200-10-3_大好きよっ!
「アリサです。エリア様、そろそろ、ご出発のお時間でございます」
アリサが来ちゃった! どうしよう? こんな格好してる。
「そ、そうね。すぐに用意するわ」
「失礼いたします」
そう言って、アリサは、扉を開けた。
「えっ?」
別にアリサが悪いわけではない。彼女はいつもの様に、私の支度を整えに来てくれただけだ。彼女が扉を開けるのもいつもと同じ。
でも、今は……。
下着とワンピースは、ベッドに放り投げたから、咄嗟に手が届かない。だから、何も、身につけてなくて、そのまま、立ち尽くしてしまった。それに、少し、ナイーブになっている。
アリサは、扉を閉めると、深くお辞儀をした。そして、ニッコリと微笑むと、いつもの調子で言った。
「私に、お任せを」
ど、どう言う意味?
身体の力が抜けそうになる。アリサの眼差しを追った。彼女も、私を見ている。
優しい目……。
彼女は、ほんの少しだけ私より背が高い。だから、わずかに、視線が上になり、自然と顎が上がる。
き、綺麗な唇……。
アリサは、目の前で姿勢を正し、お腹の前で手を重ねると、軽く会釈をしてから、私の肩に両手を添えた。
「ア、アリサ……」
何だか、うっとりしてきそう……。
しかし、アリサは、私の身体をくるりと反対に向けると、私を鏡台の椅子に座らせ、髪を解き始めた。
ま、まぁ、そ、そうよね。ハハハ。私、な、何、想像しちゃってたんだろう? 自分が、嫌になっちゃう。
少し、拍子抜けした様になって、心だけ置いてけぼりの様な気分になってしまった。
両手で胸を隠しながら、鏡越しにアリサの様子を窺う。アリサは、とても嬉しそうに私の髪を解いてくれている。鼻歌が聞こえてきそうなほどだ。私が裸なのに、彼女は何も言わない。小っ恥ずかしくていられない。
「ア、アリサ。下着、着けようかな……」
すると、アリサが手を止めた。
「エリア様。エリア様のお美しいお身体をケアする品がございます……」
アリサはそう言って、鏡台の引き出しから四角い小瓶を取り出した。
「……こちらでございます。ローラ奥様もお使いいただいている全身の保湿剤ですが、お試しになられますか?」
アリサは、隣に身を屈め、小瓶の蓋を取ると、目の前に差し出した。
全身保湿剤か。ボディローションね。
人差し指で少しクリームを掬うと、手の甲に塗って試す。肌触りがしっとりとしているけれど、あまりベタつきもないようだ。
いいかも。
手の甲から、腕の方に塗り延ばして、匂いも嗅いでみる。
「あっ! いい香り!」
爽やかなフローラルの香りだ。でも、とても落ち着いた匂いで上品!
もう少し取って、今度は、肩や胸骨のあたりに塗る。すると、とても肌に馴染む感じだ。
「これ、いいものね。何で出来てるの?」
「はい。こちらは植物の種から生成したオイルとハーブで作られている様です」
アリサは、そう言って微笑むと、背中に回り、首筋から肩にかけてクリームを塗り始めた。
植物由来なのね。肌に良さそう。
「とっても、気持ちいいわ」
アリサは、肩を塗り終えると、小瓶の蓋をして、髪を整える作業に戻った。
「エリア様。このクリームは、お休みになられる前がよろしいかと思いますので、本日の湯浴みの時に、また、使わせていただきますね」
そう言って、鏡越しに優しい笑顔を向けてくれた。いつの間にか、胸を露わにしていた事に気が付いて、また、両手で胸を隠す。一糸まとわぬ姿に、銀の首輪が鈍く光を反射する。上品な三連ピアスを付けた全裸の美人令嬢にトラウマの首輪が嵌められている眺めは背徳的すぎる。自分がアリサなら、理性が崩壊してしまうかもしれない。しかし、アリサは、何も言わず作業を続け、綺麗に髪をアップに編み込んでくれた。髪を上げると、細い首とトラウマの首輪が、一層、強調されて儚さと憂いに満ちた雰囲気を醸し出した。
もうダメ。我ながら、キュンキュンしちゃう。
アリサは、私の肩に両手を当てて言った。
「エリア様。エリア様の素肌をケアさせていただく時には、以前、申しました通り、私たちも、衣類を身に付けない様にいたします。本当は、今も、その様にさせていただきたいのですが、この後の、エリア様の大事なお務めに障りますといけませんので……」
アリサが、自分の頬をギュッとつねった。
アリサ?
「……わ、私も、その様なお姿のエリア様を、私のこの身体で、い、労わって差し上げたいのです。け、けれど……が、我慢。今は我慢ですぅ〜」
アリサは、そう言うと、胸に両手を当てて、悲しい表情の変顔をした。
「なんて顔してるの? ホントに。フフフッ」
やっぱり、彼女も、理性が壊れそうなのかもしれない。
何だか、アリサが可愛い!
「アリサっ!」
突然、立ち上がって振り返り、アリサに抱きついたっ!
「大好きよっ!」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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