるで拷問のような痛みの連続だった。


 ついに私の身体が床へと倒れる。

 精神よりも先に、身体が苦悶に屈したのだ。


「ぐ……ぅっ……!」


 そして血を失いすぎた頭が視界を揺らし始めた。

 いまだ針が飛び交う中で、左足のロングブーツに付属するベルトを最大まで引き締め、強引に止血する。

 傷口を直接圧迫する革の感触に、砕け散るほど歯を喰いしばった。


 いや、身体に走る痛みなどはどうでもいい。出血も、左脚以外は大したことは無い。その痛みだって後回しにしてやってもいい。


 痛みなんかよりも、何よりも私の心を苛んだのは、試合中に必死に建て続けてきた石柱が、ナタリーの術によって無残に破壊されてゆく光景であった。


 縦横無尽に飛び交う針。

 崩れゆく石の要塞。

 それだけは痛み以上に、私を絶望の淵へと叩きこむ。


「だめだ……石柱だけは。これが、ないと……!」


 石柱を失うことは、私の敗北そのものだ。

 これがなくては防御も、まして攻撃なんてできやしない。


 高さ五メートル、リーチ五メートルの石柱を、もっと。

 ここで何本壊されたとしても、建て続けなければ、私に勝利は無いのだから。


「“スティ(鉄よ)ラギロ(隆起し)アブロー(柱とな)”……」


 左肩から腕を伝って鮮血が滴る赤陳(アカヒネ)の杖。

 血濡れの先石を床に押し付け、ほとんど地面に倒れ伏せた姿勢のまま、私の唯一の呪文を紡ぐ。


 紡ぎ、たかった。


「――あ……」


 詠唱を終える前に、私の左手は弾道低く飛来する黒い鉄針によって弾かれた。

 いや、正確には手が弾かれたわけではない。

 握っていた杖が、鉄針によって突き刺され、吹き飛ばされたのだ。


 なけなしの金をはたいて買った、生まれて初めての魔道士の杖。

 ミネオマルタで初めてできた友達と、一緒に買った思い出の品。

 坑道を支える木材、赤陳(アカヒネ)から削りだされたお気に入りのタクトが、その真ん中から、まるでどうでもいい小枝のように、パッカリと砕け散って、遠くへと転がってゆく。

 導芯の魔金、低級の八浜緑(はまろく)が砕け、淡い緑の光沢を空中に煌めかせながら、雑多な石にまみれた床へ、儚く散って見えなくなった。


「……」


 私の杖は消し飛んだ。

 私の身体は限界だ。


「キヒャ、アハ、アハ、アッハッハッハッ!」


 それでもナタリーの狂ったような笑い声が、すぐそこで聞こえてくる。


 私はまだ敗北していなかった。

 これだけの痛みを負っても、自分の杖を失っても、まだ。


 私自身が最後のプライドを捨てるか、更なる痛みを受け入れない限りには、この決闘は終わってくれなかったのだ。


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