033-2-14_気になるメイド少女(挿絵あり)
知らない間に時間が過ぎて、お昼になっていた。すると、ガゼボの方に、一人のメイドがやってきた。
「ど、どうぞ。午後のティタイムです」
やってきたのはメイド少女のサリィだ。彼女は、どうも他のメイドとは違う雰囲気を持っている。サリィを見てみると、昨日と同じように足首まであるワンピースのメイド服を着ていて、特に変わった様子はない。いや、一カ所だけ、目を引くところがあった。
ホワイトプリムが、なんか、可愛い!
ボズウィック男爵家のメイドが着けているホワイトプリムは、カチューシャのような形でフリルが付いたオーソドックスなデザインだと思う。しかし、サリィのホワイトプリムはちょっと違った。サリィが付けているものは、レースを基調にした細めのものだが、小さく刺繍が施されている。そして、サイドがひも状に垂れ、その部分もオレンジや赤の模様が刺繍されていた。
へぇ~、ちょっといいね、そのデザイン。
サリィは紅茶とスコーンのようなものが盛り付けられた絵柄の皿をテーブルに置いた。それを見てイリハが言った。
「エリア、おやつにしましょ!」
そう言って、イリハは、サリィから手渡された温かく蒸されたタオルで手を拭き、スコーンに手を伸ばそうとした。しかし、その時……。
「キ、キャーっ! サリィの肩、肩に虫、早くっ、早く取ってよっ!」
イリハが大声で叫ぶ。見るとサリィの肩には拳大の蜘蛛が一匹乗っている。サリィは驚きもせずに言った。
「この子は何もいたしません。おとなしい子です」
イリハは身体を思い切りのけ反らせ、悲壮な顔をして言った。
「いやーっ、イリハ、虫はキライなのっ!」
サリィはにっこりと笑いながら立ち尽くしている。
イリハって、花の手入れは好きなのに虫は苦手なのか? それにしても、サリィは蜘蛛が大丈夫なんだ? 女の子にしては珍しい。イリハの反応は置いといて、サリィというメイドのことは、昨日、初めて会ったときから気になっていたのだ。
「サリィ、ちょっと聞いていい? もしかして魔法使えるんじゃない?」
するとサリィは首を横に振って否定した。
「い、いえ、魔法なんて知りませんっ!」
そうなのか。僕の勘違いかな? いや、本人に自覚が無いだけなんじゃないの。ちょっと確認してみよう。
彼女の手を取って言った。
「ちょっと、僕の目を見てくれる」
そう言ってサリィを中腰にさせ、彼女の目を見た。すると、彼女から入ってきたイメージは蜘蛛と遊んでいる場面のシーンだった。
やっぱり、この子は蜘蛛が好きなようだね。
しかし、彼女の言う通り、魔法を読み取ることはできなかった。
う~ん、僕の勘違いかな? 確かにサリィから妖精か精霊の存在を感じるんだけど?
「サリィ、君は蜘蛛と仲良しだよね。蜘蛛たちは君の言うことを聞いてくれるの?」
するとサリィは顔を目いっぱい綻ばせ、手を祈るように組んで、元気よく、「はいっ!」と返事をした。
なるほど、やっと理解者に出会えたというような顔だな。
彼女はきっと、これまでの人生のどこかで、蜘蛛の妖精か精霊のような存在と関わっていると感じる。ただ、本人はそういう存在との出会いを夢として忘れていることもあるかもしれない。
彼女に伝えた。
「サリィ、君は蜘蛛の妖精か精霊と縁があるようだ。今度、僕とゆっくり話をしない? そのホワイトプリムのことも聞きたいし」
するとサリィはさっきと同じ元気な返事をし、二回お辞儀をして、屋敷の方へ小走りに戻って行った。それを見ていたイリハが、うらやましそうに話した。
「あの子、妖精様か精霊様に気に入られてるのね。いいなぁ」
「蜘蛛でもいいの?」
ちゃんと言っとかないとね。
するとイリハは、また身体をのけ反らして、ぶるぶると首を横に振った。午後の庭散策はとても楽しい時間となった。イリハの性格も良く分かったし、精霊のイニシエーションの話も聞くことができた。それに、サリィの事がずっと気になっていたけれど、やっとその理由が分かった。
ーーーー。
夕食の時間となった。
