257-12-4_天使様?
王宮の建物は機能美に溢れ、とても洗練されている。
「ホント、素晴らしいね! でも、ここからじゃ、良く見えないな。もう少し近づいてみようか?」
そう言うと、エイルが首元に隠れるようにして言った。
「止めときなよ、エリア様。門の所には衛兵だっているわよ」
「大丈夫だって。いざとなったら逃げちゃえばいいんだから」
「もう〜っ!」
彼女は、そう言いながらも姿を消さずに付いてくる。そして、フードを目深に被り直し大手門に向かって歩き始めた。
それにしても、大通り沿いは洗練された建物が多く、左も右も太い鉄柵に囲まれた豪華なお屋敷が並んでいる。
「エイル見てよ、ほら、あのお屋敷も大きいね。男爵様のお屋敷よりもずっと大きいよ。もしかして、ピュリスさんの公爵家だったりしてね」
「ちょっと、呑気に喋ってないで前を向いてよ、エリア様。もう、門番がこっちに気付いてるわよ」
「ホントだね。でも、観光客みたいにキョロキョロしてれば声も掛けられないんじゃない?」
「余計に怪しいって!」
「エイルは心配性だね」
段々と門が近づいてくる。すると、正門の美しさがよりハッキリとしてきた。
「へぇ〜、銀色なんだね。鉄で出てきてんのかな? 何だか輝いてるみたいじゃない?」
通りの突き当たりまで歩くと、今度は、左右に大きな道が通されている。その幅広い道の向かいが王宮だ。しかし、ここまで近寄ると、王宮の敷地が魔法の障壁で守られていることが分かった。
「流石は王宮だね。これだけ魔力を常時流し続けているって事は、きっと、大量の魔石を使ってるんだろうね。エイルなら敷地の中に入れそう?」
エイルは、さっきから僕のフードの中に入り込んでいる。
「えーっ! 私に入れって言うの?」
「聞いただけだよ」
「もう、びっくりさせないでよ! まぁ、入れなくはないけど、出られるかどうか心配ね」
「何か仕掛けでもありそう?」
「分かんないけど、一度中に入ると出られない洞窟とかあるでしょ?」
「何それ、ダンジョンじゃないんだから。なんて言ってると、後ろを取られちゃったよ」
まだ気づかないふりをしているけれど、手前の交差点から目を付けられていたのは分かっていた。
「ほらっ! 言った通りじゃないの、どうすんの?」
「大人しくしてれば何もしないって」
「犬じゃないのよっ!」
そして、後ろから声をかけられた。
「おいっ! そこの子どもっ! 何をごちゃごちゃ言っている? 動くなっ! じっとしていろ怪しい奴めっ!」
後ろには三人いる。そして、前からもこちらに向かって二人の大柄な衛兵がやって来ていた。
流石、衛兵だよね、鎧も豪華だ。
彼らの出立は、白に塗装されたプレートアーマーで、胸のところや各パーツの縁に黄色い線で紋様が施されていた。
優雅な装備だね。
そして、彼らは長槍を両手で軽々しく持ち、小さい歩幅の駆け足でこちらに迫ってきていた。さらに、後ろの彼らは既に僕の背中に槍を向けていて、怪しい動きをすれば直ぐにでも一刺しにするぞと言わんばかりの殺気を放っている。
転移すれば逃げる事は簡単だけど、でも、ここで消えたりして捜索でもされると面倒だし、かと言って、攻撃魔法を使えば騒ぎが大きくなっちゃうよね。こう言う時は、両手を上げた方が良いのかな?
