187-9-14_掃除屋の眷属
ワームは、クータムを、丸呑みにしてしまった……。
「嘘っ!?」
「ギャァァァァーーーーッ!!!」
「ギャァァァァーーーーッ!!!」
「ギャァァァァーーーーッ!!!」
「ギャァァァァーーーーッ!!!」
「ギャァァァァーーーーッ!!!」
辺りに、ラケルタ人が発する断末魔のような悲鳴が飛んだっ!
「あんたは、もっとちゃんとしてなさいよ!」
しかし、念話が入ると、ウィンディーネは落ち着いてそう言った。
「で、でも……」
ワーム精霊を見上げる。すると、精霊はズルズルと地面の中に戻って行った。
どういうことっ!? どうなったんだよっ!?
ところが、次の瞬間、ワームが入って行った穴から青白い光が放たれたっ!
「これはっ!?」
進化の光っ!
その光の輝きは洞窟の天井を明るく照らすと、ゆっくりと消えて行った。そして……。
「穴の中に、とんでもない気を纏った存在がいるぞっ!」
僕の念話に、ヴィースとカリスがニンマリと笑っている。ウィンデーネは感心するように言った。
「これが融合なのね。参考にしなきゃ」
すると、穴の中から誰かが笑う。
「ヘッヘッヘッヘッ!」
「クータム!」
彼の笑い声がすると、地震のような振動が起こり地面にゆっくりとひびが入った。そして、その地面が少しづつ盛り上がるっ!
「なっ!」
地面の盛り上がりは範囲を広げ、直径十メートほどにもおよび、族長の椅子や広場の一部を巻き込んでどんどん高くなっていく。そうして、大きな音を立てながら盛り上がった岩石が崩れると、地割れの真ん中から、とうとう、それが姿を現したっ!
「お、大きいっ!」
その生き物は、洞窟の天井に頭が付いてしまう程の大きさだ。皮膚の色は真っ黒く滑っとしていてテカリがあり、頭部は、牛など何頭かを一気に丸呑みしそうな大口ばかりが目を引いた。さらに、身体に比べ小さな二本の腕とずっしりと身体を支える二本の脚、そして太く長い尻尾がある怪物、それはっ!
「お、オオサンショウウオっ!?」
正に、それだっ!
洞窟の壁際まで退避しているラケルタ人たちは、もう、それ以上後ろに下がれずに、心なしか、入口の方に集まっている。
「ク、クータムだよね?」
「ヘヘヘッ。あぁ。俺様だぜ!」
しかし大きい。
「ど、どう?」
クータムは、その大きな頭をのっそりと動かし、こちらを覗き込んだ。
「ヘヘヘッ。凄ェゼ」
そして、クータムは、足を一歩前に動かした。すると、何人かのラケルタ人が逃げるようにして入口から外に出ると、また振り返って様子を見る。クータムは、その動きに反応し、サッと素早く頭を入口に向けた。
「何だオメェらか。食ったりしねぇってヨ。でもヨ、逃げたりすると、間違って食っちまいそうだぜ。ヘヘヘッ」
「今それを言うと冗談に聞こえないって。もう少し、小さくなれないの? みんな怖がっちゃってるじゃないか?」
クータムの大きさは五メートルを優に超えている。尻尾の先まで含めると、十メートル位はあるかもしれない。
「ヘヘヘッ。そうだな」
彼はそう言って、身体を小さくし、人型に変身した。
えっ、嘘っ!?
てっきり、そのままの姿でラケルタ人並みの大きさになるのだろうと思っていたけれど、クータムの小さくなった姿は、まるでその面影がなく、人間の姿になってしまった。
「ま、まぁ、その方が話がし易くて助かるよ」
「だろう? ヴィースのアニキとカリス姉さんを見習ってヨ」
ヴィースのアニキ? カリス姉さん?
クータムの人間になった容姿は、一言で言うと、筋肉マッチョなイカつい兵隊だ。服装も、モスグリーンの上下に、ポケットのいっぱい付いた黒いベストを着用し、黒い皮のブーツを履いていた。そして、顔つきは、彫りが深く顎ががっしりとし、眉毛が太く、日焼けした真っ黒い顔をしている。
レンジャーッ!
思わず叫びたくなる。そして、何故か、背中には大きな剣先スコップを背負っていた。
「それがお前の得物か?」
ヴィースは、腕組みをして、澄ました顔で尋ねた。
「ヘヘヘッ。あぁ。コイツが俺の相棒だぜ。ヘヘッ」
「むさ苦しいわね」
カリスがニンマリと笑って言った。
「ヘヘヘッ。ヨロシク頼んだぜ、ヴィースのアニキにカリス姉さんヨ」
クータムは、何んというか、人間になればこういう感じだろうというイメージ通りの姿だ。だから、あまり違和感を感じない。
「まぁ、いいんじゃない? クータムらしくて」
彼にそう言うと、クータムは、突然、膝まづいて、名乗りを行った。
「ヘヘヘッ。俺は、浄化の精霊、掃除屋のクータムだぜ。女神さんの八の眷属で道を清める者だ。ヨロシクだぜ」
掃除屋? 何を掃除するのやら。まぁ、何となく想像ができそうだけど……。
「ヨロシクね。クータム。でも、僕のことはエリアって呼んでくれる?」
「そうかヨ。それなら、エリア。ヨロシクな」
それを聞いて、ヴィースが右眉をピクピクとひくつかせた。
「エリア様に呼び捨てなどとは、どう言う了見だ、キサマ……」
「あなた、エリア様に失礼でしょ」
カリスも、ヴィースに続いて、クータムを窘める。
「ヘヘヘッ。ヴィースのアニキも、本当はそうやって呼びたいんじゃねぇのかよ。この女神さんは、そんじょそこらにはいねぇ上玉だぜ。俺にもっと力がありゃ、ものにしてぇって思ってるほどだ。まぁ、今のガキの姿にゃ、興味はねぇんだがヨ」
しかし、そこでヴィースの雰囲気が変わった!
「どうやら、死にたいらしい」
ヴィースはそう言って、破山剣を抜いた。
「まあまあ、ヴィースもカリスも落ち着いて。みんなそれぞれ、らしさ、ってあるでしょ? ヴィースやカリスは、やっぱり、ちゃんとしてる方がかっこいいけど、クータムに、それは期待できないし、らしくもないよ。だから、みんな自然体でいて欲しいんだ。僕はそれでいいから、みんなは喧嘩しないでね」
「いいえ。エリア様の事を呼び捨てるなど、認められません」
ヴィースは涼しい目をしている。それだけに……。
マ、マジ、ヤバいかも!
一方、ヴィースとは対照的に、クータムは真剣な表情をしている。少し、緊張しているようだ。
「……」
「……」
二人が黙り込んだ。
イケナイっ!!!
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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