352-17-2_もっと心のままに
私が転生してきたせい……。
そうだ。今起きている事は、私がこの世界に転生しなかったら起こらなかった事なのだ。転生前、レムリアさんは、私が転生すればこの世界にバタフライエフェクトをもたらすと言っていた。彼女は間違えて桶屋がどうとかって言ってたんだけど。でも、今の状況は、私が転生したために起こった波紋の一つなのだ。そのせいでセルティスを危険な目にあわせてしまっている。だから私は、今、セルティスがとても心配で、どうしても彼女を助ける必要があるし、後少しでセシリカ計画も予定通りに運ぶはずだから、それも成功させなければならないと思っている。
でも、何が引っかかったんだろう?
「エリア様。もうご自身ばかりで背負わなくてもよろしいのでは?」
ククリナが優しい眼差しをしてそう言った。
背負う? 私、何も背負ってなんか……。
喉元に手を当てた。すると、指先にトラウマの首輪が触れる。何気なく人差し指で輪っかを弾くと、小さくカランっ、と音がする。
あっ……そうだった……。
私のこの首輪は、女神ガイアの背負う枷だ。彼女は、民衆のトラウマを自らのトラウマとして背負っている。そして、それは私が背負うべき枷。
私が……背負うべき……か……。そう言えば、誰かの思いを背負う事って前世でも結構やってたかもね。
前世の私は、父親が亡くなった後、曾祖父の代から続く和菓子店を途絶えさせないため、高校を卒業してすぐ実家の和菓子屋の見習いになった。お母さんからは、和菓子屋を継ぐ必要は無いと言われていたのに、そのときの私は、長男の自分がやらなければいけないという気持ちが強くあった。だから私は、世間体を優先して、自分の本当の気持ち、姉さんのように大学に行って、自分がやりたいことを見つけたいという想いに蓋をして、勝手に周囲に忖度し、自らそれを背負ってしまっていたのだ。
自分では納得してたつもりだったし、それに、和菓子作りは楽しいから悪くない人生ではあったんだけどね……。
とは言え、前世では結果として他人の人生を生きていたのかもしれない。それなら、今の状況はどうだ?
レムリアさんには、この世界で困難な状況にある女の子の力になって欲しいと言われている。それが女神ガイアの願いでもあるのだ。だからと言って、レムリアさんからは、エリアの記憶を思い出す事以外、何をどうしろと言われた訳ではなく、しかも、彼女は、転生は自己責任だとまで言っていたのだ。まぁ、転生する意外に選択肢が無かったんだけど。だから、この世界では、心のままに生きたいって思った。女神ガイアのトラウマは、私の過去生のトラウマでもある。でもそれは自分の事だ。背負うっていう言い方もあるだろうけど、必ずしもそう考えなきゃいけないって訳でもない。まだ、どんな風に向き合えばいいのか分かんないけど……。
ただ、今、私がやらなきゃいけないのは、背負う事じゃないと思う。
じゃぁ、どうすれば? ううん、違う! もっと、みんなを信頼して、頼ればいいんだって!
ククリナもカリスも、優しい表情を向けてくれている。
もっと彼らの力を借りて、本当に自分の心が感じている通りにすればいい。奴らになど、慈悲なんて掛ける必要ない。それが、私の本心だ。奴隷狩りがジャブロクの奴と繋がっていると知った時。今日の昼間、奴の商隊が奴隷を運んでいた時。そして、奴隷少女が見せ物にされた時。それもそう。でも、それよりももっと前、奴がアリサから全てを奪った元凶だと知った時、私の心は、既に決まっていたはずだ。それなのに、計画の為とか言って手順を外す事なく型にハマった自分になっていた。ホント、理屈ばっかり頼りにしていた自分が嫌になる。前世で男だった時の悪い癖だ。
ククリナやカリスも、きっとその事を言ってくれているんだわ。
私は何者なの? 私は、女神の生まれ変わりで最強加護を持つ者よっ! この世界の女の子の希望だわっ! いつまでも男の思考パターンのままでこんな事していたら、どこまで行ってもこの首輪なんて外れないんだからっ!
