338-16-18_耐性と適性
彼女の緑色の髪は淡く光を放ち始め、水色に変化したっ!
「おおっ!」
モートンが驚いて声を上げる。セルティスは、目の玉を上にして覗くように自分の前髪を見上げた。
「本当ぉ〜! 凄ぉ〜い!」
「こ、これはっ! エリア様、どういう状況でしょうか?」
セルティスの手を握ったまま、モートンの質問に答える。
「多分だけど、雷エネルギーにセルティスの身体が反応したのよ。雷への耐性というよりは適性よね。それにしても、髪が青くなるのねぇ。不思議〜」
もしかして、青鬼になっちゃうとかだったりして……。
しかし、しばらく彼女の様子を見ていても、それ以上変化する兆しはない。そして、手を離す。すると、セルティスの髪は元の緑色に戻ってしまった。
「あれぇ……?」
彼女は、前髪を掻き分けて頭をさすっている。
「どうしたの?」
「何だかぁ、こぶのところが、むず痒いよぉ」
「ちょっと見せてみて」
そう言って、彼女の頭を上から覗く。すると、セルティスが指で抑えているところだけ小さいコブのように白く盛り上がっていた。
「こんなの前からあったの?」
「あったけどぉ、痒くなったの初めてよぉ〜」
セルティスの言葉を補うように、モートンが説明を加えた。
「エリア様、そのコブこそが、この子たちが鬼子である事を知らしめる証拠なのです。恐らくそのコブは、角の名残でしょう」
「なるほど〜。すると、雷属性の魔力を流す事で、少し感覚が戻ったって事じゃないの?」
「さて、そこまでは……まぁ、頭が痒くなる事などは良くある事でございましょう」
モートンは、セルティスの頭にある鬼族の角の名残が、雷属性の魔力に反応したかどうかについては懐疑的のようだ。
「でも、身体には痛みとか何もなかったでしょ? それなのに、髪の色と角の名残の感覚が変化したのよ。これって、セルティスが鬼か何かに進化しそうになってたんじゃないの?」
「え〜? 進化ぁ〜? でもぉ〜、今のぉ〜、あんまり強くなかったよぉ〜」
「そう思う? 結構な雷が流れた筈なんだけど」
「エリア様、確かにセルティスの髪も角の名残も、何かの反応を示しておったようでございましたが、私にも、この子が申しましたように、強い魔力が流れているとは感じませんでしたが……」
あぁ、そうか。確かに稲光が走った訳じゃないし、見た目には強い電流が流れていたかどうかなんて分かんなかったかもね。でも、セルティスは、間違い無く超人的な電気への適性があるわ。まぁ、そこまで言うのなら……。
「フフフ。それならモートンにも体験させてあげるわね。ただし、今から流すのはセルティスに流したものと比べると百分の一よりも遥かに小さい量よ。でも、ちょっと痛いかもね」
そうしてモートンの手を握り電流を流す。これは、ジャブロクの屋敷にいた年配メイドを気絶させた時と同じパワーのものだ。
「じゃぁいいわね。いくわよ? はいっ!」
その瞬間、モートンの身体が大きく跳ねてしまった! 彼の身体は座面から少し浮いて、ソファの背の方に乗り上げるように飛んだ!
「グフッ! クッ! うう〜」
モートンは喉の奥から声を漏らし、顔を顰める。
「大丈夫? 辛いのならヒーリングしてあげるけど?」
「い、いえ、問題ございません……」
「ねっ、これで分かったでしょ? セルティスの雷適性の凄さが」
「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ。は、はい。ゴホッ。す、すみません」
「モートンさぁん。大丈夫ぅ〜?」
「ハァッ、ハァッ、ハァッ……」
セルティスは、額の上を指で触りながらモートンに声をかけた。しかし、モートンは話せないでいる。櫛で整えられていた彼の髪はバサバサと乱れてしまい、呼吸も荒い。
「これはダメそうね。ちょっと待ちなさいよ、今、治してあげるから」
モートンは年齢を重ねているから、もしものことがあってはいけない。だから、通常のヒーリング魔法ではなく、中級治癒魔法をかけてあげた方が良さそうだ。そして、彼の背中に手を添えて魔法を放つ。
「デア・オラティオっ!」
緑色の光がモートンを包み込み、光の粒が煌めきながら彼の中に浸透していく……。
そして、しばらくすると彼が落ち着いた。
「もう大丈夫でしょ?」
「はい……」
モートンは姿勢を正して大きく深呼吸すると、シャキッと背筋を伸ばし、ビシッと立ち上がる。
「まったく、世話が焼けるわね」
彼を見上げてそう言った。
「誠に、申し訳ございません……」
モートンはそう言って九十度のお辞儀をした。セルティスはポカンと口を開けてその様子を見ている。
「……では、エリア様、セルティスの試練の件、よろしくお願いいたします」
「分かったわモートン。ジャブロクの件が片付いたらどこか広い場所にでも移動して、そこでこの子の試練を行いましょう……」
これで、この子たちの事は何とかなりそうね。
「……それでいいわね? セルティス」
「はぁ〜い」
セルティスが気の抜けた返事をする。それと同時に、談話室の扉がノックされた。アリサが扉を開ける。すると、扉の向こうでアリサの先輩メイドが恭しくお辞儀をした。
「エリア様、王宮騎士団のオスカル隊長様がお越しになられました……」
どうやら、ザリッパたちの引き取りに来てくれたみたいね。でも、それはついでみたいな話で、ピュリスさんも言ってたけど、何でも王宮騎士団に潜むスパイを捕まえる作戦だって事だもんね。そのスパイが捕まれば、王宮騎士団内部の大掃除も出来るって事も言ってたわ。それで、疑いを掛けている男は、さっきオスカルさんと一緒にセシリカの事務所に来ていた男だったらしいんだけど……。
上手くいったのかな?
「……隊長様とお連れのお方々には、玄関でお待ちいただいております」
「分かった。今行くわ!」
では、私もククリナに……。
「エイル、お願いっ!」
「ジャジャジャーンっ!」
そうして、エイルを通じククリナに来てもらうよう連絡を取った後、玄関へと向かった。
ーーーー。
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「この後どうなるのっ……!」
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