334-16-14_鬼と言えば……。
ゆっくりと目を開けると、ラーシャが私の顔を覗くように見ている。彼女は少し口を開けて、何か言いたげな表情だ。取り敢えず念話で話してみる。
「ラーシャ、この子たちをあなたの巫女にすればいいのよね?」
でも、具体的にはどうやったらいいんだろう? 雷神様は私に、結い繋ぎて、って仰ったけど……。
「女神、ラーシャの巫女、試練、必要」
試練?
「何? ラーシャ、試練ってどういうこと? この子たちがラーシャの巫女になるために何かの試練を受けなきゃいけないの?」
「女神、試練受けると、二人、巫女になる」
ラーシャはそう言った。どうやら、アイリッシュとセルティスがラーシャの巫女になるためには、何かの試練を受けなければいけないらしい。
試練ねぇ……。
「分かったわ、ラーシャ。でも、試練ってどんな内容か教えてくれる?」
ラーシャに念話で聞くと、彼女は両手を上に掲げ天井を仰ぎ見ると、言葉を口に出して言った。
「ドーン!」
うっ! これは、もしかして……。
念の為に、念話で確認する。
「ラーシャ、今のって、雷に撃たれるってことじゃ無いよね?」
「雷、撃たれる」
マジ!?
「で、でも、ラーシャ、そんな事したら、二人とも死んじゃうんじゃないの?」
「鬼の子、大丈夫。でも、ちょっと、痛い」
痛いんだ。いや〜、でも、本当に信じていいんだよね? 間違ってたら、即死よ即死!
薄目を開けて実際のラーシャを見ても、彼女の表情に事の真偽など現れるはずもない。
ま、まぁ、精霊の言う事だし、間違いないか。
「そ、そっか。う〜ん、何となく分かったわ。この子たちが鬼子だから雷に撃たれても大丈夫ってことよね〜、ハハハ」
考えていても仕方ないわ。もう、それで行こう! 間違ってないって方向で!
それにしても、鬼子って、雷に撃たれても大丈夫だなんて、元々、雷に属性があるって事かもしれない。
「試練終わる、鬼巫女になる」
「そういうことね、ラーシャ、ありがとう!」
なるほど、彼女たちの強化方法はイメージ出来た。
試練の内容は、もうちょっと伏せておくけど……。
そうして、モートンとセルティスに向かって、雷神の話から確信を得た鬼族がどうして弱体化してしまったのか、どうやったら力を取り戻すのか、そして、鬼子が命を狙われなくなる方法について説明した。
「……という訳よ。二人とも分かったでしょ。でね、セルティス。あなたとアイリッシュはこれから、この、雷と雨の精霊にして雷神の子、ラーシャを自分たちの祭神と崇め、ラーシャの巫女になりなさいっ。そうすれば、あなたたちの未来は明るいわっ!」
そうやって話を進めようとするけれど、セルティスは、ただ、口をポカンと開けたまま固まってしまった。
あれ? 私の話、分かりにくかったかな?
すると、二人の様子を見かねたのか、モートンが改めて状況を確認した。
「エ、エリア様、ま、まさかこの様なお話になるとは、想像しておりませんでしたので、私も、少々混乱している所でございまして、話を戻すようで申し訳ございません。つまり、アイリッシュとセルティスの種族は、過去に彼らを守護する精霊との絆が途絶えてしまったのだということでございますか? それが原因で彼らは力を失い、人間に狩られる存在になってしまったと……?」
「ええ、恐らくね。さっき、あなたがこの子たちは鬼族だって言った時、私、ピンと来たの! ラーシャを見て! ほらっ! ここに角が生えてるでしょ?」
そうそう! 鬼と言えば角でしょ!
