337-16-17_雷の試練
セルティスは、試練の話を他人の話題でも聞いているかのように、無邪気な丸い瞳をして私を見ている。
「いい? 聞いてるの、セルティス? あなたの試練のことなんだけど、つまり、雷の試練を受けてもらうわよ」
「雷ぃ〜?」
「そうよ、雷よ。だってさっきも言ったでしょ。雷神様の巫女になってラーシャと守護精霊契約するんだから」
「どうするのぉ〜?」
「雷の試練と言えば、雷に打たれるって事に決まってるでしょ! それ以外に何があるって言うの!」
ちょっと無理矢理な言い方だったかな?
そして、腕組みし足を組んだ。すると、ラーシャが先程と同じ手振りの動作をした。彼女は両手を上に翳してから素早く下ろすと、後から言葉を足した。
「ドーンっ!」
そうそれ!
しかし、さらにラーシャは、首を落とし項垂れるような仕草をして言った。
「ガクッ!」
あっ! さっきと違う?
「それ、絶対死ぬよっ! って言うか、今のは死んだってことでしょっ!」
セルティスはそう言って、テーブルに両手を付いて身を乗り出したっ!
「なんだ、普通に話そうと思えば出来るじゃないの、セルティス」
「セルティスや、お行儀良くしなさい……」
モートンは、穏やかに彼女を諌める。セルティスは唇を噛んで眉間に皺を寄せた。モートンは言葉を続ける。
「……いやはや、それにしてもエリア様、本当に大丈夫なのでしょうか?」
「心配しなくても大丈夫よ。今のラーシャのフリは、ちょっと驚いたっていう意味ね……」
多分。
「……まぁ、死にはしないから。それとも、二人とも試練が怖いの?」
「い、いえ、ただ、流石に生身の人間で雷に撃たれるというのは。ホッホッホ」
モートンは、そう言って愛想笑いをする。
「モートンはこう言ってるけど、セルティス、あなたはどうなのよ?」
彼女は、噛んでいた唇を開いて言った。
「そんなの、怖いに決まってるもんっ!」
そして、ソファにドスンッと腰を下ろすと、腕組みして目を閉じた。何も言わずにセルティスの様子を窺う。彼女は膨れっ面だ。しかし、セルティスは、細く目を開けると口を尖らせたまま眉を寄せて呟いた。
「……で、でも、やらなきゃ、私たち食べられちゃう……」
「そうね」
「ホントに死なないの?」
「多分ね」
「痛くない?」
「痛いかもね」
「痛いの嫌だ……」
「生きたままお腹切られるよりはマシよ」
「エリアちゃんって意地悪だよね」
「そう? むしろ、親切だと思うけど」
そう言って足を組み替える。
「ムゥ〜っ。もし雷で死んじゃったら、エリアちゃんが責任取ってくれるの?」
「責任って何なの?」
「責任って言ったら責任っ!」
「意味わかんないけど、そんなの、死んだら終わりに決まってるでしょ」
「じゃぁ、嫌だ」
やれやれ。甘えた根性しちゃって。まぁ、でも、仕方ないか、この子たちは小さい頃に親がいなくなって、まだまだ甘えたいのよね。
「いいわよ。あなたが死んだら、私が蘇生魔法で生き返らせてあげるわ。それが出来るようになったらね」
「蘇生魔法なんて、そんなの信じられる訳ないっ!」
確かに、今のところそんな魔法なんて出来る気がしない。けれど、スキル和菓子職人から進化したスキル創作の可能性は、無限大なのだ。もしかして、もしかしたら、もしかするかもしれない、なんちゃって。でも、試練の事は、ちょっと適当に言い過ぎたわね。私も、説明が足りなかったかも。面倒臭いけど、仕方ないわ。
ふむ。だったら、百番は一見にしかず。
足を解いて両膝をポンっと叩いた。
「分かったわ。じゃぁ、ちょっと実験してみましょう! あなたが雷では死ないって事を証明してあげるわ」
「実験って?」
「あなたに、雷属性の魔力を流すだけよ」
「エリア様、この子の雷耐性を調べるということでしょうか?」
「そうよ……」
神妙な表情のモートンに、軽く微笑んで返事をした。
「……ほらっ、セルティス、両手を出してみなさい」
「い、痛くなぁ〜い?」
「全然!」
そう言って彼女の両手を取る。
「いい? しっかりと私の魔力を感じてみなさい」
ラーシャによれば、鬼子のセルティスとアイリッシュは、雷では死なないらしい。とは言え、いくら言葉で言っても恐怖は簡単に無くならないようだ。だから、セルティスに電流を流す。こちらの世界では、まだ電気を利用する技術は無いようなので、電流とか電気とか言っても通じないため雷属性の魔力と言っているけれど、私にすれば電気の方がイメージしやすい。そして、前世では、人間など家庭用の電気でも状況によって死ぬ危険性があると教わった事がある。雷ともなれば、人間など即死だそうだ。この二人が雷では死なないのなら、セルティスにいくら電流を流したところで大丈夫な筈。そこで、小さな規模の落雷で発生する電流を彼女の身体に流してみる。
「じゃぁ、流すわよ!」
最初は、家庭用の照明くらいの小さな電流から。とは言え、普通の人間は危険なレベルだ。左手に魔力を込めて圧を高め、小学生の時に社会の教科書で見た発電機をイメージして電流化させる。そして……。
「通電!」
「つうでん?」
「ハハ、何でもない何でもない。それで、どう?」
「う〜ん、なんかぁ、温かぁ〜い」
それは、私の手の温度ね。
「じゃぁ、これは?」
次は、ホットプレート並みだ。これって結構電気を食う家電だけど……。
「別にぃ、何にもぉ〜」
やっぱり、普通じゃないわね。
「なら、これはどう?」
そして、次に流したのは、小さな落雷規模の電流だ。そうイメージして魔力を込めたから間違いない。
電圧は五万ボルト以上! 電流は十アンペアー程度ね! 彼女の肉体の電気抵抗を考慮しても、普通の生物なら間違いなく即死レベルよ。
すると……。
「あっ! セルティス、あなたの髪の毛がすごい事になってきたわっ!」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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