191-9-18_雷神の子
もちろん、友達になる事は、天邪鬼に約束したし、全然、いいんだけどね。
「とりあえず、加護を使いなさいよ。どうなるか分からないけど、友達のキスとか何とか言って、ほらっ。今なら、この精霊のエネルギーは、かなり小さくなってるわ。何とかなるわよ」
ウィンディーネが急かすようにそう言った。
「それは無茶よ。天邪鬼を騙すみたいじゃない」
「でも、このまま放っておいたら、復活して、また暴走しちゃうわよ」
「そうなんだけど……」
確かに、ウィンデイーネの言う通りだ。このまま、天邪鬼を野に放つ訳にはいかない。
そうは言っても……。
とりあえず、正直に言って、お願いしてみるしかない。
「ねぇ、天邪鬼。あなたに女神の加護のキスをしてもいいかな? もしかしたら、私の眷属になっちゃうかもしれないけど、まぁ、出来れば、そうなって欲しいと言うか、あなたとの絆を繋いでおきたいって言うか……でも、違うのっ! 別に、無理にっていう訳じゃなくて、その……」
「女神の絆、欲しい」
天邪鬼は、自分の右人差し指を唇に当てた。
「えっ?」
「絆。友達……」
「ホントに?」
「ホント」
「マジ? ヤッターッ! ありがとう、天邪鬼!」
天邪鬼は、唇をツンと出して、キス待ち姿勢になった。
フフッ。何だか可愛い! それなら、気が変わらない内に……。
「目を閉じてね」
チュッ!
天邪鬼に軽い感じでキスをした。そして、女神エネルギーを流し込む。天邪鬼はもともと力が強く、女神エネルギーは必要ない。でも、天邪鬼を放っておくと、また、力を取り戻してしまう。だからこれは、天邪鬼のエネルギーを制御するためのものだ。天邪鬼の純粋なエネルギーが足りていないところに、女神エネルギーを注ぎ入れて、私との親和性を高めるのだ。
もちろん、天邪鬼は、大きく力を取り戻すだろうけど、しばらくは以前の危険極まりない天邪鬼ではなくなるはずよ。これで、天邪鬼の力が制御できれば嬉しいんだけど。
天邪鬼に、十分エネルギーを注入したところで、唇を離した。彼女は、相変わらず無表情だけど、ほんわかほっこりしているような目をしている。ように見える。
天邪鬼の目を見つめる。
透き通った綺麗な赤い瞳だ。
「えっ?」
今、天邪鬼が……笑った!?
いや、表情は変わってないんだけど、目の奥で、確かに笑ったのだ!
そして、その時! 威厳のある響きの念話が聞こえてきたっ!
「汝、女神ガイアの子よ……」
何、この声?
とても、神性が高い声が頭の中に響く。
「……衆生の罪をその身に受けし隷属の女神……エリア・ヴェネティカ・ガイアよ……」
誰これ? 天邪鬼なの?
「あなたは、誰……?」
「我は……雷神。これ、雷神の子……」
雷神の子? 天邪鬼が……?
「これ、汝の眷属にあらず。されど、汝との絆を得る者なり。なれば、汝、雷神の子を求むる魂の元へ、これ、導きたし……」
「えっ?」
あっけに取られて、言葉が出ない。天邪鬼の見た目は全く変わらないのに、念話の雰囲気が、やたら威厳を纏っている。
雷神って言ったよね。それって神様じゃないの?
すると、天邪鬼が、無表情のままでしゃべった。
「私、雷神の子」
雷神の子?
「この精霊は、雷神の分け御霊みたいな存在のようね」
念話でウィンディーネがそう言った。
「分け御霊?」
「そうよ。私と、大きいお母さまみたいなものよ」
ウィンディーネと水の精霊……?
「えと、天邪鬼、じゃなくて、雷神の子。ちょっと、聞きたいことがあるんだけど?」
「……」
雷神の子は、キョトンとしている。
「あ、あのね、さっきの声だけど、雷神って、あなたの……」
「祖・神・様」
雷神の子の視線は、どこか遠くを見ている。
「お、祖神様?」
な、なるほど。
やっぱり、ウィンディーネの言った通りだ。それなら、尋常じゃない魔力量にも納得がいく。それにしても、さっきの雷神が言った事って、どういう意味だろう?
私の眷属ではないけれど、私との絆ができたから、この子を求める魂の元へ、私が連れて行けってことよね? でも、雷神の子を求める魂って、何の事かさっぱり……。それに、絆が出来たって、どういう意味だろう?
「この子には、あんたの絆加護が与えられているわね」
「ウィンディーネには分かるの? え? でも、嘘っ? だって、眷属にはあらずって、雷神が言ってたじゃない?」
「間違いないわ。あんたも秘奥義を身につければ分かるようになるんだから、あの石、早く、入れちゃえば」
うっ!
思い出した。秘奥義を身に着けるための、大人の試練! それにしても、秘奥義があれば、他人の加護とかが分かるようになるんだ? やっぱり、キスをすれば、加護は付与される……。ただ、雷神の子は、眷属になることはないということね。それなら、絆って何だろう? 女神の絆加護には、他にも何か権能があるのかな?
一人で考え事をしていると、雷神の子が無表情な目で私の方を見て言った。
「女神。名前付けて欲しい」
えっ? 突然ね。でも名前か……。
精霊は、名前を貰えれば、この世界への定着が、一層、確かなものになる。
眷属じゃないんだけどいいのかな……?
まぁ、私に名前を付けて欲しいってことなら、素直にそうしてあげてもいいわよね。
「分かったわ。それなら……」
彼女は雷神の子。え~と、雷神……天邪鬼……らいじん、あまのじゃく。そうね……。
目を閉じて名前が閃くのを待った。
あっ、来たっ! これよっ!
「雷神の子。あなたの名は、ラーシャ。どう? 神秘的な感じでいいんじゃない?」
「ラーシャ……私……名前……ラーシャ」
「そう、あなたの名前はラーシャ」
彼女は、嬉しそうだ。と思う。何故なら、身体を揺らしている。
「私、ラーシャ!」
そう言って、雷神の子、ラーシャは両手を胸に合わせた。
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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