328-16-8_鬼子
「鬼子?」
「はい」
ホントに突然よね。
「そんなの、聞いた事ないけど……」
鬼と言えば、あの、鬼だよね。じゃぁ、鬼子はその子ども? 日本の昔話じゃ、鬼は、人間に悪さをして懲らしめられるって言うのが定番の存在だけど、子どもだけに、きっと、悪戯好きな生き物なんだわ。それにしても、こっちの世界にも鬼がいたとはね。
「……でも、鬼の事は知ってるわよ。絵本でも見た事あるから。鬼には角があって、力もすごく強くって人間に悪さをすると書いてあったと思うんだけど」
「絵本? でございますか。確かに鬼には角があり、特別な存在ではございます。中には悪さをする者もいるかもしれません。いや、それにしても、子どもが聞いて良い様な話ではなかったはずなのですが……」
あれ? あんなの、ただの童話なんだけど。やっぱりこっちの世界じゃ違うのかな?
「ま、まぁいいわ。それで?」
「はい。結論から申しますと、この子たちは、今申しました鬼子と呼ばれる鬼族の幼体であり、デミヒューマンなのです……」
「この二人が鬼族?」
どこが鬼なんだろう? 全然そうは見えないよね。
「……確かに、模擬戦では、この子たちから人間とは違った珍しい魔力の流れを感じていたけれど、鬼って言われても、あんまり鬼の特徴が分からないわね。幼体って言ったけど、まだ身体が大人に成長していないからなのかな? でも、二人が、その鬼子だったとして、それが一体何なの?」
「ええ、それでは、まず、鬼族についてから……」
鬼族ねぇ。
「……鬼族と申しますのは、人智を超えた力を備え人間たちに恐れられていた存在であったと歴史では伝えられております。しかし、現在の鬼族は歴史書の記述にあるような姿とはほど遠く、特徴も人間とあまり変わらない姿であり、数も非常に少ない種族として知られております……」
「いわゆる、希少種属って訳ね」
「はい。そして、鬼族が数を減らしてしまったのには、ある理由があるのです……」
「鬼族が数を減らした理由かぁ、と言う事は、この子たち鬼子がその理由に関係しているって言いたいのよね」
「お察しの通りでございます……」
そして、モートンは、鬼族たちがその数を減らした事情には、鬼子が大人に成長する前に、その多くが命を落としてしまうからだと言った。
「……実は、鬼子たちは、人間や強い魔獣どもによる、獲物としての積極的な狩の的となっておりまして、そのため、この子たちの同類は、その多くが狩り尽くされているのでございます……」
すると、突然、モートンの雰囲気が変わった! 彼は、顎を引いて視線が鋭くなり、厳しい表情をしたっ!
ゴクッ。
「……何故なら、それは、生きた鬼子の臓腑が……」
モートンは、一旦目を閉じて言葉を止める。そして、腹に溜めた息を吐き切るようにして次の言葉を言い切った。
「……滋養強壮の妙薬であるからなのですっ!」
「えっ?」
突然、耳鳴りがしてモートンの声が、段々、遠ざかっていく感覚に襲われた。
何? なんて言ったの……?
胸の鼓動が高鳴るっ!
今、なんか、もの凄く嫌な事を聞いた気がするんだけど……?
モートンの言葉を思い返す。
えぇと、鬼子の臓腑? な、内臓の事よね、それが、人間の妙薬になるって? えっ? で、でも、モートンは、さっきアイリッシュとセルティスが鬼子だって……。
頭の中で思考がグルグルと回り始め、想像したく無いのに勝手にイメージが湧いてくる。すると、脈が高鳴り、動悸が激しさを増したっ!
い、生きた鬼子の臓腑っ?
「ちょ、ちょっと待って、モートンっ! つ、つまり、この子たちの内臓は、滋養の高い妙薬って事っ!? でも、生きた臓腑ってどういうことよっ!」
身を乗り出してモートンに食ってかかるような言い方をしてしまった。彼の隣にいるセルティスは、黙ったまま自分の前髪を指でいじっている。モートンは、説明を繰り返す。
「……エリア様、鬼子の特徴、それは、この子たちの臓腑が、魔力の貯蔵庫になっているという事なのです。そして、人間を含め、他の生物たちは、それをより新鮮なうちに喰らう事で、大きな魔力を身体に取り込む事ができるのです……」
全身の毛が逆立つっ! 思わず、耳を塞いでしまった!
「……お聞き辛い事かもしれませんが、私は、あなた様にこの事をどうしてもお伝えしておきたいのです……」
モートンは、そう言って話を続ける。
「……強者が弱者を糧にする。これは自然の理りでございます。我々を含め、生き物は、基本的に大きな魔力を自らで産み出すことは出来ません。特に人間は、生命維持を行うための微量の魔力を、自らの生命活動で産み出している程度でございます。足りない魔力は、食物等を摂取する事で補わなければなりません……」
「そんな事、分かってるわよっ!」
声を荒げてしまった。しかし、モートンは、構わず続ける。
「……鬼子の臓腑を喰らう事は、生物にとって、魔力の塊である魔石を身体に取り込むようなものであり、食べる魔石と言ってもいいでしょう。この子たちの臓腑、よこし、むらと、はらわた、ゆばりぶくろにキモ、ココロ。その他にもございますが、それらを食せば、人間は病を治し、身体強化し、感覚器官の能力の底上げが出来るのです。特におなごのコブクロは、若返りの妙薬とされておるのでございます……」
「もう、分かったよ!」
「……この子たち鬼子は、人間から、神からのお下がり供物と呼ばれているのです……」
「だから、もう分かったってっ!」
頭を抱えて膝を見つめる。そして、モートンは口を閉じた。
何なのよっ、いきなりこんな話を人に聞かせて! この子たちの内臓が誰かに食べられるって……? そ、そりゃ、普通の人間だって、魔獣に襲われたら食べられるでしょ。で、でも、人間もこの子たちを食べるだなんて、一体、この子たちの命を、何だと思ってるのよっ、この世界の人間はっ!!
部屋の空気が重い。それに、いつの間にか呼吸が浅くなっていた。それに気付いて、意識的に大きく息をする。
大体、そんな話本人の前で……ハッ!? セルティスはっ?
我に返り彼女を見る。今の話はこの子も聞いていたのだ。
どんな顔をしてる?
すると、セルティスはソファの背にもたれ掛かり、顔を逸らすように横を向いていた。彼女の表情は見えない。
今は……何も言えそうに……無い……。
「……」
「エリア様」
「……」
「エリア様……」
モートンが、まだ話している……。
「エリア様、お気を落とされぬように。この話は、本人たちも十分理解しておりますので。それに、誤解の無きよう申し上げますが、この子たちが、今まさに、誰かに命を狙われているという訳ではございません……」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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