319-15-14_光の魔法
と、突然、なんて事言うのよっ! い、いきなりそんな事言われると、お、驚いちゃうじゃないっ! 真面目な顔して言われても、リ、リアクションが分かんないって!
視線が泳いで落ち着かない。すると、彼の後ろに立っていた二人の騎士団員も同様に驚いた表情をしていた。彼らは、後ろから目を丸くして上官に刮目している。
ほらっ! みんなもビックリしてるじゃないのっ!
「あらら、何なの、このイケメンったら。会ったばかりなのにもう子猫ちゃんを口説こうとしてるのかしら?」
え〜〜〜っ!? わ、私、口説かれてるのっ!?
アクレイがそう言うと、ククリナが一歩前に進み出た。彼女のオーラには殺気が纏われている。オスカルはそれに気づいたように一瞬だけククリナを見ると、少し焦ったように言った。
「ち、違いますっ! 私は決してそのような失礼な男ではありませんっ!」
「な〜に? 中央広場の女たちだけじゃなくお貴族様のご令嬢や奥方まで虜にしてる隊長さんが、そんな風に動揺しちゃうなんて珍しいわねぇ!」
「ちゃ、茶化すのは止めてください! エリア様の雰囲気に、少し驚いてしまっただけですよ! 団長からも彼女の事は伺っていたのですが、まさかこのように神聖な気を纏われたお方だったとは正直……」
ふ、雰囲気? そ、そりゃそうよね、こんなに立派そうな人が、私みたいな子どもを相手にする訳無いもんっ! で、でも、神聖ってどう言う意味だろう、ちょっと気になる言い方だわ!
「あ〜、なるほど。子猫ちゃんの事を普通の小娘みたいに思ってたのね。でも、実際見ると違ったから、唾つけちゃおうみたいな〜」
アクレイは、意地悪な顔をしてそう言った。
「アクレイさん、その辺で赦してあげてくださいよ……」
「いいじゃないのよセシリカちゃん。イケメンをイジるのは私の趣味なんだからさ〜」
アクレイは、セシリカの注意にも調子を崩さない。ところが、オスカルは、そんな会話を無視するように、突然、目の前に跪いたっ!
「わっ!?」
思わずドレスの裾を押さえてしまった。アクレイも額にシワを寄せて首を傾げている。
「エリア様……」
いっ!
「……あなた様にお伝えしたい事がございます」
そう言って、彼は顔を上げた。
「な、何っ? 隊長さん」
裾を押さえていた手をそっと離し、所在なさげに右手で左腕の二の腕を掴んだ。
ま、まさか……?
「キャー、あなた、大胆だわ〜、こんなところで告っちゃう訳?」
アクレイは両手で頬を抑えてそう言った。彼の言葉に少し焦る。
う、嘘ぉ〜、ど、どうしよう? ち、違うわよね? こ、告られたって、私、こ、応えられないんだからねっ!
「違います!」
オスカルはあっさりと否定した。
「えっ? ア、アハハハー、あー、ビックリした」
すると、心の中を見透かしているようにククリナがそっと手を繋いできた。そして、彼女から念話が入った。
「エリア様、殿方から甘い言葉で誘われても、靡かないで下さいね……」
「靡いてなんかいないわよっ! ちょっと驚いちゃっただけだって!」
「本当ですか?」
「き、決まってるでしょっ!」
「……う〜ん、でも、エリア様は、少し移り気の様ですわ。とても心配ですぅ。なんなら、私自身がチェスタティーベルトになって、エリア様を常にお守りしたいくらいですわ」
「何、それ?」
「貞操帯の事です」
「や、やめてってば! 分かってるでしょ? 私は女の子が好きなんだからっ!」
もう〜っ、何言わすのよ、ホント! だいたい、ククリナの何ちゃらベルトなんて、きっと、蛇の形をしているに違いないんだから! そんなベルト、勝手に動いて絶対変な事するに決まってる! って、何想像してんの、私っ!
