075-5-1_森の異変
話の切りがいいところなので、ここで、今日の目的の一つである、ラヒナの事を相談しておかないといけない。
「ラヒナ、それからセシリカとホルトラスさん、これは、ボズウィック男爵の提案なんだけど、これから、いろいろな動きをすると、アトラス派も何をしてくるか分からない。だからね、ラヒナに、ボズウィック男爵のレピ湖にある屋敷に来てもらったらどうだろうって言うことなんだけど、どうかな?」
すると、ラヒナはセシリカの顔を見つめた。彼女は、セシリカの意見を聞きたいようだ。セシリカもラヒナを見つめ、言葉を交わさずに大きく頷いた。そして、セシリカは立ち上がり、こちらに向いて姿勢を正すと九十度のお辞儀をして言った。
「ラヒナ様の事、よろしくお願いいたします」
ホルトラスもお辞儀をしていた。これで一安心だ。今日、僕たちが帰るときに一緒に連れて行くとしよう。さて、次はイグニス山の調査だね。
そうして、エイルを呼び出す。
「ジャジャーン! エリア様、ご用は何〜に?」
「エイル、これからイグニス山に向かうんだ。だから、一人、ヴィースに付いていてくれないかな。離れてしまえばヴィースとの念話が通じないしさ」
「お安いご用ね」
ルは、そう言って二体に分身し、一体がヴィースの顔の前でホバリングする。
「頼んだよ、ヴィースのエイル!」
「私に任せなさーい!」
その後、ホルトラスは今の打合せを踏まえ、村長に寄合の進行について相談するため教会を後にした。残りのみんなは教会に残ることとなり、そして、僕は浮遊魔法を使い、エイルとともにイグニス山に向かった。
ーーーー。
太陽は、もうすでに西の山に傾いていた。イグニス山の山麓は、上空から見ればその雄大さがさらに良く分かる。山麓は、広葉樹林帯が広がり、山肌は、黄色やところどころに赤色というように、美しい紅葉に染まっていた。しかし、そうした見事な絶景とは逆に、樹林帯からにじみ出ている気は敵意に満ちている。
「何か、森自体が怒ってるみたいに濃い敵意だな。少し、森の中を見てみるか。魔獣の様子も知っておきたいしね」
そう言って、上空から見渡すと、木が生えていない平らな地形を見つけた。
「エイル、あそこに降りてみるよ」
「わ、分かった……」
エイルはそう言うと、僕の髪の毛の中に入ってきた。
ん? 魔獣が怖いのかな?
地面に降り立つと、そこは小さな湿原だった。その湿原は、背の低い草が、草紅葉となってオレンジ色の絨毯のように地面を覆っており、池塘がところどころ点在していた。池塘の水は透明で、池の底には黒い土が堆積している。そして、その水面には小さな可愛らしい花が咲いていた。この場所では、特に異常は見られない。先程から感じる敵意の気は、植物とは関係無さそうだ。
エイルは、肩からポンと飛んで、湿原の上をぐるっと回ると、また戻ってきて肩の上に乗った。
「エリア様、この怒っているような気は、魔獣たちのもののようね」
「やっぱりそうか」
樹林帯の方を見ると、木々の間には光が差していても、暗くどんよりとした雰囲気だ。
「問題は森の中だね」
樹林帯に入ると何か分かるかもしれない。
そうして、エイルとともに森に入って行った。
この辺りに生えている樹木はそれほど太くはないようで、幹回りは五十センチ程度の広葉樹が多い。下草は殆どなく、歩くのにそれほど苦労もいらなかった。しかし、樹林帯に入るなり、空気がガラッと変わる。そして、あきらかにこちら向けられた敵意を感じた。まだ、さっきの明るい湿原から十メートルも樹林帯に入ってないのにこれだ。
魔力感知を発動し、周囲の警戒を行う。すると直ぐに反応があった。
「うわ~、うじゃうじゃいるじゃないの。でも、小さいやつばかりだな。すぐ近くにもいるよ」
「ホントだわ……」
辺りは薄暗く、目では視認できないけれど、もう、周りにたくさんいる。立ち止まっていると、十メートルほど先の落ち葉で覆われた地面が、ニョキニョキと盛り上がり、茶色く地面に擬態した大きなキノコが、十数体姿を現した。
キノコは傘の直径が、大きいもので五十センチくらい、高さは一メートルくらいある。キノコたちは、中央が丸く膨らんだ軸の部分まで地上に出ると、身体を左右に揺らしながら徐々に近づいて来る。そして、さらに、後方にも同じ種類のキノコが十数体迫ってきていた。どうやら、こちらを囲もうとしているようだ。
「エイル、奴らの事知ってる?」
「こいつらキノコ魔獣は毒の胞子を飛ばすわ。それで死んだ人間を、菌糸を伸ばして吸収するのよ」
へぇ~、魔獣の事、良く知ってるんだね。
「私に何でも聞いてちょうだい!」
エイルはそう言うと、その場でくるっと宙返りをした。
エイルも結構頼りになるんだな。それなら、もう少し森の中を見てみたいし、いちいちこういう魔獣を相手するのも面倒だ。何かいい方法が無いかエイルに相談すると、エイルは腰に手を当てて言った。
「威圧を放てばいいじゃない。こうよ!」
エイルはそう言って、その場でやって見せようとする。彼女は、一瞬目を閉じると、今度はキッと見開き、「ハッー!」と声を出した。
「行くわよ〜〜〜、せいのっ、威圧ぅーーーーっ!」
……。
ん?
…………。
「……あ、あの、エイルさん。それで?」
エイルは、空中で仁王立ちの恰好をしているけれど、特に何も起きない。そして、開き直って言った。
「私ができるわけないでしょ! 雰囲気でやってみなさいよっ!」
ハハハ。
ところが、エイルと話していると、キノコ魔獣たちのカサから黒い煙のようなものが、もやもやと出てきて辺りに拡散し始めた!
「ウィンドブレスっ!」
突然、エイルが叫ぶと、大きな風を呼び起して黒い煙を吹き飛ばすっ!
「おお、やるじゃないか!」
「どう? 風魔法なら得意よ」
「エインセルって風系統なの?」
そう聞くと、エイルは、「まあね」と胸を張って答えた。
今のは初級魔法っぽかったけどね。
しかし、ぐずぐずしていると時間ばかり過ぎそうだ。エイルが言ったように、威圧とやらを試してみることにした。一応、エイルに見本を見せてもらった? ように体の中に気をためるイメージをして、少し魔力を乗せ、そして、胸のあたりから一気に放つ!
「はぁぁぁ~、威圧ぅーーーーっ!」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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