348-16-28_させないっ!
サリーダの殺気がナイフのような鋭さに変わった!
ギクッ!
「魔法陣に細工すりゃ、このガキの命は無いよ。っつうか魔法陣ってのは一度発動しちまったら止めるなんてことは出来ないのさ。そんなことも知らないのかい? 世間知らずのお嬢ちゃん」
「……」
な、なんで、バレてるのよ?
「そうやって黙っててもいいけどさぁ、わざわざあたいがこんな話をしてるって事を不思議に思わなかったのかい? まったくのお気楽ちゃんだよ、ホント。いいかい、ちょっとあんたの力を見たいって言うお方がいてさぁ、あたいは面倒臭ぇんだけど、あんたに時間を与えてやったのさ……」
どう言う事だ。
「…まぁ、そんな事はどうだっていいさ。あたいの仕事はあんたを誘き出すだけだからねぇ。この子は会頭の屋敷に連れていくんだけど、本当は、今からこのガキの腹を切っちまってあんたに見せてやろうとしたんだよ。毒の麻痺効果がある間は死なないからねぇ。その方が早く助けに来たいって思うだろ? でも、ちょっと事情が変わっちまってねぇ……」
ダメだ。小細工は通じない。それなら、どうする?
後ろから、アリサが囁いた。
「エリア様、準備は出来たそうです。合図を」
一気に勝負に出たいところだけど、でも、このまま動けば、アイリッシュが……。
サリーダの話が続く。
「……いやぁ、驚いたよ、この子、鬼子なんだねぇ。さっき見て分かったのさ。角の名残りがあるから間違いないよ。こいつは拾いもんさね。あたいもこの子袋を貰おうか。これを喰らえば若返るって話だしねぇ」
サリーダはそう言ってしゃがみ込むと、アイリッシュの下腹部をさすった。
「……そう言う訳で、ここで腹を切らずに置いておかないといけないのさ。鬼子の臓腑は、喰っちまう直前に取り出す方が活きがいいからねぇ。まぁ、あんたが助けに来ようが来まいが、このガキは、とっとと喰っちまいたいところだけど、あたいだって命令には逆らえないのさ。あんたには、どうあっても屋敷まで来てもらわなきゃ困るんだよ、このあたいがねぇ。だから、このままもう少しガキを生かしておいてやろうじゃないか。もしかしたら、会頭もあんたが大人しく捕まるなら、このガキを返してやろうって気になるかも知れないよ。ヒッヒッヒ。心配なら早い事あたいらのところまで来ることさね。あんた一人でさ」
タラタラと鬱陶しい……。
下卑た女の話しを聞いていると、耳鳴りがしてくる、、
……鬼子? そうだ。アイリッシュも鬼子だ。魔獣から、そして、人間から狩られる存在だ……。生きたまま内臓を抉られ、それを目の前で喰われるのだ……。ああ、そうか。アイリッシュは鬼子だから、コイツらはどうあっても殺すんだ。でも、それがどうした? そんな事、許されていい訳ないだろう。この私が許す筈ないじゃないか……。
言霊って、汚い言葉の中にも入っているようだ。サリーダの口から出る言葉は、ヘドロのような臭い匂いがするけれど、私の心には良くも悪くも届いている。そのお陰で、私は冷静になった。この女が吐いた言葉は全て……。
浄化が必要だ。
「どうせ返す気なんて無いくせに……」
そう独り言のように呟いた。しかし、女には聞こえていたようだ。
「まぁ、あんた次第じゃないかい?」
「バカバカしい」
「おやおや、もう諦めたってぇのかい? でも、あたいはあたいの仕事をするだけさね……」
サリーダはそう言って、胸の間から白い魔石を取り出し、図上に掲げた。
「……あんたはちゃんと来るんだよ。じゃぁ、あたいらはお暇しようかね」
そして、大きく腕を振り下ろすっ!
「転移っ!」
「エクストラセンスっ!」
「合図よっ!」
一瞬、ククリナの声がした。その言葉が間延びして耳に届く。周囲の空間は全てがスローモーションとなり、サリーダの振り下ろした手の指先から魔石が放たれていく。
「させないっ!」
全身に纏った魔力を膝下に集中!
今日の私は、イラついてんのよっ!
初動は右足で床を蹴るっ! すると、床板が爆ぜて、足元の魔法陣は踏まれた薄氷のように一瞬で砕け散るっ! そして、一歩目の左足が付いた床のところには、転移用の魔法陣が光っていた! しかし、それも足裏が床に着いた瞬間に、粉々になるっ!
こんなの、魔力流すだけで簡単に壊れちゃったじゃないのっ! 嘘ばっかね。
ニ歩目は女の目の前に右足だ。しかし、足を着地する前に女が放った白い魔石を空中で回収する!
魔法陣は無いけど、念の為よ!
魔石をキャッチして無効化し、胸の間に入れる。そして、着地したと同時に身を翻し扉前に向きを変えると、アイリッシュを拘束する鎖を解体! さらに、彼女の身体を奪取して、大きく後ろにジャンプっ!
っと思った瞬間……。
えっ?
扉の両隣の壁がメリメリと盛り上がり……。
何?
赤黒い大きなカニバサミの爪先が二つ、壁を押し破って見えてくると……。
嘘っ!
アイリッシュの位置を避けるように別れて、応接室の壁を突き破りながら伸びてきて……。
えええ〜〜〜〜っ!!
パックリと左右に大きく開かれたハサミが、サリーダともう一人の女を、背中側から胴の中央を挟み込むっ!!!
マ、マジでぇ〜〜〜〜〜〜っ!!!
そして、二つのハサミは空中に、ズバッ! と伸び切り、二人の女を高々と掲げ上げる! 壁の残骸はゆっくりと宙を舞い、サリーダとフードの女どもは、腰のあたりを固定されたまま上半身と下半身が大きく揺さぶられてグニャグニャとゴムのように折れ曲がるっ!!!
目が飛び出そうなほどガン見するっ!
ど、どういう状況ぉ〜〜〜〜〜っ!!!
あまりの驚きに、思わずアイリッシュを抱き抱えてその場に蹲る。
と、とりあえず、エ、エクストラセンス、か、解除……。
すると、その瞬間! 激しい轟音とともに、応接間の壁の破片は木材やら板切れやらが、まるで爆発があったかのように玄関ホール内に飛び散ったっ!!! 埃が空中を舞い、視界が遮られる。
な、なんで……。
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
と思ったら
下の ☆☆☆☆☆ から、作品への応援お願い申し上げます。
面白かったら星5つ、つまらない時は星1つ、正直に感じたお気持ちで、もちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当に励みになります。
重ねて、何卒よろしくお願い申し上げます。




