308-15-3_偵察
そうやって口にした瞬間、何だか自分が裸になっているような気分がして、肩を抱きたくなったけど、そんな仕草をすると、返って意識してるみたいだから止めておく。
見られたのがレイナードお兄様だし気にする必要もないんだけど、とは言え、男の人の視線って、アリサのようにしっとりと潤んだ視線と違って、どうにもねっとりとしていて肌に残る感じがするのよね。それが気持ち悪いってほどでもないんだけど、っていうか、裸を見られちゃうと、相手の視線ってこんなに肌に残るものなのね。なんて言ってるけど、多分、私も、前世で男の時は、女の子をいやらしい目で見てたんだよね。気持ち悪いって思われてたかな。
「なぬっ!」
男爵が声を上げた。
あれ? 男爵様の顔が赤いけど、もしかして怒ってる?
男爵はテーブルに手をつき、肩を張り出すように前屈みになった。
「レ、レイナードっ! 貴様っ! ヌヌヌゥ〜〜〜」
「ち、父上、違うのですっ!」
レイナードは、両腕を振って否定しながら狼狽える。しかし、エイルは、そんな彼の目の前でホバリングしながら言った。
「違うって何?」
「えっ? いや、その……」
「エリア様は素っ裸だったのよ。ちょっと小ちゃめだけど、オッパイも隠してなかったし。あんた、それしっかり見たでしょっ!」
「エイルっ!」
ううう〜〜〜、おっぱいはまだ小さいけど、これでもメリハリはあるんだから〜〜〜。
思わず両手で胸を隠してしまう。
ムゥ〜。そんな風に言うから段々恥ずかしくなってきちゃったよ〜。
しかし、エイルは、いつもの様子とは違ってイタズラな表情をしていない。
「た、確かに、エリアは、何も身に着けてはおりませんでしたが、け、決して、故意ではございませんっ!」
レイナードは、一瞬こちらを見た後、男爵に向かってそう言った。
そんなに、ハッキリ言わなくても〜〜〜。
「ほぉ? レイナード、お前は、やはりエリアの……つ、つまり、見た事は認めるのだなっ!」
事実確認はもういいって!
「ふ、不可抗力ですっ! 父上、私は、決して妹の着替えを覗き見する様な不埒な者ではございませんっ! まさか息子をお疑いですかっ!?」
「なぬっ!?」
あ〜、お兄様、開き直っちゃった? このままじゃ、親子喧嘩になっちゃうかなぁ。どうしよう? エイルが話題にするからこの際お兄様に反省してもらおうと思って男爵様に言ったのに、火を付けたのは私だけど、こんなつまらない事で喧嘩しないで欲しいよ。それに、これ以上、私のおっぱいを見たかどうかの話をするのは、や、止めて欲しいっ! 見られた見られたって思っちゃうと、な、何だか余計に……。
胸に手を当てたまま、肩を縮めて丸くなり二人の様子を見る。
険悪な雰囲気だわ。このままじゃ、本当に二人が親子喧嘩を始めそうね。これ以上は止めないとっ!
「男爵様、レイナードお兄様には謝ってもらったし、もう、いいの。それに、奴隷として攫われた女の子たちがちゃんと自分で生活していけるように、お兄様にしっかりと働いてもらうからこれくらいで赦してあげて」
「うむ。そ、そうか。エリアがそう言うのならば、よしとしておこう。しかし、ワシからも一つレイナードに言いつけておく。エリアはお前の妹であり、イリハの姉なのだ。今のゴタゴタが片付けば、イリハの快気祝いも兼ねて二人の披露目をしようとローラと話しておる。お前は、兄として二人の妹のナイトであらねばならんのだ。その立場に恥じぬようしっかりと身を引き締めよっ!」
「はっ!」
レイナードは、サッと起立して返事をした。ククリナはそれを聞いて、そっと右手を引っ込めた。
レイナードお兄様、ちょっと可哀想だったかな。でも、ククリナの気も治ったようだし、これくらいは仕方ないわね。この件はこれで終わりっ!
