052-4-1_模擬戦の後
ハプニングはあったけれど、ヴィースの試験も無事終了してホッとした。しかし、黒い石の影響は思ったよりも深刻かもしれない。タラスコスが混乱して地上に現れたくらいなので、湖の他の魔獣に影響しているのは確実だと思う。
タラスコスの吐いたものをよく調べる必要があるかもね。
改めてタラスコスの吐しゃ物を見てみると、ざっと数えただけで、黒い石が五十本以上確認できた。
とりあえず持ち帰って調べるか。でも、ずっと置いておくと屋敷にも影響が出そうなんだよね。
一つを拾い上げて太陽に翳してみると、色が真っ黒ではなくグレーだった。やっぱり、この石からもネガティブなエネルギーを感じる。しかし、この間、ヴィースから預かった石よりも、多少、色が薄い気がする。石によってムラがあるのかもしれない。
もしかして……。
試しにエネルギーを流してみた。すると、たちまちグレーの色が無色透明に変化した。
「なるほど。エネルギーを流すと浄化されるんだね」
そこで、ヴィースにも試してもらうことにした。ヴィースも黒い石を一本取り上げエネルギーを流した。すると、数秒ほどかかったものの、やはり、浄化された。
「そうか、これはもしかしたら、自然エネルギーによって浄化が可能なんだ」
恐らく、この石は、浄化されるまでネガティブなエネルギーを周囲に出し続け、その間、周辺に悪い影響を及ぼすということかもしれない。タラスコスが吐いた黒い石を、この場に残しておくという訳にもいかないし、石は全て集め、数本だけ実験のため持ちかえることにして、残りはその場で浄化しておく方が良さそうだ。
他にも黒い石をが残っていないか、タラスコスの吐いたものを調べていると、濃紺の綺麗な石が五つほど見つかった。
「これは? ネガティブなエネルギーは出していないようだけど?」
その石は、卵くらいの大きさで、形がアーモンドのような楕円形をしている。それを拾い上げて見ていると、ヴィースが、「それは水の魔石です」と教えてくれた。
「へぇ~、これが? 綺麗だな。透明感があって深みのある青、紺か。インディゴブルーだな」
ヴィースは、「湖底には、魔獣が残した魔石が大量に堆積しています」と言う。
「そうなんだ。魔獣がねぇ?」
ヴィースは、水の魔石についていろいろと教えてくれた。どうやら、魔獣は、死んだ時に体内の魔石だけは消滅せず、その場に落とすらしい。レピ湖の水棲魔獣たちは死ぬときに、湖底近くで死ぬ本能があり、必然と湖底に水の魔石が溜まっていくようだ。
そして、水の魔石は、魔力を水へと物質化させる効果があるという。水の魔石に、一度魔力を当てると、それが呼び水のように作用して、その後は周囲の魔力を吸収し、逆に止めようと意図して魔力を流すまで効果を発揮し続けるようだ。
便利そうだな。
魔力は、一度物質化すると、自然の中で循環し、また、ガイアのエネルギーに還っていく。環境にはとても優しい。ただし、魔物は人間の生活圏には棲んでいないため、人間社会に出回っている魔石の数はそれほど多くはないだろうということだ。そして、ヴィースが魔石の一つを拾って使い方を見せてくれた。
「魔石の丸みがある部分から魔力を当てるのです。例えば、単に水を出したい場合は、そのことをイメージしながら、このように……」
ヴィースが魔力を当てると、蛇口から出る水のように、魔石の尖った先端から勢いよく水が流れ出した。水の出し方はイメージ次第のようだ。水を流すだけではなく、弾丸のような弾にしたり、大きな塊にして射出するなども出来るそうだ。あるいは、霧や水蒸気のように、気体のような出し方も可能であるらしい。
使い方は、いろいろあるんだね。
とにかくこれ一つで、どこにいても水の心配をする必要が無くなる。
「なるほどね。でも、これって、何回くらい使えるんだ?」
魔石の使用回数制限があるのか気になったので、ヴィースに聞いてみると、魔石は、その宿主だった魔獣の寿命と同じ期間程度は使用できるそうだ。なので、その間は何度でも使えるらしい。しかし、魔石を見てもその年数は分からない。ただ、大きいものや色の濃い物は大型魔獣のものらしく、そうした魔石は寿命が長いようだ。
きっと使い方次第でも変わるんだろうね。無駄遣いすれば短くなるとか。
とりあえず、そこに落ちていた濃紺の魔石も拾って持ちかえることにした。
模擬戦の会場は既に撤収作業が進んでおり、イリハがこちらに手を振って僕たちを呼んでいる。イリハの元へ向かうと、男爵から屋敷に戻り談話室で話そうと言われ、みんな屋敷に帰ることになった。
男爵夫妻とイリハ、そして、僕は、馬車に乗り込み、ヴィースは転移魔法で、その他使用人は荷馬車や徒歩によりそれぞれ屋敷に戻った。
その後、一時間程度して、談話室に面々が揃った。男爵とローラ夫人はそのままの服装だったけれど、イリハだけは緑色のワンピースに着替えている。
イリハはニコニコしてとても嬉しそうだね。
その他、執事のモートンやメイドのアリサ他、数人のメイドが脇に控えていた。そして、入口近くにはティグリースも立っている。彼は、模擬戦で気絶していたが、もう大丈夫のようだ。
男爵が、席から立ち上がり、話し始めた。
「みな、ご苦労であった。それでは、今日の講評を始めるとしよう。モートン!」
男爵が着席すると、執事のモートンが一歩前に進み出た。
「では皆さま。はじめに、模擬戦の結果からでございますが、勝者はヴィースでございました」
そう言ってモートンが男爵に深く頭を下げると、男爵が話し出した。
「うむ。では勝者、ヴィース、見事な勝利だった。その実力を認め、我がボズウィック家の用心棒として召し抱えることとする」
ヴィースは僕の席の後ろで軽く会釈をした。
会釈ができるんだ! 驚きだね。僕が繕わずに済んでよかったよ。
男爵は、「よし」と言った後、ティグリースに向き、彼を労った。
「ティグリース、良くやってくれた。あの踏み込みの初撃は、並みの人間では防げんだろう。まだまだ前線で活躍できそうだな」
すると、ティグリースが恐縮するように答えた。
「いえ、恥ずかしい限りであります。気を失ってしまい、無様な試合をしてしまいました」
彼はそう言うけれど、しかし、流石は元王宮騎士団だ。
戦い慣れている感じだったね。今回はヴィースの強さが際立っちゃったけど、彼もかなりの手練れそうだよ。
「よいよい、ヴィースとの模擬戦を経験できたことこそ、今後の糧となろう」
男爵はそう言ってにこやかに笑った。そして、モートンに視線を送る。すると、モートンが男爵に会釈をし、話を続けた。
「次は、イリハお嬢様の魔法適性の件でございます」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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