しかし、ククリナは、一瞬だけ可愛い笑顔をこちらに見せると、冷静な表情に戻って彼を見下ろした。そして、ククリナは、「冗談ですわ」と念話で言うと、殺気を放つのをやめて、言葉を続けた。
「……この者は特殊な気を纏っておりますわね」
「そ、そうね。それは私も感じているわよ!」
ククリナの変わり身に、気持ちが置いていかれる感じになってしまった。ところが、オスカルに注意を向けると、あっさりと気持ちが切り替わる。
「でも、悪いものではないと思うんだけど……」
それにしても、この気の感じ、どこかで……。
思い出せそうで思い出せない。しかし、その時、ウィンディーネからも念話が入った。
「この人間、光の属性魔法を使うんじゃない?」
「光の属性?」
「ウィンディーネ様の仰る通りですわ。この者が纏っている気は決して強くはございませんが、光は全ての属性の最上位に位置する特性を持っております。ですので、例え弱い魔力量でもこの人間の周囲にいる者は、彼を特別な存在だと感じることでしょう」
「特別な存在? 英雄的な?」
「そうですね、英雄とは少し違いますでしょうか。ニュアンスが伝わるか分かりませんが、賢者といった方が良いかもしれません」
「そうなんだ! このオスカルって人は賢者なのね」
すると、ウィンディーネが言葉を挟む。
「この人間の場合、賢者と言われるまでは力が強く無いわ。でもそういう系統の魔力よ。光魔法は他の魔法と違ってこの世の理に干渉するの。そんな魔法は他に無いわ」
「光魔法って、そんなに凄いんだ……」
そう言えば、以前、エリアの記憶に出てきた治療術師が、光の精霊様に会って、もっと楽しい時代に生まれ変わりたいなんて事言ってた気がする……。
なるほど! かなり特別っぽい!
「……それなら、光魔法を極めれば、時間を操れるようになるとか?」
「そうね、そんな感じだと思うわ。ただし、光の精霊は、自らが選んだ光の心を持つ者としか契約しないらしいから、光魔法を使える人間なんて、相当、希少な存在なのよ」
「光の精霊が人を選ぶって事? それって、本人が望まなくてもなのかな? それに、光の心って闇が無いって事よね? でもそんな人間いる? 人間なんて、みんな多少は闇の側面くらいあるでしょ?」
「そんなの詳しく知らないわよ! 知りたければ、後はあんたが自分で調べなさいっ!」
ムゥ〜。四大元素の精霊が詳しく知らないって言うのにどうやって調べればいいのやら。まぁ、本人が知っていれば教えてくれるかもしれないけど。
念話から目の前のオスカルに意識を戻し、彼に声を掛けた。
「私に伝えたいことって何ですか、オスカル隊長?」
「何? 何? 子猫ちゃんに何を伝えるの? 気になるじゃない!」
そう言ったアクレイに、オスカルはチラリと視線を向けると、目を閉じてモゴモゴと何かを口の中で唱え始めた。
魔法詠唱っ!?
独り言のつぶやきの様なその声は、小さ過ぎてよく聞き取れない。しかし、どういう訳か彼の唱える言葉が心に直接伝わってくる。
”根源の叡智、聖なる意思、ガイアの槍に纏いし光、闇より出でて闇を祓い闇を解き放つ慈悲深きマニの光明、その名はアミタバ。我、今ここに在ることを宣言し、魂の約定に従いこれを意図するものなり”
そして、彼は目を見開き今度はっきりと声に出して言った。
「リベーラっ!」
次の瞬間、周囲の音が聞こえなくなるとともに、自分とククリナ、そして、オスカルだけが存在するかのように、世界から隔離されたような意識になった!
何これ? 凄ぉ〜い。へぇ〜、これが光の魔法かぁ〜、ちゃんとした魔法を見たのって初めてだわ! こうやって詠唱するものなのね〜。でも、何でだろう? 彼の詠唱が心に響いてくるようだったんだけど……。
感心しているとウィンディーネから念話が入る。
「あんた、もしかして、初めて魔法詠唱を聞いたんでしょ?」
「うん、驚いちゃった! 面白いわね〜。人間ってこうやって魔法を使うんだ〜。魔法詠唱って自らの意図を明確にするっていう意味なのね〜」
「ホント何にも知らないのね? よくそれで女神なんてやってるわ!」
「ほっといてくれるっ!」
「それなら教えといてあげるわ。人間たちはこうやって詠唱することで、その場に魔法契約フィールドを構築しているの。このフィールドはね、一定時間は保たれるから、同じフィールド内で短い時間内なら、同系統の魔法の連発も可能なのよ。もちろん、フィールドの範囲や継続時間は人間の精神力によって大きく違うんだけど……」
「そうなの?」
「……それで、精霊や妖精は自分に向けて唱えられた人間の魔法詠唱に対して、契約に基づいて力を貸してあげることになっているのよ。だから、きちんと唱えられた魔法詠唱は私たちにしっかりと届くの。この人間が唱えたものは、光の精霊に向けられたものだから私には関係ないけど、近くにいたから聞こえたんだわ。あんたも女神だから今の詠唱が心に届いたって訳よ……」
ウィンディーネは、自分と契約している人間が詠唱を唱えるとどこにいても聞こえるのだそうだ。それで、精霊や妖精たちは契約に基づいて力を貸すらしい。ただし、そこには人間の善悪のような価値観はなく、人間が放った魔法による結果に対しても関心もないし関与もしないのだそうだ。
「……兎に角、魔法は契約が全てよ」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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