190-9-17_シャルと天邪鬼
ふぅ~。 あれ? ここは……?
目が覚めて目を開けると、カリスの優しい眼差しと目が合った。
「あ、カリス?」
「お目覚めですか?」
どうやら、カリスの膝に抱かれているようだ。ゆっくりと上体を起こす。身体には、薄い布が掛けられていた。
あっ、裸だ……。
布を胸元に引き寄せる。
何してたんだっけ? そうだっ!
「シャルはっ? それに、天邪鬼っ?」
「大丈夫でございます。今、ウィンディーネ様があの子たちを見ておいでですから」
カリスは、ニッコリと微笑んだ。
「ウィンディーネが……?」
そうだった。彼女が力になってくれてたんだ。
辺りを見渡す。
ここは、負傷者の空洞ね。
広場の奥の方へと視線が向いた。ウェンネさんの遺体はもう無い。誰かが彼女を移動させたようだ。遺体のあった方向を眺めていると、カリスが言った。
「族長のご遺体は、クータムが片づけました」
片づけた? まさかね……。
どうやって片づけたかは聞かないほうが良さそうだ。それよりも、とりあえず、服を着なきゃ。
アクアセラーからお気に入りのワンピースとショーツを取り出し、身に着けた。身体は、まだ、少し、温かい感覚が残っていて、まったりとした気分だ。でも、今日は、まだやらなきゃいけないことがあって、気持ちには少し焦りがある。
今日中に、ローズ男爵領の小麦を浄化しなければいけないんだ。早くレピ湖のお屋敷に戻らないと。
「カリス、助かったわ。みんなのところへ、行きましょ!」
そう言って、入口広場に戻った。
広場に行くと、ラケルタ人たちが行儀よくまとまって座っていた。そして、その前にはシャルがソマリの横に腰掛けている。天邪鬼も、シャルの隣に座っていた。どうやら、上手く分離できたようだ。
「ウィンディーネ! ありがとう!」
「いいわよ。エリアだけじゃ大変だったでしょうから。それで、エリアはもういいの?」
そう言ってウィンディーネが気遣ってくれる。
結構、優しいとこあるんだ……。
「ええ、大丈夫よ。それにしても、なんとか上手くいったみたいね」
ヴィースとクータムも、ウィンディーネの隣に突っ立っている。
「あなたたちも、ご苦労様。クータムもよく頑張ったわね」
彼らにそう声を掛けると、クータムは、腕組みをしたまま、「ヘヘッ」と笑った。
「ほらっ! 雷の精霊を見てみなさいよ。かなり力を失ってしまったようよ」
ウィンディーネが、腰に手を当ててそう言った。確かに、ウィンディーネの言ったとおり、天邪鬼の魔力はかなり小さくなっている様だ。
それでも、流石は雷の精霊ね。まだ、相当の魔力を秘めているようだわ。
シャルと天邪鬼の前に行き、彼女たちに話しかける。
「シャル。気分はどう?」
シャルは、グレーの髪を取り戻し、瞳の色も黒に戻っている。
「私、元気だよ。あ、あの……。女神様のお姉ちゃん……ごめんなさい」
ちゃんと、ごめんなさいができたわね。よしよし。
「もう、いいわよ。シャルも頑張ったもんね」
シャルは、元気そうだ。それにしても、守護精霊に庇護されているデミヒューマンを別の精霊と融合させる時は、十分注意しなければならないことが分かった。今回のケースでは、シャルの魂よりも守護精霊、白虎の庇護力が勝っていて、それと釣り合うように天邪鬼の力が融合されてしまっていた。当然、シャルに制御が出来るはずもなかったのだ。後から分かったことだけと。
デミヒューマンの場合は、もう少し慎重にしなきゃね。
そうして、彼女の頭を撫でてあげた。すると、シャルは、テヘへと笑った。
シャルは大丈夫そうね。天邪鬼の方はどうかな?
隣にいる天邪鬼に声を掛ける。
「天邪鬼。あなた、気分はどう?」
「女神。怒ってる?」
どうやら、天邪鬼は、私の反応を気にしているようだ。
そんな風に、人の気を遣うようなこともできるのね。
「さっきは本気だったけど。今は怒ってないわ。でも、もう、無茶な事しないでしょ?」
「女神。友達?」
「もちろんよ」
天邪鬼は、無表情ながら、目が何となく微笑んだように見えた。
「女神の言う事、聞く」
「えらいわね、天邪鬼」
天邪鬼も素直になったようだ。これで何とか問題をクリアできた。
一時はどうしようかと思っちゃったけど、みんなのお陰だね。
その時、ウィンディーネが念話で話してきた。
「ねえ! この精霊、あなたの言う事聞くって言ったわよ」
「えっ? そうね、そう言ったわ」
ウィンディーネは、小さい身体で腕を組んだまま、顎で天邪鬼を指した。
「ほらっ!」
「えっ?」
「何してるのよ? ほらっ!」
「何が?」
「あんた、ホント鈍感ね。今なら、この精霊があなたの眷属になるかもしれないって言ってんのよ」
あっ! そういう事か! それは、大チャンス! それなら、今のうちに天邪鬼の気持ちを確かめなきゃ!
「天邪鬼! あなた、私の眷属になる気ある?」
「……?」
天邪鬼は、ぼ〜っとしている。
あれ?
「天邪鬼?」
「……女神と友達になる」
あ〜、まただ……。
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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