「じゃぁエイル、そろそろ始めたいから、シンクロ、お願いできる?」
「分かったわ!」
エイルの返事の声が明るい。どうやら、彼女の気持ちも切り替わった様だ。それにしても、ククリナもそうだけど、眷属たちは、私の事を、男の人からガードしなければという意識が強い。奴隷狩りの事件以来、私を守ってくれようとする眷属たちの気持ちには、殺気のような切迫感まで感じる時がある。
エイルは返事をした後、こちらを見ながら後ろ手に男爵を指差して言った。
「……でも、この男爵さんもシンクロやるの? 魔力は大丈夫?」
ふ〜ん、エイルは男爵様のことを、”さん” 付けで呼ぶのね。レイナードお兄様に対する ”あんた” とは随分と差があるみたいだわ。お兄様も、ククリナやエイルから認めてもらうまでには、ちょっと時間がかかりそうね。
それはそうと、今、エイルが心配しているのは、男爵様の魔力量が平均的な人間並であるためだけれど、というか、男爵様は普通の人間だから仕方ない。でも、エイルのシンクロで五感を共有するときには、魔法術師が魔法を放つ時と同じくらいの魔力が消費されてしまうから、多分、男爵様はシンクロの途中でダウンしちゃう。
まぁ、その時はその時よ!
「大丈夫でしょ」
……多分。
「ハハハ。何やらスマンな、エリア。レイナードなら魔力は十分だろうが、ワシは、からっきし魔法の資質が無いのでな……」
男爵は、苦笑いしてそう言った。すると、エイルが男爵に声を掛ける。
「まぁ、途中で気持ち悪くなったら早めに言ってよね。紙袋用意するから」
観光バスじゃないんだからっ!
エイルが、本当に紙袋を用意するかどうか分からないけれど、男爵様がああやってレイナードお兄様に注意してくれたから、エイルも、男爵様に優しくするのよね。これでエイルの溜飲も下がったみたい。やっぱり、私の感情はすぐに眷属たちに伝わっちゃうのね。眷属契約って、そういう繋がりまで強くするんだわ。
「エイル、早く! 始めるわよ」
「オッケー!」
そうして、エイルのシンクロが始まった。
ーーーー。
エイルが身体を分離させ、その分身体が男爵とレイナードの頭の上にも乗った。そして、別の一体がジャブロクの屋敷のロビーに飛ぶ。
「男爵様、お兄様、頭の上のエイルに意識を集中してみて!」
「エイル様に意識を集中するのか。やったことはないが、とにかく試してみよう」
そして、自分もエイルに集中した。すると、男爵が驚いたように念話で話した。
「こ、これが、シンクロという力なのか? エ、エリア。まるで、その場にいるようであるな」
男爵は、念話が初めての割には問題なく出来ている。シンクロの最中はエイルの権能で、誰でも念話が可能となるようだ。
「男爵様、念話も上手にできるのね? これなら問題なくシンクロを使いこなせるはずよ」
「そうか。それにしても不思議な感覚であるな。身体から魂だけ抜けてしまったような気分だぞ」
結構、楽しんでるわね、男爵様。
「レイナードお兄様はどう? 聞こえてる?」
「ああ、問題ないよ。それにしても便利な能力だね。視覚どころか、聴覚や嗅覚まで自分のものみたいだよ」
レイナードは、そう言って感心した。
「あと、エイルが何か触れば触覚だって現実と同じ様に感じるわ」
「へぇ〜、じゃぁ、会話もできたりするのかい?」
「ええ。ただし、エイルにそうお願いして分身体にしゃべってもらうの。だから、相手はあくまでも妖精と話しているとしか思わないわ。誰々がこう言ってるよ、みたいな感じの伝わり方ね」
「そうなんだ! それなら遠く離れた人と連絡を取るのも簡単に出来そうだね」
「そうよ。でも、離れた人と連絡を取るだけなら他にも方法はあるけどね」
「魔法というものは、やはり便利であるな。しかし、離れた者と連絡を取ると言う方法については、新しい魔石の開発が進んでおるやに聞いたことがある」
「そんなのがあるんだ?」
「父上、それは、是非手に入れたいものですね」
「そうだな。まだ研究の段階らしいが、開発を進めておるのはアトラス共和国であろうから、入手するのには手間がかかりそうだ」
「早くできればいいのにね」
「うむ」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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