目を閉じて大きく深呼吸を一つする。
もっと自由に、もっと心のままに、何も迷う必要なんてない。難癖を付けようとする奴らなら、それが出来なくなるくらい叩き潰す、それだけでいいんだ。後の計画なんてセシリカが上手く進めてくれるはずよ。
「ククリナ、カリス。あなたたちの言うとおりだわ。私、まだ過去の生き方から抜けきれてなかったみたい。でも、もう、吹っ切れちゃった! 私は、私の心の声に従うわ……」
「どうされますか?」
「……カリス、私は、もう、女の子たちの悲しい顔を見たく無いの。だから、奴らを、全員残らず輪廻の彼方に送りたい。それが私の意思よ。みんな、手伝ってくれるっ?」
「流石はエリア様!」
「ありがとう、カリス」
ウィンディーネが腕組みをして顔を見上げる。
「ちょっと、あんた、今、なんか変わったわね。とってもいい目になっているわよ。悲哀を秘めながらも厳しい女神って感じね」
「褒めてくれてると思っていいのよね? ウィンディーネ。今の私は、あなたの言うとおりかもしれないわ。隷属の女神は、悪党に慈悲なんてかけないのよ」
「黒女神!」
「ラーシャだっていつも容赦ないクセに。でも、その呼び方、いいわねっ!」
「エリア様ぁ〜〜〜っ!」
「わっ、ククリナっ! 倒れちゃうよ」
「押し倒したいですぅ〜」
「ダ〜メ」
「あぁ〜、早く温泉〜〜〜」
「何、温泉って? ちょっとククリナ、教えなさいよ!」
「カリスには関係ないわ。私とエリア様だけの、ひ・み・つ」
「ずるいっ!」
「ククリナの事だし、どうせ、エッチな事だって」
「エイルはうるさいっ!」
「ククリナっ!」
カリスは眉を吊り上げて、ククリナを叱るようにそう言った。しかし、またすぐに元の表情に戻った。
「エリア様、サリィとヴィース、それに、セイシェル王女への連絡はどう致しましょう?」
「じゃぁ、カリス、あの三人にも連絡してくれる? それで、出来ればセイシェル王女には、こっちに来てもらいたいの。王女なら、何かいい作戦のアイデアを出してくれそうでしょ?」
「分かりました。では、ヴィースの方はよろしいのでしょうか?」
カリスがそう言うと、私に抱きついていたククリナが離れ、即座に反応する。
「一の眷属は、放っておきなさいな。男型精霊なんて、側にいるだけでむさ苦しいだけじゃないの」
「それもそうね、フフフ」
カリスは、そう言ってニコニコと笑う。
「ヴィースは、ローズ領の警備があるから合流するのは後でいいわ」
そう言ってカリスに返事をした。するとその時、突然、背中に何かの重みを感じる。
「おっとっと!」
重心が背中の方に引っ張られ、後ろに倒れそうになった。そして、肩越しに後ろを確認する。
「あれ?」
見ると、いつの間にかホルダーに入った状態の破山剣が背負われている。
「何これ? 私、何もしてないのに!」
そう言った瞬間、背中の破山剣が軽くなり、目の前には、腰まである長い黒髪を束ねた精悍な顔立ちのイケメンが、平安時代の武官のような格好をして腕組みしながら立っていた。
「あれ? ヴィース、どこから現れたのよ?」
「エリア様、さっきの無骨な黒い剣ですわ、まったく……」
彼女は少し面倒臭そうにそう言った。
「……ストーカー行為は止めなさいよ、一の眷属!」
「私はエリア様の剣である!」
「確かに剣は預かったけど、なんでヴィースがここにいるのよ?」
ヴィースは、表情を変えずに話す。
「エリア様、剣を預けさせていただいた時にご説明申し上げましたが、破山剣は私の一部であり、常にお側でエリア様をお守りしております」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
と思ったら
下の ☆☆☆☆☆ から、作品への応援お願い申し上げます。
面白かったら星5つ、つまらない時は星1つ、正直に感じたお気持ちで、もちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当に励みになります。
重ねて、何卒よろしくお願い申し上げます。




