311-15-6_魔獣部隊
レイナードが、心配した口調で念話をしてくる。
「あ〜、ライラ、可哀想に〜。奴らの言葉を信じてご両親の命を繋ぐために、ずっと我慢してここに居たんだね〜」
「それならお兄様に届いた手紙は、やっぱりライラさんが自分の助けを求めるために書いたんじゃないの?」
「いや〜、それは違うんと思うなぁ。ライラは、何か僕に伝えたい事があるんだよ、きっと」
「あの助けてと言う言葉に、何か別の意味があるというのか、レイナード?」
「はい、父上。私は、ライラが伝えてきたあの言葉は、彼女が自分以外の誰かの事を指して言っているような気がしてならないのです」
「うむ、そうか。その違和感はライラ嬢と交流があるお前にしか分からんものだろうが、そういう感覚は無視せぬ方がよい。それが顕在化するときには取り返しのつかん大きな問題になっていることもあるのでな」
取り返しのつかない大きな問題? 違和感ねぇ……。
男爵の言葉を聞いて、心の中に引っ掛かかりを感じている事を、改めて自覚する。
何だろう、このモヤモヤする感じ? やっぱりライラさんの手紙のことかな? お兄様が言うように、あの助けてという言葉が、彼女本人のことを差したものじゃないとすると、考えられるのは、ジャブロクに奴隷にされた女の子たちの事だよね……。
確かに、その事は気になっている。クロック人もそうだったし、今、若い女の子ばかりが奴隷として狙われているのだ。
う〜ん、何か見落としてるような……。
違和感の正体を掴めずに、また、ジャブロクたちの会話に耳を澄ませた。話を続けるジャブロクは、恨みと愉悦が混在しているような歪んだ表情をしている。
「……しかし、明日、王宮の処分が発表されれば、あの娘も単なる借金の形となり下がる。そうなれば、ライラの身柄はワシがどうとでもできるっ! フッフッフ。バイスよ、ワシはこの日をどれ程夢想していたと思う? 明日は、あの娘を公衆の面前であられもない姿にして晒し物にしてやるのだ。そして、ワシに命乞いをさせてやろうと考えておる……」
バイスが目を見開きながら言った。
「ほう? それは面白そうですな。それでどの様にするのです?」
「フッフッフ。あの娘には、首をはねられる親父に代わってワシに対する罪を償ってもらわねばな。なんなら、磔台に吊るしてしまうか。そして、大衆どもから腕っぷしの強い者を募り、その場でライラをくれてやってもいい。大衆にとっては口も聞けんほど高貴な貴族令嬢が、下男どものデカブツで貫かれヒーヒーと大声を上げて泣き叫ぶのだ、身体を激しく揺らされながらな。そいつはさぞ見ものであろうよ」
バイスが目を細める。
「恐れながら、会頭はあの娘に対して、特別な気持ちをお持ちなのでしょうか?」
「……まぁな。ライラの親父がワシを貶めた時、あの娘は幼子だったにも関わらず、ワシのことを憐れみの目で見おったのだ。潤んだ目をしてな。ワシはその時思ったのだ、この娘をいつかワシの前に跪かせてやるとな」
「会頭、それは……」
バイスが少し遠慮気味にそう呟いた。しかし、ジャブロクには聞こえていないようだ。だから、思わず口に出てしまった。
「ジャブロクって、単にライラさんの事が好きになっちゃったって事じゃないの?」
「だよね」
「けしからん男である!」
ジャブロクは続けた。
「……しかし、それでもあの娘はワシに命乞いなどせぬだろう」
「ならば、どの様に?」
「うむ、教授から良いものをいただいたのだ。新しい隷属の首輪であるが、奴隷どもがより従順になるらしい。それを嵌めれば、ライラはワシの命令で荒くれ男たちに喜んで身体を投げ出すであろう。フッフッフッ。明日のローズ家消滅記念には丁度良い余興だ」
「ホッホッホ! 流石は会頭ですな、お考えがえげつない! カバール商会に仇なせば例え貴族であろうとどうなるか、皆、良く分かるというものですぞ」
「そのとおりだ。今はまだかろうじて貴族の誇りとやらを保っておるようだが、そこまでやればライラもワシに対して従順な娘になるだろう。その後は、ワシが可愛がってやってもいい。まぁ、飽きたところで、上得意先の接待でもさせれるとするか。美しく着飾った元貴族令嬢が床の相手をするとなれば、客もそれはそれは満足するに違いないだろう。ハッハッハッ!」
「それならば、私もあやかりたいと思いますな」
バイスはそう言って、灰皿に葉巻の灰を落とした。
クッ! 奴らの会話を聞いていると、胸が悪くなりそうだ。
「コイツら……」
思わず、言葉にしてしまう。
「どこまで卑劣な奴らなのだ……」
男爵も同じ気持ちのようだ。すると、レイナードも、声を振るわせながら言った。
「ち、父上、やはり、ライラを救出すべきではありませんか! このままでは……」
「う〜む。アトラス派どもは、ローズ家が破産する事を前提に、明日、ローズ男爵の処分を出すよう王宮に迫っておったようだ。しかし、そうはならぬ。レイナードよ、今しばらく様子を見るのだ」
そう言って、男爵が気の逸るレイナードを落ち着かせた。そして、奴らの会話に集中する。
「ところで会頭、教授殿からお預かりした魔獣操作魔石の件ですが……」
あ! あのオレンジ色の魔石の事だ!
