268-12-15_ギルドマスター
ギルマスは、ボズウィック男爵の事を知っているようにそう言った。すると、フロネは、目を見開いてさっきまでより更に親しさを示す眼差しになった。
ギルマスは話を続ける。
「しかし、旦那は確か奴隷は抱えねぇって話だが、なるほどそういう事か。それならお前さんの話も分かるぜ。それで、お前さんが元奴隷だった事をこの俺がどう思うかって?」
「うん」
「肝が据わっているように見えるが、意外と他人の目を気にするんだな。ハッハッハッ!」
彼は、一瞬、優しそうな目になって笑った。
「まぁね。色々とこの国でやりたいこともあるんだよ。だから、他人の意見は大事にしないとね」
「陳ねたガキだぜ、まったく……」
大きなお世話だよ!
「……でも、そんなもん、どうも思わねぇに決まってるだろ、うちは冒険者ギルドなんだからな……」
彼は、腕を頭の後ろで組んで、当たり前だと言わんばかりにそう言った。そして、話を続ける。
「……想像は着くだろうが、冒険者はどいつもこいつも、多少、何かしらスネにキズがある奴らばかりだ。中には、どこかの国のお尋ね者だっているかもしれねぇ。お前さんが奴隷であろうがなかろうが、俺にとっちゃそんな事はどうでもいいことだぜ。但し、お前さんが冒険者になろうと言うのなら、もうちっと歳をとらねぇとな。まぁ、お貴族様のお嬢様が冒険者になんてなる訳ねぇか。ワッハッハッハッ!」
なるほど! 冒険者になればトラウマの首輪をしていても気にしないでいられるかもしれない。でも、この身体のままでは難しそうだ。
「ハハハ。そうだね。それなら、冒険者になるのはもう少し大人になってからにするよ」
「へへッ。面白ぇお嬢様だ。分かってんならまぁいい……」
ギルマスはそう言うと、腕を組み直した。
「……ところで、お前さん、聞くところによると、中級治療術師をご所望した若い男の依頼を受けたんだってな」
そう言うと、ギルマスはガラッとシビアな雰囲気に変わった。
ギクッ! さっきの話だ。もしかして勝手に依頼を受けるといけなかったのかな?
「え~と、何の話……」
そう言ってとぼけようとした時、ギルマスが、「はぁ〜」とため息を吐くように声を出して言葉を続けた。
「……いや、依頼とは言えねぇな。うちが断ったんだから、誰かがそいつの頼み事を聞くも聞かねぇも勝手だわな……」
な、なんだ、怒られるのかと思っちゃった。別に、ダメだった訳じゃ無かったよ。
「しかし、だ……」
「え?」
「お前さんのお陰で、うちの面子が丸つぶれって訳よ。分かる? お嬢様……」
ギルマスの目は、人を射抜くような鋭い目つきになっていた。
うっ! 何だよそれ。いきなり悪役のような顔になってるし。まぁ、僕だって、元経営者の端くれだからギルマスの言いたいことは分かる気がする。冒険者のギルドマスターなんてやってると、時には虚勢を張ったり凄んでみたり、兎に角面倒臭いことが多いのだろう。でも、こっちから言わせると、あれは、対応できなかったギルドが悪いというだけだ。それなのに面子だなんてつまらないことを。そんなのただの言いがかりだ。
そっちがその気なら、僕だって。
「なんだ。言いたい事はそれだけ……」
なの? と言おうとした時、ギルマスが、「ククッ」っと笑った。
「ん?」
「なんて言うと思ったか? ワッハッハッハッハー!」
え? じょ、冗談言ったの!?
「ムムムッ!」
なんだか馬鹿にされた。
「超ぉ〜、ムカつくんだけどぉ〜」
「ハッハッハッハ。悪ぃ悪ぃ。さっきのお返しだよっ! お前さんたちのお陰で、このザマなんだからな」
ギルマスはそう言って、真っ赤な手形の残る左頬をこちらに向けた。フロネに思いっ切りびんたされた跡だ。
「そんなの、ギルマスがフロネさんのおっぱい見たからでしょっ! セクハラだよね、ホントっ!」
そう言うと、フロネが胸を手で隠すようにして顔を伏せた。そして、ギルマスは席を立ち、そのまま起立すると、フロネに向かって九十度のお辞儀をした。
「スマンッ! フロネ!」
「何だよギルマスっ! フロネさんに謝るタイミングが欲しかっただけだよね、まったく!」
「これでも上司だからな。素直に謝るのも大変なんだよ。ハッハッハッ!」
ギルマスはそう言って、また笑った。フロネはほっぺたを膨らませながら、相変わらず横を向いている。
絶対、反省してないよ、このギルマスはっ!
「それにしても、ホント、面白れぇなお前さん。改めて名乗るほどでもねぇけど、俺は冒険者ギルドのマスター、ギルマスのファルコンって言うんだ。お前さんは確か……」
「僕の名前は、エリアだよ」
ギルマスは、再び椅子に座ると、話を続けた。
「エリアか、ヨロシクな。まぁ、詫びのつもりだが、俺の事は呼びやすいように呼んでくれていい。それで、その男の知り合いってぇのには、上手いこと治療が出来たのか?」
う~ん、ギルマスは親し気に話すけど、この人は勘が鋭そうでやっぱり油断ならないね。また何かを探られてるのかもしれないし慎重に会話しないと。
「まぁ、何んとか上手くいったんじゃない、多分だけど」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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