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トラウマ女神のやり直し〜 隷属の女神の伝説/王国編〜 ♡♡♡TSして最強美少女になったはいいけど、心まで女になるなんて聞いてない!♡♡♡  作者: トンブタ
第15章 奴らの狙い

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317-15-12_カバール商会のカッペル

 彼女は、落ち着いてブラウスのボタンを留めた。


「そう言う割には、全然慌てて無いわね。いくらククリナが護衛だからって、リラックスし過ぎでしょ」


「すみません……」


 セシリカは、苦笑いしながら机の上の青ぶちメガネを手に取って掛けた。その時、ククリナから念話が入る。


「あの男がやって来たようです」


「そう。じゃぁ、表に出るわ」


 ククリナに返事をすると、セシリカにその事を伝える。


「どうやら、刺客がやって来たみたいよ。念の為、セシリカは隠れていればいいわ」


「お願いします!」


 事務所から外の通路に出ると、中央広場の方向から大きくジャンプを繰り返しながら飛ぶように走ってくる人影が確認できた。どう見ても人間の動きではない。


「何あれ? 鹿みたいに見えるわね?」


「鹿ですね」


 ククリナも、姿を現して隣に立つとそう言った。


 なるほど。あれなら確かに馬よりも早そうだ。


 ほんの少しだけ威圧を纏う。これで奴に気付いてもらえるだろう。すると、その男は二十メートルほど手前で最後のジャンプから着地し、こちらに注意を向けながら屈めた身体をゆっくりと起こした。そして、目が合う。男は、睨むように鋭い眼差しを向けた。


「貴様、何者だ?」


 仁王立ちになって話すその男は、痩せた身体つきをしており、細面で鼻が大きく、垂れた細い目をしている。


 腕を組み、奴を睨み返す。


「ただの通りすがりよ」


「ぬかせ。俺が来るのを待っていただろ?」 


「あれ? 分かっちゃった? そうよ、あんたが来るのを待ってたの。カバール商会のカッペル」


 そう言うと、男は、一瞬だけ目を見開いた後、そっと重心を落として左手にナイフを逆手持ちに構え、半身になった。


「何故俺の名を?」


「さぁ。なんでかなぁ」


「フンッ! まぁいい。後でたっぷりと吐かせてやる。それにしても、貴様、どうしてそんなものを嵌めている?」


「質問が多いわね。細かい性格の男は女の子に嫌われるわよ」


 ククリナから念話が入る。


「片付けますか?」


「そうね。初撃だけ受けてみるわ。奴らの実力を確認しておきたいから」


「分かりました」


 そして、奴に集中する。


「隷属の首輪。そうか、貴様がさっき所長が言っていた ”隷属の女神” とか言う小娘だな?」


「自分からそんな風に言ったことなんて無いんだけど。兎に角、ごちゃごちゃ言ってないで、早くかかって来なさいよ、カッペル」


 そして、こっそりと新しいスキルを発動する。


 エクストラハイパーセンス、発動っ!


「気安く俺の名を呼ぶんじゃねぇっ!」


 カッペルは、そう言った途端姿が消えたっ! 


 次の瞬間、今発動したスキルの効果から時間が止まったような感覚になる。これは、カリスのスキル縮地とエイルのスキルシンクロを、スキル創作で融合進化させたものだ。これにより、五感情報の全てが縮地のように加速する。つまり、超鋭敏化した感覚によって周囲の時間の流れが逆にスローに感じるのだ。そして、男の気配が後ろから近づいて来るのを感じた。


 ゆっくりと振り返る。


 なるほど、瞬間移動でもするのかと思ったけどそうでは無いわね。これは単なる高速移動だわ。とは言え、空中で空気を蹴って方向を変えたみたいだから、相当の脚力をしている。と言うかこの男、やっぱりただの人間ではなさそうね、顔も人間離れしてるみたいだし。


 目の前に迫るカッペルは、スローモーションの動きをしながら身体を沈ませて半身になり、右手で順手に持ったナイフを胸の急所一点に目掛けて突き出して来たっ!


 狙いもいいわ。ナイフと腕で私の視界から身体を見えなくしてる。この動き、やっぱり暗殺系のスキル持ちのようね。


 ハッ!


 小さく息を吐き、右足を半歩下げて重心を移したっ! さらに、左足も僅かに下げてグッと腰を入れると、今度は、上半身を右に捻りつつ右足を少し前に出す。すると、奴のナイフの軌道から身体が逸らされて、胸スレスレに奴のナイフと右手が伸びて来たっ! 男の顔が近づくっ!


 コイツ、目が笑ってる! 人殺しを楽しんでるの?


 奴は不敵に笑っているが、目が合っている訳ではない。そして、目の前をスローで流れる男の身体の後ろから、ナイフを握る左手が見えた。


 フフフ、当然、次もあるよね。バックアップの連続攻撃! やっぱりプロの殺し屋だわ。


 左手は脇に寄せ、右手は腰元で拳を握る! 男は、逆手に持った左手のナイフを、フックをかける様に繰り出したっ! 奴の目が私の首元を捉えているっ!


 狙いが正確だわ! でも、宙に浮いた身体が抱き枕みたいに隙だらけよっ!


 ナイフの切先を回り込む様に顎を移動させ、左手を胸前で手刀に構えると、思いっきり右腰を入れるっ!


 脇がガラ空きなのよっ!


「甲殻ぅぅぅーーーハンマァァァーーー突きぃぃぃーーーっ!!!」


 クッと腹に力を入れ、捻った身体の勢いそのままに手首に左回転を加えた右拳を、ズドォォォーーーンっ! っと、奴の左脇腹にえぐり込ますっ! 


