199-10-2_私だけの自分
「ふぅ~」
何だか、久しぶりに自分の部屋に戻った気がする。それにしても、何となく身体がだるい。
考えてみれば、イニシエーションからずっと大変だったし、きっと、疲れてるんだ。あんなに、一度にエネルギーを使った事もなかったし。
シャルとラーシャの魂を分離させる為に、ラーシャの精霊エネルギーと拮抗する以上の魔力を使ったのだ。あの量の魔力を扱う為に、月下美人の花雫を飲んで、無理矢理に身体を成長させた。
ちょっと、無理しちゃったかもね。
服を着たまま、仰向けでベッドに身体を投げ出した。
「はぁ〜、ホッとする〜」
やっぱり、ベッドは気持ちいい。いつも、アリサが整えてくれているベッドだ。布団は、甘いフローラルの匂いがして、とてもリラックスしてくる。
このまま、眠りたいけど、今日は、まだやらなきゃいけない事があるんだ。もうちょっと頑張らないと。
頭の上には、サリィが置いてくれていたピンクの包み紙がある。
「これね。サリィの作ってくれた下着」
寝そべったまま、包み紙を手に取り、中身を取り出した。
「おぉ〜! いいわね。このスポーツブラ!」
ショーツとお揃いの色で、肌触りも同じだ。
「そうそう、これがないとね」
本当に、この世界の女性用下着は、可愛くないし着け心地も悪い。この辺りで出回っている上半身の肌着は、多少、立体的な縫製をしているけれど、生地に伸縮性がないからフィット感が無い。アリサなんて、あの大きなおっぱいをしっかり支えられないんじゃないかと思う。それで、スポーツブラ以外にも、色々とブラのデザインをサリィに提案してあるのだ。彼女なら、上手く考えて作ってくれそう。あ~、出来るのが楽しみだなぁ〜。
身体を起こしてブラを胸に当ててみた。
いいかも。早速、付けちゃおう。
ベッドから起き上がり、姿見の前に立つ。
「そうだ! アクアディアさんにもらったピアス」
右耳に付けた二連のピアスを指ではじく。
「シンプルだけど、上品。何なら、もう一つ付けちゃおうかな」
そうして、アクアセラーからピアスを取り出し、右耳に取りつける。これで、三連ピアスになった。
「こっちの方が、ゴージャスね」
今は、ウィンディーネもラーシャも外に出てるから透明の色をしているけれど、精霊が宿っていれば、その性質の色に輝くのだ。ウィンディーネの場合は、深い青に、そして、ラーシャの場合は、透明感のある黄色になる。
「フフッ。いいかも」
ピアスを付けた雰囲気を確認すると、お気に入りのワンピースをスッポリと脱いで、上半身、裸になった。
アクセサリーや可愛い下着をこんな風に楽しめるのは、やっぱり、女の子の特権だわ。
そして、ブラを胸に当てた。鏡の中の自分と目が合う。
「……」
何だろう? 不思議な感じ……。
一旦、ブラをベッドに放り投げて、だらりと両腕を下げた。もしかすると、成長した身体をじっくり見るのは、初めてかもしれない。禊の池で自分の裸を見たけれど、あれは精霊の水が再現しただけの私だった。でも、今こうして鏡に写る自分は、私の意識が宿る紛れもない自分である。それなのに……。
何でかな? 鏡の中の自分は、自分じゃないような気がしてくる。水沢和生の記憶が邪魔をしているのだろうか。それとも、やっぱり、この首輪が……。
トラウマの首輪に捉われた自分を見ていると、まるで、テーマパークの演劇に出演している役者を観客席から見ている時みたいに、自分の現実との隔たりがある。
呪いをかけられたどこかのお姫様役? みたいな感じね。早く自由にしてあげたい、なんちゃって。
そんな風に見ていると、段々、自分の身体がとても壊れやすい物で、恐る恐る大切に扱わないといけないような、ちょっと消極的な気分になってしまった。
自分の身体なのに、変なのっ!
サッと、ショーツも脱いだ。
せっかくだから、隅々まで観察してやるんだからっ! 自分の身体なんだし、問題ないでしょ? ねっ、お姫様!
この身体を目に焼き付けて、もっと身体と魂を馴染ませないといけない。
素っ裸のまま、腰に手を当てて、仁王立ちになった。
綺麗な……肌……。女の子の肌って、なんでこんなにきめ細かくて柔らかそうなんだろう。それに、透明感があって……とっても……遠い存在……。
「あぁ、そういう事か」
やっぱり、この身体は、前世の私からすると手の届かないような存在なのだ。多分、美しすぎる身体に、心の方が気おくれしてしまっている。
そう言えば、前世でもそんな事あったかな。
もちろん前世では男の子の視点だったけど、好きな女の子が自分にとっては高嶺の花過ぎて、目の前にいるのにとても眩しくて遠い存在だった。
あの子も、とっても透明感のある女の子だったよね。
私が憧れた女の子。今、自分にとって自分自身がそういう存在になっている。自分でも訳が分からない。だけど、自分のことがとても愛おしい。だから、大切にしないといけないもの。
私だけの自分だ……。
何て思ってるけど、アリサに肌を触られた時は、やっぱり自分の身体は私自身として感じていた。この身体で五感を刺激すれば、身体と心がどんどん一つになっていくのかもしれない。そうしていけば、自分の事を別の人のように感じなくなるはずよ。
後ろを向いて振り返り、背中も見る。
ホント、可愛いお尻。
また、正面を向く。
あ〜ん。自分の事、癒したくなってきちゃった。ううう……。
右手を、おへその下にそっと這わす。
その時、コンコンッ! と、誰かが扉をノックした。
「だ、誰?」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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