335-16-15_【幕間(五)】(1/2) プロディの企み ーー王宮騎士団護送馬車ーー
(カバール商会戦闘員プロディ・オービタス②)
王宮騎士団詰所、護送馬車出発前ーーーー。
それにしても、ローズの事務所であれを見た時は、驚きを隠すのに苦労した。まさか、あの覚醒獣人部隊だったカッペルがやられていたとは。バイス所長には、奴が殴り倒されたと報告したが、恐らく、あれは素手でやられたに違いない。それもたったの一撃で、しかも、あんな小娘にだ。
未だに信じられんな……。
ところが、信じられん事は他にもある。オスカルと小娘の会話を聞いた時は、流石に耳を疑ってしまった。
あの小娘は、奴隷狩りのザリッパをも倒したというのか? 何者なんだ、あれは……?
見たところは、普通の若い娘と何も変わらん姿だった。獣人のように腕力が特別強い様子でもなかった。
いや、俺がこれ以上詮索したところで怪しまれるだけだ。何がどうなってそうなったのか皆目検討が付かんが、兎に角、ザリッパの野郎は、ボズウィックの屋敷で拘束されているのだろう。それで、あの時、思わず自分が護送すると言ってしまったのだ……。
う〜む。少し、慎重さを欠いてしまったか。
「プロディさんっ!」
……。
「ちょっと、プロディさんってば!」
ん?
「何だ、ペディット?」
「隊長がいらっしゃってますよっ」
「え?」
おっと! ペディットの向こうに、オスカルがいた!
「ぼ、ぼんやりしてすみません……オスカル隊長」
「大丈夫ですか、プロディさん?」
「も、問題ございません……」
危ない危ない! 集中しなければ。
「何か気になっている様ですが?」
「は? い、いえ、何もございません!」
畜生っ! いちいち面倒臭さい野郎だ! 何か気になるだと? 俺が一番気になってるのは、お前のその不気味な態度だよ!
ここに来てから三年。実は、こう見えて俺とオスカルとは同期入隊だ。商会のコネを使ったものの、筆記と実技、そして、面接と、当たり前の手続きを経て入隊した俺と違い、オスカルは、面接のみで入隊した後、王宮騎士団史上最速で隊長になりやがった。しかし、コイツは単なる貴族のドラ息子ではなく、最初から特別な存在だったのだ……。
コイツの正式な名は、オスカル・フォ・ドルーイ。ドルーイ侯爵家の長男で、年齢は現在十九歳。この男は、入隊からずっと任務を完璧に成し遂げてきた。ただ、不思議なことに、隊員の誰も奴の戦う姿すら目撃した事がない。俺はコイツと同じ任務に就いた事はないが、同僚たちが言うには、奴が騒乱現場に向かえば、眩しい光が現れた後、いつの間にか賊どもが倒されて事件が解決するらしい。それで、コイツに付いた二つ名が、光の聖騎士。まぁ、俺に言わせればとんだ変人野郎だ。しかし、コイツの恐ろしいところはそこじゃない。
人の内面を見透かすようなあの目……。
奴と面と向かっているだけで、こっちの考えが読まれているような気分になってしまう。
チッ! 気色の悪い奴だ!
とは言え、今は冷静にならなければならん。
「出発の準備が完了しましたっ!」
「そうですか。では、三人とも頼みましたよ」
「はっ!」
「はっ!」
「はっ!」
そう言って、御者台の上から三人で敬礼をする。
「よし、出発だっ!」
掛け声とともに 馬に合図を送る。そして、護送馬車は中央広場を出発した。
ーーーー。
「あ〜、オスカル隊長、超ぉ〜カッコいいよね〜!」
「何だペディット、イケメン好きなのか?」
「そんなの当たり前ですよ、プロディさん。女の子は、基本みんなイケメン好きなんですっ!」
「無理無理! 隊長はやめとけって、ペディット。ライバル多過ぎだぞ」
「マーカス、何? もしかして、ヤキモチ妬いてんの?」
「お前、バカだろ!」
「へへんっ! 今日はあんたに何を言われてもイラッとしないわよ〜。だって〜、さっき、隊長に見つめられたんだもの〜。私、隊長のためなら何でも出来ちゃうわ」
「いっその事、隊長の奴隷にでもなっちまえよ」
「ムフフン。それもいいわね〜」
女の気は知れんが、オスカルのような特別な人間は、女を奴隷にするのに、無理やり首輪を付ける必要も無いんだな。
「お前、本物のバカだろ」
「何だって! マーカスっ! いい加減にしないと私の魔法で切り刻むわよっ!」
「怒らないんじゃなかったのかよ?」
「見逃すのは一回だけに決まってるでしょ!」
「おい、俺を挟んで喧嘩するのはよせ。それに、ペディット、言っておくが、自分から奴隷になってもいいなんて言う事は、例え冗談だとしても、あまり感心しないぞ。この世には、生まれた時から奴隷の奴もいるんだからな……」
まったくこの世は不平等だ。オスカルのように生まれた時から何もかも手に出来る奴もいる一方で、奴隷としてしか生きられない人間もいる。そこまで哀れではなくとも、俺の様に、恵まれた容姿も家柄も無い有象無象の奴らの方が圧倒的に多数派だ。しかし、俺は、この世界を憂いている訳ではない。何故なら、こんな人間でも、力を手に入れさえすれば金も女も好き放題出来るのだからな。俺は、この任務を無事終えて、必ずカバールの幹部になってやるのだ!
……その時には、このペディットも俺の奴隷にしてやってもいい。フッフッフッ。
「もう〜、プロディさんってば、お父さんみたいな事言わないで下さいっ!」
「えっ? あ〜、いかんいかん。この歳になると、つい、辛気臭い事を言ってしまう。まぁ、でも、もっと自分の事を大切にした方がいい」
「ムゥ〜、もう分かりましたっ!」
「お前、絶対、分かってないだろ?」
「あんたは関係ないっていうのよっ!」
「おい、二人とも、あんまり大声を出すと近所迷惑だぞ」
「は〜い」
「すみませんっす」
まったく脳天気な奴らだ。これから自分たちがどうなるのかも知らずに……。
別に俺は、この二人に恨みがある訳じゃない。この任務でコイツらと一緒になったのは、オスカルの人選なのだからな。まぁ、運が悪かったと諦めてもらうしかない。ただ、ペディットは若い女だけに、奴隷として高く売れる。そのため、マッドとは、この娘を殺さないでおくと話してある。上手く会頭のお許しが出れば、俺の手に渡ってくるかもしれない。そういう打算もあっての事だ。しかし、気の毒だがマーカスには死んでもらわなければならない。
そして、マッドと打ち合わせた通り、王都を特権階級と庶民とに隔てるように流れるレピ川の川べりを進む。この道は人気が少なく都合がいい。オスカルから復路の指示は受けているが、往路の道はこちらに任されている。この道を通ったところで奴に怪しまれる事はない。マーカスとペディットもどこを通ろうが気にはしていないだろう。
さて、もうそろそろの筈だが……。
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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