344-16-24_最高機密
隣にいるマーカスも、その話を聞きたそうにしている。
「私とピュリスさん?」
「何だ、二人ともオスカルから聞いてないのかい?」
ピュリスはそう言うと、オスカルを見やった。
「そんなの、私の口から言える訳ありませんよ。大体、あんな話、ドルーイ家の私だからこそ理解できましたけど、普通は簡単に受け入れられるものではありません。むしろ、秘密にしておくべき話ですよ」
普通ならそうね。でも、ピュリスさんなら、きっと、隠そうともしないんでしょうけど。
「そうかい? じゃぁ、私から説明するしか無いな」
「えっ!? 団長! やめてください! また飲み会の時みたいに、突然変身しないで下さいよっ! 宴会芸じゃないんですからっ! それに、あの時は咄嗟にリベーラを発動したから良かったものの、もし、誰かに見られていたらどうする気だったんですかっ!」
「ハハハ、そうだったかな?」
やっぱりね!
オスカルはそう言うと、ペディットとマーカスの二人に向かって言った。
「二人とも宜しいですか。今から団長がお話しされる内容は、王宮騎士団の、いえ、王国の最高機密情報です。万が一にでも口外する事は許されません。もし、意図せずとも情報漏洩の原因となった者がいれば、即刻死罪確定です! これは冗談などではありませんよ。この事を踏まえた上で、団長のお話を聞こうと言う者は意思を示して下さい」
死罪って、本当なの? でもそうね。王宮騎士団長が火の精霊ファイアドレイクで、しかも、隷属の女神の眷属だなんてバレたら、国を超えた諍いになるわね。って言うか、国王陛下も知らないと思うんだけど……。
「マーカス、どうするの?」
ペディットが言った。
「あ、あぁ、そうだな……」
マーカスは、一瞬下を向いたかと思うと、しっかりと顔を上げた。
「俺は、聞きたい! どんな話か分かんねぇけど、何となく、この国の行く末に関わるんじゃねぇかって気がするんだ。それに……」
「それに?」
ペディットが、彼の言葉を待つようにそう言った。
「……それに、さっき、エリア様に見つめられた時、お、思った….…。この人、マ、マジ、女神だって……」
ふ〜ん。マーカスは、そんな風に思ってたんだ。私の事、結構、ちゃんと見てたのね。
ペディットが腕を組んで彼の正面に回り込み、マーカスを睨む。
「ち、違うんだ、ペディット。か、感じたんだよ、エリア様の、その、どでかい力、いや、そんなんじゃねぇな。もっと大きな、う〜ん、なんつったらいいのか……」
上手い言葉が見つからないマーカスに、ペディットが、「はぁ〜」とため息を付いた。
「……まったく! それ、ガイア……でしょ」
「そう、それだっ!」
へぇ〜、驚いた! 私のエネルギーを感じたって事だわ!
「私もよ、マーカス。エリアちゃんに見つめられて思ったの。後からヒーリングしてもらったククリナ様のエネルギーとも少し違う、なんて言うのかなぁ、生あるものを何でも包み込んじゃうような大きな存在。つまり、ガイアだと思う」
うわぁ〜、ペディットも凄いなぁ。魔力なんて出してなかった筈なんだけど。きっと、二人とも共感力が高いのねぇ〜。
「よく出来ました、ペディットさん。あなたが感じたエネルギー、それは、女神ガイア様の受容のお力ですわ。エリア様は、女神ガイア様の唯一の御子様で、女神様の生まれ変わりでもあります。だから、そう言ったでしょ? 蛇神である私も火竜であるピュリスも、エリア様の眷属精霊なのです。フフフ、誇らしいですわ〜」
あっ。
「ククリナ様が言ってしまいましたね」
「そうだね、オスカル。でも、もういいんじゃないか」
「何ですか? お二人とも」
「ククリナ、それ、今から言葉を選んで説明しようとしてた話だったんだけど」
「まどろっこしいですわね」
「え〜と、ククリナ様って、巫女さんですよね? 蛇神様とか火竜とか、一体、何の話ですか? それに眷属精霊って……?」
「ほら〜、ペディットが不思議がってるじゃない! マーカスなんて固まって動かないわ」
マーカスは口を開いたまま、瞬きもせず目を見開いて直立不動していた。
「ワハハハハハハハハーーーーっ! それなら、証拠を見せようじゃないか!」
あちゃ〜〜〜っ! コレ、ヤバいっ!