 うわっ! いい感じで入り過ぎたっ!?


 空中に浮いたカッペルの胴体は、ゆっくりとくの字に折れ曲がりながら、正拳突きした方向に九十度向きを変える。その様子を見ながら、一杯に伸ばした右腕と腰を落としたポーズのまま口にする。


 "甲殻ハンマー突き" だって、フフフ、変な名前!


 眷属のスキルを使うと、その時の最適な技を自然な動きとして繰り出してしまう。そして、技の名前も口に出るまで分からないから面白いっ!


 じゃぁ、スキルを解除っと!


 そして、意識を楽にすると、周囲の動きが一気に元に戻るっ!


 すると、次の瞬間っ!


 ドカァァァーーーンっ!!! っと壁が割れんばかりの大きな音を立てて奴の身体がローズ事務所のレンガ壁にぶち当たったっ!!!


 うわぁ、壁大丈夫かな? じゃなくて、男の方は? まぁ、こんなものでは死なないでしょうけど。


 下がったところで見ていたククリナが、声を掛けてきた。


「奴の実力はいかがでしたか?」


 ククリナは、後ろに手を組んでこちらを見上げるようにそう言った。


「コイツ、人間じゃないわ。まぁ、大して強くは無さそうだけど」


「それなら、きっと獣人の類ですね」


「じゃぁ、鹿人間?」


 飛ばされた壁のところで、男が動く。


「あっ、やっぱりあれくらいじゃ死なないのね」


「チッ! 鹿じゃねぇ! あんな臭せぇ負け犬どもと一緒にするんじゃねぇよ……」


「私、犬って言ったっけ?」


「そう言う意味で言ったのではないと思いますけど」


「そうなの? でも凄い! 獣人族の身体能力って人間と比べると桁外れね」


 男は、ゆっくりと立ち上がる。奴は頭部から血を流し、左手で脇腹を抑えながらナイフを持つ右腕をこちらに向けた。


「クソッ! ふざけやがって!」


「やっぱり起き上がったわ。でも、結構効いてる? ちょっとまともに入っちゃったから」


「まさか、この俺の初撃をかわするとわな……」


「あれ? かわしただけじゃ無いんだけど。殴られた事には触れないのね?」


「エリア様、あまり相手を逆撫でしない方が……」


「えっ? そんな風に聞こえた?」


「はい。わざとそうしているように見えますが」


 そんなつもりは無いんだけど……なんちゃって。ちょっと意地悪してるかもね。だって、セシリカの事捕まえに来た様な男なんだから。それに、これは油断でもない。こんな風に言いながらも、相手のことは冷静に観察してるんだからね。


 カッペルはそう言って懐から小瓶を取り出すと、一気に飲み干した。


 ん? あれってもしかして、ポーション? そうか、そうだよ、ここは異世界なんだからあるよそういうの、絶対っ!


「ちょっとあんたっ! それ、ポーションでしょっ?」


「だったら何だ?」


「それって、どこで買えばいいの? 魔道具屋? それとも薬屋? 教えてよ」


 ポーションかぁ〜。すごく異世界っぽい! 回復なら魔法でできちゃうけど、やっぱり、冒険にはポーションいるでしょ! ムフフン。


「テメェ、やっぱ俺のことなめてんな!」


 あれ? なんか怒ってる?


「別にそういうの無いけど」


 そう言うと、カッペルは、一瞬、間を置いてそっと上着の懐に手を入れた。そして、さっきと同じ小瓶を取り出す。


「欲しけりゃやるよ、ほらヨっ!」


 奴は、そう言って小瓶を放り投げたっ!


「くれるの? ヤッタ〜!」


 弧を描いて落ちてくる小瓶に手を伸ばす。


「へへっ」


 顔の近くで、奴の笑い声がした。そして……。


(ガコォォォーーーーンっ!!!)


 次の瞬間、カッペルの頭部が石畳を凹ませて地面にめり込んだっ!


 ふぅ〜。


「あんたこそ、私のことなめてるんじゃないの?」


 奴の顔面に右拳を食い込ませたまま、左手は上から落ちてきた小瓶をキャッチする。


「考えが見え見えなのよ」


 カッペルは、完全に動かない。屈めていた身体を起こして立ち上がると、セシリカが、何も無かったかのように事務所から外へと出てきて、私たちの隣にやって来た。


「エリア様、殺し屋相手に少女がグーパンって……」


 セシリカは、腕を組んで眉を寄せながらそう言った。


「見てたんだ?」


「もちろんですよ。それにしても一撃とは。強化魔法でも使ったんですか?」


「別に。ただ素手で殴っただけよ。でも、流石に素手で戦うのはバトル系みたいで私っぽくないよね」


「なんですか、それ?」


 セシリカは、素の表情になってそう言った。


「え? あー、うん、何でもない。そんな事より見てよほら。やっぱりこのカッペルって男、鹿じゃなかったわ」


 そう言うと、ククリナがしゃがみ込み、カッペルを覗き込むようにして言った。


「これは、山羊ですね」

「面白いかも!」


「続きが気になるぞ!」


「この後どうなるのっ……!」


と思ったら


下の ☆☆☆☆☆ から、作品への応援お願い申し上げます。


面白かったら星5つ、つまらない時は星1つ、正直に感じたお気持ちで、もちろん大丈夫です!


ブックマークもいただけると本当に励みになります。


重ねて、何卒よろしくお願い申し上げます。

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