僕は今、男爵家族と一緒にダイニングのテーブルに集まっている。どうやら、試験料理が出来上がったようだ。いよいよ料理が出される。男爵はじめ、ローラ夫人、そしてイリハにおいては数か月、ずっと食事が喉を通らない状態だったから、久しぶりの料理に期待しているようだ。試験以外の品は料理長が作ったものが加わり、コースとなって仕上がっているとのこと。男爵から言われ、僕も彼らと一緒にテーブルにつくことになったのだ。そして、メイドたちによって料理が運ばれてきた。
初めはサラダ。これは上等だ。料理長だろう。さすが料理長のサラダだ。トマトのような赤い野菜にラディッシュのような薄切りの白い野菜、緑の小さな葉もちりばめられた見た目も美しい生ハムのサラダだ。
次はスープ。ダニールの試験料理だ。みんな一口目をゆっくりと味わいながら食べている。
じゃぁ僕も。どれどれ……。
色は綺麗な淡いグリーンだ。ミルクも入っているだろう。これは豆のスープだな。シンプルな塩味だけど豆の風味がよく出ているようだ。お腹にも優しい。
そして、メインはいよいよ鳥料理だ。運ばれてきた料理は、トマトベースのような赤い色をしている。鶏肉は柔らかくホロホロと崩れるほどだ。豆はほのかに甘く、スープの酸味と良くあっている。鳥ガラのコクと数種類の香草の風味もいい。
うん、なかなか旨いと思うけどね。
男爵家のみなさんも残さずお召し上がりのようだ。
そして、デザートはあれだ……。
ちゃんとレシピ通りに作れてるかな?
デザートがテーブルに運ばれてくると、みんな珍しそうにして眺めている。
男爵が言った。
「ほう、これはゼリーか? 上にかけられているのは何だ」
ローラ夫人も見た目の感想を言った。
「綺麗な菓子ね。この粉はとても香ばしい匂いがしていますね」
イリハが言った。
「すごくおいしい! これ好きっ!」
よしっ! 上出来だ。代替品で作った蕨もちだ。片栗粉のような粉がキッチンにあったから、これならできると考えた。それと大豆によく似た乾燥した豆もあった。シンプルで飽がこない甘さだし、評判も良さそうだ。
和菓子屋ではあんこ蕨にしてたけどね。
みんなが料理を食べ終わると、料理長とダニールがダイニングにやってきた。そして、男爵が料理の講評を始めた。
「久しぶりに食事と言えるものを口にした。大変旨かった。スープと鳥の煮込みは家庭料理に近い味だな。病み上がりのイリハでも残さず食べることができた優しい味だ。そして、あの菓子だが、あれは見たことないな。良くできていた。どこの料理だ?」
ダニールが言った。
「あれは、わらび餅という名前だそうです。エリアの田舎でよく食べられていたものと聞きました。あの菓子はエリアに作り方を習いました」
男爵が料理長に向かって聞いた。
「料理長、どうだろう、彼の腕前は?」
料理長は、男爵に一度、会釈をし、ダニールに向かって言った。
「ダニール、お前の田舎料理としての腕は認めよう。しかし、料理に気品が感じられない。だから、男爵様にはふさわしいものではない。しかし、あの菓子は珍しい食感で私も見たことがなかったし感服した。ただし、エリア様に教えていただいたものでは、残念ながらお前の評価にはならんな」
ダメなのか?
ダニールは真剣な顔をして、料理長の答えを待っている。そして料理長が続けて言った。
「料理は不合格だ。しかし、ダニール、お前の心根は正直だ。見習いとして先輩料理人の元で腕を磨き、男爵様にお認めいただけるよう、誠心誠意励むがいいだろう」
合格なのか。あーよかった。ホッとしたよ。
すると、男爵はにやりと笑ってその場を締めた。
「それでは、ダニールを今から使用人として召し抱えることとしよう。ダニール、いいな?」
「あ、ありがとうございます。一生懸命励みます」
ダニールが大きく腰を曲げて男爵にお辞儀をした。彼も緊張していたようで胸をなでおろしている。男爵はみなにもよろしくと伝え、ダニールの試験は終了した。
やれやれだね。
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キ、キャーっ! サリィの肩、肩に虫、早くっ、早く取ってよっ!
AI生成画像
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