228-11-7_ヴェネディクト・ヒール・ライトニング!
夜空一面に広がる雷雲は、断続的にオレンジ色の発光を続け、それに少し遅れて轟音が鳴り響く。分厚い黒雲は、抱えきれない電気の塊を早く手放したいとばかりに、時折、雲の中で稲妻を光らせる。空も大地も、まるで、今か今かと号令を待っているかのようだ。
「雲が光るたびに、大地が照らされてます。な、なんて、壮観な景色でしょう……」
アリサが感動している。
「本当ね。でも、まだまだ、こんなもんじゃないわよ」
火口内は十分なエネルギーが満たされ、そのエネルギーが外輪山から溢れるくらいになって来た。
いい頃合いね。
「さぁ! みんな行くわよっ!」
「はいっ!」
「いいわっ!」
「女神っ!」
「……!」
大きく息を吸った! 両手を上空に上げ、そして、力一杯、大空に向かって叫ぶっ!
「ヴェネディクト・ヒィーーーールっ! ライトニングゥーーーーっ!!!」
歯止めをかけていた扉の留め金を外すように、エネルギー循環のストッパーを外す。すると、火口内のエネルギーが渦を巻き、それらが外輪山に沿って螺旋状に上昇を始めた。
「じゃぁ、流すわよっ!」
ウィンデイーネからの合図が入るっ!
「お願いっ!」
ウィンデイーネの魔力で、自分の身体が青く光り始めた! そして、足元から、イグニス山のエネルギーが身体の中へ、一気に流れ込むっ!
「うううーーーーっ! や、ヤバいこれっ! お、お腹の下が、あ、熱いっ! な、何? このエネルギー! は、弾けちゃうっ! こ、こんなの、ダメっ!」
太腿の内側に力が入る!
「辛抱しなさいっ!」
ウィンディーネに怒られたっ!
「だ、だって、も、もう、我慢ができないって!」
振動が、ま、マジ、ヤバいっ!
「止めちゃダメよ! 全部流してっ!」
「今ここで!?」
そ、そんなの恥ずかしくて無理っ! で、でも……。
「が。我慢しなくて、い、いいの?」
「我慢しなさいっ! エネルギーを全部流すって言ってんのっ!」
流すって、エ、エネルギーの方か。ううっ〜、それにしても、この感覚……。
多少、何かが起こっても仕方ない。だって、緊急事態なんだし、魔法は止められないからその他のことに気を取られていてはダメっ!
と、とは言え、気を抜いたら、ショーツを汚しちゃいそう……ううっ〜。こ、これって、絶対、アスモさんのせいだっ! 私の大事なところ、ヤバいっ!
下半身から込み上げてくる強烈な波を何とか逸らしながら、魔法に集中する。そして、身体にイグニス山のエネルギーをくぐらせ、ヴェネディクト・ヒールの性質を付与した。
よ、よしっ、今だっ!
「ラーシャっ! 行くわよっ!」
「女神、来て!」
ラーシャが念話で応えた。彼女のいる方向に腕を伸ばし、掌から、一気に放出っ! エネルギーには緑の色が着き、真っ直ぐにラーシャに向かった! すると、ラーシャが金色の光に包まれるっ! そして、ラーシャから、その光がビームのように収束し一直線に空へと放たれたっ!
「ああっ!」
アリサから言葉が漏れる。光のビームが、辺りを明るく染めながら黒雲の一点を穿つと、次の瞬間、上空で悪魔が悲鳴を上げたかと思うような高音が鳴り響く! すると、大空に広がる黒雲は、ほんの刹那沈黙し、大気が静寂した。
そして……。
「来るよっ!」
突然、斜め上空の黒雲が薄紫に眩しく輝いたと同時に、何十筋もの白光の稲光が、一斉に、大地に突き刺さるっ!!! そして、乾いた音の衝撃波が大気を割るように押し寄せ、身体の前面を逆撫でながら後方へと通り抜けたっ!!!
ううっ、何て威力っ!
耳をつんざく轟音が、大地を震わせるっ!!!
さらに、稲妻は、大空を伝搬しながら遥か遠くローズ男爵領の端に至るまで、まるで空から垂れた経糸で絨毯が織りなされていくように、大地にあまねく降り注いでいった!!!
「しまった! アリサ、耳を塞いでっ!」
彼女が、自分の事を支えてくれていることを思い出し、思わず叫ぶ! そして、アリサを見下ろした。すると、二体に分身したエイルが、アリサの耳を両方から塞いでくれていた。
「よ、良かった〜」
「遅過ぎ、エリア様。私だけよ。アリサっちの心配してるのは」
「ありがとう、エイル。助かったわ」
しかし、アリサは放心状態だ。
「ア、アリサ、もういいわよ」
稲光は止み、雷の轟音は、遥か遠くへと遠ざかって行った。
「ふぇ?」
アリサは、頭のてっぺんから声を出すと、「す、すいませんっ!」と言いながらゆっくりと私を座らせた。そして、上空を見上げる。すると、イグニス山の山頂では風が止み、空から、はらはらと綿帽子のような粒が舞い落ちてきた。
雪だ……。
荒々しい黒雲は鎮まり、それまでの緊張が嘘のように緩んだ大気は、柔らかい雪の結晶を静かに大地へと届ける。きっと、この雪は、麓の大地では、冷たい雨に変わっている。
癒しと豊穣の雨……。
「上手くいったようですね」
ククリナが戻ってきた。
「ククリナ、ご苦労様」
ククリナは、ニッコリと笑う。
「いかがでしたか、イグニス山のお味は……」
あ! そう言えば、雷の凄さに忘れていたけれど、ククリナは、分かって言ってるよね。私が大変な状態だったこと。
「もうっ!」
ククリナは、ニヤリと笑みを浮かべた。普通にしていると、妹みたいにあどけない顔をしていて可愛いんだけど、やっぱりククリナって相当エッチだわ。
そして、ウィンデイーネも現れた。
「ウィンデイーネもありがとうね。あなたが手伝ってくれなかったら、こんなに上手くは行かなかったと思う」
「これは、貸しにしといてあげるわ」
げっ。
「ところで、あんた、トイレくらい、前もって行っておきなさいよ」
「トイレに行きたかったんじゃ無いわよっ!」
ホントにもうっ! あれは、そんなんじゃ無いって! ウィンディーネはお子ちゃまだから、分かんないんだわっ! もう少しで危なかったんだからねっ!
さらに、空からラーシャもゆっくり降りて来た。
「女神、上手く、出来た」
「そうよ。ラーシャのおかげね。偉いわラーシャ」
「ラーシャのおかげ? 偉い?」
褒めたら疑問形になるって、そこは変わってないのね。
一応、照れている様子のラーシャを膝に抱いた。すると、突然、アリサがしゃがみ込み、手で顔を覆うと、泣き出してしまった。
「ううう~~~~っ!」
「ちょっと、アリサっち、どうしたの?」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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