251-11-30_赦しと愛
「ふぅ~、なるほど」
この子も、辛い経験をしてきたんだね。親に売られるなんて、誰だって心が壊れちゃうよ。
それなのに、彼女たちの目には、ハッキリと生命力が宿っている。この子たちは、辛い記憶と向き合うことが出来て、さらに、ザリッパへの怒りの感情さえも取り戻しているようだ。
魔法を使った時、女神ガイアからのインスピレーション通りにイメージしただけなんだけど、たった一回のヒーリングでこんなにも回復するんだから驚いちゃった。
お腹に手を当てて目を閉じる。
ここに魂を受け入れたんだもんね。女神の子宮って凄いよね。もしかして、ヒーリング魔法の最強奥義じゃないの? なんてね。でも、あの魔法は、セイシェル王女の言っていた通り本当に魂が生まれ変わる魔法かも。まぁ、それはそうと、魔法の最中、女神の声が彼女たちに直接届いていたようだけれど、僕のヒーリング魔法を受けた人たちは、あんな風に女神を感じていたんだね。みんなが僕を女神だって言ってくれる意味が、ようやく分かった気がするよ。
そして、気になっているのが、彼女の記憶の中で女神が彼女たちを守護すると言っていた事だ。この子たちは、昨日までとはまるで違っていてとても生命力が漲っている。女神の言葉通りだとすると、何かしら女神の力を受け取っているのかもしれない。
そうやって考え込んでいると、目の前の彼女が不安そうに声を掛けてきた。
「あ、あの~」
「あ、ゴメンゴメン。ちょっと考え事してたよ。え~と、それで、君は何て名前? できれば年齢も聞かせてくれないかな?」
「え? あ、はい。私は、ソフィと言います。歳は十五歳です」
ハキハキとした話し方をする彼女、ソフィは、黒目勝ちの活発な印象を持つ少女だ。そして、小さな顎はまだ幼さを残し、赤みがかった可愛い唇がとってもキュートだ。
「ソフィっていうんだね。あのね、ソフィ、君たちは、女神様から何らかの守護を受けている様なんだけど、これからそれを調べさせてもらってもいいかな?」
「いいですけど、どうやって調べるんですか?」
ソフィは、身を乗り出したまま興味深そうに尋ねた。
「見ててね。こうするのさ」
そう言ってアクアセラーから魔導の写本を取り出した。ソフィたちは、みんな一斉に驚きの声を上げる。そして、彼女に、手を本の上に置くように言うとソフィは躊躇わず右手を置いた。すると、魔導の写本が、一瞬、青く光る。
「うわぁ、綺麗!」
ソフィは、無邪気に感動した。そして、彼女と一緒に座っている他の少女たちもとても興味深そうにそれを見た。
「どれどれ」
魔導の写本の表紙をめくり、加護のページを確認する。女神の守護があるのならこのページに何か書いてあるはずだ。しかし……。
「う〜ん、加護のページには何も書いてないか」
セイシェル王女も身体をこちらに寄せてきて、魔道の写本を僕と一緒に覗き込む。
てっきり、何かの加護が付与されたと思ってたんだけど。
そして、一枚ページを開く。次は魔法のページだ。
「ここにも、何も書いてございませんね」
王女は顎をつまみながらそう言った。
「ホントだね。じゃぁ、次をめくるよ」
さらにページをめくる。次はスキルが記載されるページだ。すると、流石にスキルのページには幾つかの記載があった。
「生活スキルか……。料理、掃除洗濯、子守り……だね」
そのページにはそれだけが記載されてあり、職業スキルの欄も含め、他には何も書かれていない。
「おかしいな……」
まぁ、この年頃の少女にすれば別におかしくはないけれど、彼女たちから伝わってくるポジティブな生命力は、明らかに並のものではない。
あの魔法の効果が続いてるだけなのかな?
そして、何気なくもう一ページめくった。そうすると……。
「あった! これだ!」
そこには、二つの言葉が記載されていた。
"スキル自己への赦し" そして、"スキル自己への愛"
「珍しいスキルだ。というか、こんなのもスキルになるんだね」
「本当ですわ」
セイシェル王女も不思議そうにそう言った。
"あなたを赦し、あなたを愛しなさい"
ソフィの記憶を覗いた時、女神が言った言葉だ。この言葉は、彼女たちのように生きることを諦めてしまうほどのトラウマを抱えた者にとっては、命を支える言葉なのかもしれない。女神は、その言葉をスキルとして彼女たちに与えたのだ。
わざわざスキルにしてでも、彼女たちの心に刻む必要があった言葉という訳か……。
「あ〜、どうしよう、涙が出そうになっちゃうよ!」
「女神様の偉大なるお慈悲を感じずにはいられません……」
セイシェル王女も感動しているようだ。彼女は、ハンカチを目頭に当てている。
「……それに、エリア様、自身への愛が確かな人間は、他者に対しても深い愛情を注ぐ事が出来ると申します……」
「ああ、それ知ってる! 聞いたことあるよ」
父さんの葬式の時の坊さんから聞いたんだったかな? 忘れちゃった。まぁ、いいか。
王女は話を続けた。
「……そう言う者こそ妖精や精霊たちからも愛されますので、ソフィさんたちは、きっと、そうした存在と魔法契約を結ぶ事が出来そうですわ」
「そうなんだ! それって、女神の絆加護みたいだよね」
ん? あっ! もしかして、そういう事なの? 女神の絆加護を持っていれば、妖精や精霊たちと契約出来るっていう権能があるけど、それもこのスキルが関係しているって事かな? 分かんないけど。ちょっと、後で調べてみるか。
「やはり、素晴らしいですわ、エリア様の魔法!」
セイシェル王女はそう言って絶賛した。
「いや〜、僕じゃないんだけどね〜。女神様って、どこまで見通してるんだろうね〜。ホント凄いよね〜」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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