いつの間にかエイルは消えていて、僕一人だ。そして、後ろの衛兵が油断のない声で言う。
「余計な動きはするなよ、お前の背中からいつでも槍で突き刺せるのだからなっ!」
前からやって来た二人の衛兵も、槍を構えて立ち止まった。
「よし、そのまま、ゆっくりとこちらを向け! 前の二人っ! 子どもだからと言って油断するなよ、ガキの魔法術師もいるんだからなっ! 王宮の前をうろついていた奴だ、何をするか分からんぞっ!」
「はっ!」
「はっ!」
子ども相手に本気モードだよね、少女なんだし、そんなに怪しくはないと思うんだけど……。
仕方ないから、言われた通りにゆっくりと振り返る。すると、低く身を屈めた三人の衛兵たちは、それぞれの槍の矛先を喉元へグイッ、っと突きつけたっ! 銀色に光る鋭い切先は、か細い首など一瞬で貫きそうだ。
「よーし、ゆっくりとフードを取れ。ゆっくりだ」
真ん中の衛兵が、そう言って指示をした。
いいのかなぁ〜、これ外したら大変なことになっちゃうよ〜、と言うかしちゃうよ〜。
フードの縁を持ってゆっくりと上にあげた。視界が明るくなり、首元も露わになって少し寒い。ついでに、ニッコリと笑顔もサービスしておいた。しかし、その衛兵は、折角の笑顔に反応もせずに、僕の首に嵌められているものに注目しているようだ。
「き、貴様っ! その首輪っ! なぜ奴隷がこんなところにいる……」
ところが、その衛兵は、そこで言葉を詰まらせると少したじろいだ。
「ヌヌっ!?」
そして、男は、一旦、槍を引き面頬を外してこちらを凝視する。
「い、いや、ちょ、ちょっと待て! お、俺の目がどうかしているのか?」
さらにその男は、段々と目を見開いていき、そのままバタバタと音が鳴りそうな程瞬きを繰り返した。
「え、え、え〜と……」
衛兵は、言葉を探すようにそう言って、改めてこちらの顔を覗き込み、次に視線を上下に動かして全身を舐めるように見る。兜の中の男の顔は、明らかに動揺している。
「なっ! なっ! なっ! なっ!」
そして、男は、狼狽え始めると一歩二歩と後退って言った。
「い、いや、お、俺は、このお方に、何を……」
その衛兵はそう言って動きを止めると、持っていた槍を地面に伏せ、片膝を立てて跪いた。
「あ、あなた様は、一体? ……な、何てお美しい……うううっ!」
衛兵は、両手を胸に当てこちらを見上げると、突然、うるうると涙を浮かべた。
「て、天使様……あ、あなたは、天使様でございますね? おぉっ! こ、神々し過ぎるっ! うぉーっ! ウググググゥ〜!」
衛兵は、そう言って変な雄叫びを上げたりむせぶような声を出したりしながら、他の衛兵に命令した!
「お、おいっ! な、何をしているっ? さ、下がれっ! 天使様だぞっ!」
「はっ!」
「はっ!」
「はっ!」
「はっ!」
「フフフ」
「おぉーーーーっ! 天使様がお笑いになられたっ!」
「迷える子羊たちに、幸福の祝福を授けましょう……」
そう言って、右手を唇に当て投げキッスの様にして眠気を誘うヒーリング魔法を放つ。
「……エンジェル……ヒーリングっ、チュッ!」
「あ、ありがたき幸せ〜〜〜!」
「はぁ〜〜〜〜ん!」
「はぁ〜〜〜〜ん!」
「はぁ〜〜〜〜ん!」
「はぁ〜〜〜〜ん!」
そうして、衛兵たちは、ガシャンと鎧の音をたてながら、その場に崩れ込んで眠ってしまった。
「ちょっと、エリア様、悪ノリし過ぎだって」
エイルは、再び姿を現わすと腕組みしてそう言った。
「フフン。この人たちいい夢見てるんじゃないの?」
「確かにそうね。きっと、この衛兵たちからすると、エリア様が素っ裸の美女に見えたんじゃない?」
「ニンフだけに? でも、そこまではサービスしたつもりなんてないよ」
それにしても、インストールしたセイシェル王女の権能スキル "魅了" の効果は絶大だっ!
「ところで、これからどうするの?」
エイルが尋ねる。
「どうしようか? この場にいると流石にまずいよね。でも、王宮をもうちょっと見たいんだけどな〜」
すると。エイルが目の前でホバリングし、王宮の方を指差して言った。
「それなら。あそこに行けば、良く見えるんじゃない。ほらっ」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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