さっき、カバール商会に行った時にもエイルが一階の部屋で沢山入った袋を見つけたから、今はアクアセラーに放り込んでいる。それらの魔石からも、クロック人が引き連れていたワニ魔獣から取り出した魔石と同じく、母性エネルギーを放っていたのだ。
バイスとやらが口にした教授って、あの男のことよね。そいつが魔石の提供者って事か。
そう言えば、ジャブロクと教授と呼ばれていた男の会話では、女の子たちの子宮から石を取り出すというような話をしていた。
子宮から取り出す? ん? え? え? え? 今、モヤモヤの正体が分かりそうっ! え〜と、オレンジの魔石は、魔獣を操る魔石で、どうやって魔石に母性エネルギーを転写するのか、それが分からなかったんだけど……。
「わっ!」
な、なんて事だ! 奴らは、女の子の身体を使って魔獣を操る魔石を作ってるのよっ! こ、これは大変っ!
「エリア、どうしたの?」
「男爵様、それに、レイナードお兄様っ! もしかしたら、ライラさんの手紙の意味が分かったかも知れないっ!」
「ホントっ!?」
「本当かっ!?」
「ええ! ライラさんは、やっぱり、奴隷にされた他の女の子たちの事を言っているのよ!」
「どういう事?」
「詳しくは後で説明するけど、奴らが若い女の子ばかりを攫う理由は、今、奴らが言っていた魔獣操作魔石を沢山作るためよ。あの魔石を作るには、若い女の子宮が必要なのっ!」
「なんだとっ!?」
「ライラさんは、その事を知って、彼女が唯一頼れそうなお兄様に知らせて来たんだわっ!」
「父上っ、やはりライラをっ!」
「待って、お兄様! まだ奴らが重要な話をしているわっ!」
バイスは話を続けた。
「……いくらかは、すでに魔獣に埋め込んでありますのでいつでも木偶魔獣を使用可能な状態にしております。残りの魔石は事務所で保管しておりますが、近いうちに新たな魔獣を捕獲して調教を始める予定です。間も無く我らの魔獣部隊が整うでしょう」
「魔獣部隊だとっ!? エリアよ、アトラス共和国も魔獣部隊を整えつつあると言っておったな?」
「ええ、男爵様、アトラス共和国にはそういう動きがあるんじゃないかな。それで、奴ら、今、教授って言う男の話をしたでしょ? 多分、アトラス共和国の関係者だと思うんだけど、その男を通じて技術供与されてるんだと思うのよ。でも、まさか、こんな事まで考えてるなんて……」
「ムムム〜。アトラス共和国は、若い女を使い魔獣を操る魔石を量産しておるのか!? 魔獣の軍隊……。クッ! し、しかし、こ奴らは一介の商社に過ぎんはずだ。一体何のために……?」
ジャブロクの様子を見る。
「そうか。バイスよ、かのお方によればその日はすぐそこまで来ておる。我らはその日に備え、ローズの土地を確実に奪わねばならん。そして、来る時には、アトラス共和国の進軍の呼び水となるよう、我らは、体制への反乱分子を装って王宮を襲撃する。そうすれば自ずと内紛が勃発するだろう。この国の大混乱を内外に知らしめる事で、共和国の軍事介入にも口実ができよう。そうなれば、かのお方のご意思が成就するのもいよいよだ。ローズ領を我が物にする事は絶対なのだ!」
「御意!」
バイスが頭を下げるように頷いてそう言った。すると、男爵が叫ぶように言う!
「ヌヌヌヌっ! な、なんとっ、これが奴らの狙いかっ! どれ程大それたことを企んでおったのだっ! ジャブロクの奴は、我が王国とアトラス共和国との戦争を引き起こそうとしておるっ!!」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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