327-16-7_育ての親
談話室で、アリサと雑談しながらセルティスが来るのを待っていると、扉がノックされた。そして、声が掛かる。
「エリア様、こちらにおいででしょうか?」
ん? モートン?
入り口の方に注意を向けると、アリサが扉を開けて外にいる人物を確認し、こちらに振り返って言った。
「エリア様、執事長とセルティス様でございます」
お兄様が連れてきたんじゃないのね……。
「いいわよ、入れてあげて」
「はい」
アリサが彼らを中に誘導すると、モートンは、入り口のところで立ち止まり、大きく一礼した。一方のセルティスは、部屋に入るなり、両手で口を押さえて固まってしまった。
「ん? どうしたの?」
「エ、エリア……ちゃん……だよね……?」
「そうよ。何をそんなに驚いてるの?」
「セルティスや、控えなさい」
モートンは、優しくセルティスを正すと、彼女は、ハッ、として自分の言葉に驚き、小声で言った。
「はぁ〜い……」
そして、彼女は、肩を窄めて下を向いた。
あっ、そっか、さっきは子どもの身体だったから驚いちゃうよね。なんだ、私の事、誰も教えてあげてなかったのね。まぁいいけど。それにしても、モートンは、セルティスをただ連れてきただけではなさそうな雰囲気だ。と言う事は……。
「モートン、私に話があるんでしょ?」
そう言って彼に微笑む。すると、モートンは軽く会釈をした。
多分、アイリッシュとセルティスの話ね。モートンは、彼女たちの親代わりらしいから、この子たちの事で何か言っておきたい事があるんだと思う。二人が私に挑んできた模擬戦を受けるように勧めていたのもモートンだし、この子たちを私に関わらそうとする目的が、何かありそうだわ。
「二人とも、どうぞ掛けて」
「使用人としてあるまじきですが、今日だけは無礼をお見逃しくださいませ」
彼はそう言うと、改めてお辞儀をした後、セルティスにもソファに座るよう目で合図した。セルティスは、こちらをチラチラと気にしながらソファに腰を下ろす。そして、モートンも彼女と同時に腰掛ける。彼は恐縮しているようだけど、こうしてソファに腰掛けて同じ目線で向かい合っていても、モートンは、やはり執事の姿勢を崩さない。
でも、モートンがこんな言い方するくらいだから、少し込み入った話なのかな?
この男、櫛の通った白髪を肩まで伸ばし、白い口髭を丁寧に整えた初老の執事は、背筋をピンと伸ばし、ニッコリと愛想笑いを浮かべて話を始めた。
「エリア様、このような時に申し訳ございません。この後、エリア様がこの子を連れてスピカに行かれると思いまして、出来ますればその前に、この子たちの事について、少々お話をさせていただきたいのですが?」
「もちろんいいわよ。でも、模擬戦の事なら何とも思ってないんだけど」
とは言え、さっきは、いきなりな流れで戸惑ったのは事実だし、この子たちも歳上に対しての口の利き方がなってなかったし。ん? いや、さっきは子どもだったのか……。
「はい。エリア様のお気持ちは存じ上げております……」
モートンは、そう言って軽く会釈し、話を続けた。
「……しかしながら、やはりケジメはケジメでございます」
彼はそう言うと、セルティスに何かを促す様に頷いた。すると、彼女は、立ち上がり、もじもじとしながら言った。
「あ、あのぉ〜、さっきわぁ〜、ごめんなさぁ〜い」
何? 今、謝ったのね?
「もういいわよ、そんなのどうでも」
一瞬、空気が固まった。
あれ?
セルティスがキョトンとしてコチラを見る。モートンも何も言わない。
わっ! どうしよう? なんか意地悪な言い方に聞こえちゃったのっ?
「ち、違うって! 本当にどうでもいいんだって!」
二人は、まだ黙ったままだ。
いっ!
「い、いや、あのね……」
どうしよう? どうしよう? 変な流れになってるじゃない! あー、もう面倒臭いっ!
「わ、分かったわよ! 謝罪を受け入れますっ! セルティス、仲直りしましょ」
そう言って手を出すと、セルティスも手を出した。二人で握手する。
「エリア様、ありがとうございます……」
彼は、そう言って立ち上がり頭を下げた。そして、言葉を続ける。
「……ところで、エリア様、 実は、旦那様からも、エリア様のお耳にお入れするようお申し付けいただいておるのですが、この子たちの身の上について、エリア様にお知り置き頂きたい事がございまして」
「私に?」
なんだ、仲直りさせるためにだけに来たんじゃないんだ。
「……男爵様がそう言ってるのね?」
「はい。エリア様にご相談するようにと……」
そして、彼は、改めて姿勢を正して言った。
「……突然でごぞいますが、エリア様は、鬼子という存在をご存知でしょうか?」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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