「オスカルさんっ! ピュリスさんがっ!」
「ま、またですかっ!?」
「早くっ! 早くっ! 詠唱っ! 詠唱っ!」
「私の光魔法の使い方、間違ってますよっ!」
「ほらほら、急いで急いてっ!」
「まったくっ! モゴモゴモゴモゴモゴ…………」
「ギャハハハハハハハーーーーっ! フフフフフフフフーーーーっ!」
あ〜〜〜っ!
「リ、リベーラっ!」
ま、間に合った……?
ーーーー。
ピュリスのテンションが落ち着き、オスカルが魔法を解除した。
「まったく! 団長もいい加減にしてくださいっ!」
オスカルは、姿を元に戻したピュリスに向かってそう言うと、自ら護送馬車の幌を捲り鍵を取り出して檻の扉を開けた。
「……では、エリア様、ククリナ様。よろしくお願いします」
「分かったわ。じゃぁ、ククリナ、全部出しちゃってちょうだい!」
「はい。ただいま」
ククリナは、右手を檻の中に伸ばして大蛇に変化させると、大きな口を開いた!
「なっ!?」
「嘘っ!?」
ピュリスの真っ赤なレオタード姿に驚いたばかりのマーカスとペディットは、またゾロ驚きのあまり言葉を失う。すると、ククリナは、ゲロゲロゲロと、二十数名の人間を次々に吐き出し始めた! 荷台には、ドサッ! ドサッ! っと人間が積み上げられていく。肉塊が蛇の大口から飛び出る度に護送馬車が揺れ、軋んだ音を鳴らす。粘り気のある液体で覆われた人体は、積み上がった山からヌルリとズリ落ちて崩れ、鉄格子がそれを堰き止める。どの人間も意識を取り戻してはいない。
結構、グロぉ〜い。
「ククリナ、これって、死んでるんじゃ無いよね?」
「ええ、一日くらい経てば勝手に目を覚ましますわ……」
ククリナの右手は、奴隷狩り全て吐き出すと、元の華奢な腕に戻った。彼女は、マーカスにニッコリと笑顔を向けて言葉を続けた。
「……それにしても、吐き出したらお腹空きましたねぇ」
「ヒィッ! お、俺は、も、もう、腹一杯っすっ!」
「わ、私もっ!」
ーーーー。
ザリッパたちを引き渡し、ピュリスさんたち王宮騎士団を見送って、ククリナとアリサと三人で屋敷に戻る。
「ククリナ、さっきはごめんね」
「いいえ、私も言い過ぎましたわ。申し訳ございません」
「アリサも、ちょっと怒ってたでしょ?」
後ろを歩く彼女にそう言うと、アリサが優しい口調を言った。
「いいえ、エリア様。私がエリア様に怒りを向けるなどあり得ません。しかし、ククリナ様の仰るとおり、男性に対しては、もう少し慎重に接していただいた方がよろしいかと思います……」
「アリサもそう思ったでしょ!」
ククリナが相槌を入れた。
「はい、ククリナ様。ですが、エリア様にはお心のままにお過ごしいただきたいとも願っております」
「私もそう思うわよ、アリサ……」
ククリナもアリサも、私の事、そんな風に思ってくれてるんだ……。
「……とは言え、エリア様のそうした純真なお気持ちに、男どもの悪意がつけ込んで来ないよう、私たちは最新の注意を払わなければなりませんわ」
「はい。もちろんです、ククリナ様」
箱入り娘かっ!
玄関扉の取手に手を掛ける。そして、ゆっくりと扉を開けた……。
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
と思ったら
下の ☆☆☆☆☆ から、作品への応援お願い申し上げます。
面白かったら星5つ、つまらない時は星1つ、正直に感じたお気持ちで、もちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当に励みになります。
重ねて、何卒よろしくお願い申し上げます。