「確かに、小さな角をお持ちの様ですが……」
「……この子ね、本当は人々から信仰される神様なの。でもね、衆生からの信仰心を失ってしまったみたいで、今は、私と一緒に、ラーシャが鎮まるべき場所を探してるのよ。それでね、アイリッシュとセルティスも鬼なら、ラーシャとの親和性がとても高いんじゃないかって。つまり、ラーシャと守護契約することがいいんじゃないかなぁって考えたの。そうすることで、アイリッシュもセルティスも、ラーシャの力を身体に取り込むことが出来るし、ラーシャも、この子たちの信仰心によって、今よりも力を付けていくことになるわ。そうすれば、さらに二人の力が増して行くことになるのよ。場合によっては、この二人が本来の鬼族の力を取り戻すかもしれない」
それで間違いないわっ!
「な、なるほど。エリア様の仰る通りかもしれませんな。それならば歴史書で示された内容に反し鬼族がこれほど弱いという事実にも合点がいきます。この二人は、目立った角は生えておりませんが、髪の毛を掻き分けますと二人とも角の名残がハッキリとございます。実は、その歴史書に、立派な角が描かれた鬼族が記されておるのですが、近代において、そうした鬼族は確認すらされておりません。ですから、鬼の種族は既に退化し、大きな角を生やした鬼などは、最早、伝説の話だけだとばかり……」
へぇ〜、そうだったんだ〜。ラケルタ人が精霊の守護を失って力が弱くなっちゃったから、多分、それと同じだと思う。
「まぁ、やってみないことには分からないけど、ラーシャと契約すると、少なくても雷や雨系統の魔法が使える様になるのは間違いないし、見ればわかるでしょ? ラーシャもあなたたちとの契約を望んでいるわ。普通、精霊からそんな風に思ったりしないんだから」
「ほぅ、ラーシャ様が二人との契約を望んでおられると? 私には、全く分かりませんが、そのようなお顔をされている訳でございますな。今のラーシャ様は」
「そ、そうよ、私には分かるのよ。ほら、ラーシャが揺れてるでしょ」
「はぁ……」
「フフフ。間違いないわ、モートン。この反応は鉄板よ!」
ラーシャってあんまり感情を顔に出さないから、分かんないのは仕方ない。でも、事実は事実。だって、雷神様が二人をラーシャの巫女にしなさいって言ったんだし、ラーシャだって積極的に試練の話をしたんだから。多分、鬼族を守護していた精霊も雷神系だったに違いないわっ!
そして、目の前のセルティスと向き合った。
「……後は、あなたの決心次第よっ!」
雷に撃たれる事まではまだ言って無いけど……。
そう言って、左手を腰に当てセルティスを指差したっ!
すると、セルティスが、ボソッと呟く。
「あの〜、さっき、その精霊様ぁ、ドーンッ! って言って手を上げてたけどぉ、し、試練って、何なのぉ〜?」
彼女が心配そうにそう言った。
どうしよう? い、言っちゃう? もう、言っちゃう? 言っても試練受けるの止めるって言わないよね。
しかし、セルティスの質問と同時に、扉がノックされた。
「カテリーナです。執事長、こちらにおいででしょうか?」
「はい」
アリサが返事をして、扉を開く。すると、カテリーナが一礼し、モートンの所まで行くと、小さな声で彼に報告した。
「あの、アイリッシュ様はお目覚めなのですが、先ほどの雷が怖いと仰られて、部屋からお出になられません」
えっ?
「そうなのか、それは困ったな……」
雷が……怖い……?
「まさか、アイリッシュって、雷が怖いの?」
「はい。あの子は、極度の雷恐怖症でして、雷が鳴るといつもこのように」
そう言って、彼はハハハと笑う。すると、セルティスが補足するように言った。
「アイリーちゃん、雷が鳴るとベッドの下に隠れちゃうのよぉ。スッゴイ怖がりでしょぉ〜。でもぉ、怖がり過ぎだよねぇ〜」
「そうなんだ」
う〜ん、アイリッシュはそんなに雷を怖がるのね。試練の事話したら、絶対拒否しそうね。どうしよう。って、そう言う時は先送りの後回しで解決よ! 取り敢えずはセルティスだけでも試練を受けてもらうしかないわね。
「セルティス、それなら、あなたから試練を受けてもらうわ!」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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