079-5-5_ベネディクト・ヒール(挿絵あり)
「な、何のんきなこと言ってんのって? も、もう、こ、こっちは大変なんだからねっ!」
ど、どうしちゃったのかな?
さっきまでの自分が、もう、遠い過去の自分に思えてしまう。お腹の下の落ち着かない感覚も収まりそうにない。キスをしたときにも感じていたけど、それよりも、もっと強い。時々、ううっ! ってなる。
そ、それに、何よりも首の周りが、なんだか……。
「エリア様の隷属紋……凄く綺麗〜! 髪の色と同じ色の大きな花が咲いて、しかも、メチャメチャ派手派手になってるわ! ほら、首の周りからデコルテのところまで、描かれてる。奴隷の親玉、そう、女王様って感じよ!」
「え〜〜〜、何よそれ! 殿様の桜吹雪じゃないんだから! 自分じゃ見えないよ〜〜〜。何だか分からないけど、金のシンプルな首飾りが首に付いてるのだけは分かるんだけど、あっ、これ、小さなリングが付いてる? もしかして、首輪なのっ!」
「奴隷が着ける奴に似てるわね。でも、細いしオシャレだわ。色もゴージャス!」
「も、もしかして、これが枷の具現化ってことなのかな〜?」
色んなところが気になるんだけど、あー、でも、今、素っ裸なんだよね。誰かに見られてたら大変だし、どうしよう。何か服は? そうだ、さっきまで着ていたメイド服はどこ? だめだ、小っちゃくて着れないか……。
焦っていると、下から声が聞こえてきた。叫んでいるのはアムだ。
「エリア様っ! 早く何とかしないと、大蛇が、大変そうですっ!」
「そうだ、それもなんとかしないといけないんだった」
とにかく、今はエイルとアムだけで、女の子ばっかりだし、恥ずかしがっててもしょうがない。さっきの魔法をやらないとっ!
空中に浮いたまま、足を肩幅に開いて両腕を上空に伸ばし、魔力を集める。
「エリア様、その恰好、ちょっと大胆だって! 全部見えちゃってるわよっ!」
エイルが何か言った。
「もうっ! 気が散るってば!」
エイルの突っ込みに構ってられないよっ!
そして、唱える。浄化と癒しの魔法……。
「ベネディクト・ヒールっ!」
祝福と癒しを意味するベネディクト・ヒール。声に出して唱えるのは雰囲気だけど、効果は、浄化と癒しだ。
上空を見上げる。
魔法を発動してすぐ、夜空に、銀色のもやもやとした揺らぎが生じた。そして、火口よりも大きな範囲の空が、渦を巻き初めた。その渦は、周囲からどんどんと銀色のエネルギーを集め、中心に向かって収束していくと、渦の真ん中が膨らみ、雫のように垂れ下がってきた。そして、大粒の涙がこぼれ落ちるように、特大の一滴が、滴り落ちた……。
「天使のティアドロップだわ」
エイルがそう呟いた。
水滴は、タップンと音を立て、火口湖の水面に一瞬の大穴を空けた。すると、直ぐに大きく水が跳ね返り、虹色の煌めく光が湧きおこると、火口湖全体に波紋が広がっていく。その波紋は、虹色の光を伴って水辺の端まで届くと、光だけがそのまま外輪山の内側を駆け上り、そして、輪っかの煙のように火口から飛び出して、キラキラと光りながら消滅していった......。
静寂が辺りを包む……。
火口湖を見ると、先程までもだえ苦しんでいた大蛇が静かになって、頭を岸辺に上げて横たわっていた。
ふぅ~、ちょっと大変だったね。それにしても、何だったんだろう? 今、ものすごく力が湧いてきた気がしたんだけど?
掌を見ても特に変わった様子はないけれど、でも、確かに、両手から出した魔力が、子どもの身体の時よりも、大きな力だった気がした……。その事は、レムリアさんに聞かないと分からないか。
でも、そんなことより、下の様子はどうなんだろう?
「大蛇、どうなったかな?」
上空からゆっくりと降りていき、火口の底に到着した。辺りは火山特有のごつごつした岩石が積み上がっており、植物は、背の低いものが僅かに生えている。自然の荒々しさが凄い。そう言えば、硫黄の匂いも感じるようだ。
火山っぽいね。火山なんだけどね。
周辺を見渡していると、アムが外輪山の崖を駆け降りてきて、あっという間に側にきた。
「エ、エリア様……ですよね。す、素敵……です……」
もうっ! そんなに見ないでほしい、恥ずかしいから!
手で胸と下を隠しているけれど、お尻と背中が何にもなくて、開放感は流石に半端じゃない。でも、ヴィースがいなくて良かった。ああいう存在には、性別なんて本当は無いんだろうけど、ただ、容姿が男ってなると、絶対、見られたくないっ! キスしたからって、ヴィースの事、意識してるわけでは無いし、男には興味ないのだ。それは間違いない。
って、そんなこと、どうだっていいよっ!
「大蛇はどう?」
自分の考えたことに突っ込みを入れながら、大蛇の前に行くと、その大蛇は、口から長い舌を出したまま気絶していた。
「大きいわね!」
目の前の大蛇は、胴回りが三メートルはありそうなほど大きかった。全身を鱗で覆い、真っ黒というよりは、黒に近い紫のような色をしている。しかし、魔法照明の角度によっては、濃紺にも見えた。
「綺麗な大蛇……」
大蛇の顔の前にしゃがむと、鼻の頭に目が行った。
少し触っても大丈夫だよね?
右手で大蛇の鼻頭を、優しく撫でてみる。つるつるとした肌ざわりだ。すると、大蛇は、小さなくしゃみを一つ出した。
「気が付いたみたいね」
そして、大蛇は、身体がどんどん縮みだし、とうとう人型になってしまった。
「女の子だっ!」
アムが驚くように言った。ホント、びっくりだ! あの大蛇からは想像ができない!
「本当だわね」
エイルも驚いている。少女に近寄り、顔をよく見ると、少女は、今の僕と同じくらいの年齢に見える。
男じゃないんだ?
昔からいる蛇神って言ってたから、てっきり、おじいさんのような存在だと勝手に想像していたけれど、不思議だ。何で少女の姿なんだろう?
彼女は、髪が濡れていて、顔にかかっていたので、そっと、手で横に流してやると、意識を取り戻した。
「うっ」
しかし、少女は目を閉じ、仰向けになったまま、力無く身体を横たえている。
「でも、この子、ちょっと顔色が悪いんじゃない?」
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女の子だっ!
AI生成画像
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