186-9-13_クータムの覚悟
念の為、ミセリ話を向けた。
「ミセリ、クータムはああ言ってるけれど、どうする?」
すると、ミセリが土下座のようにして身を伏した。
「も、申し訳ございません。わ、私は、ど、どうしても足が竦んでしまって……こ、この精霊様の前に立つことが……で、できません」
彼女がそう言って詫びると、彼女の後ろにいた若いラケルタ人の女の子たちも、同様に身を伏して詫びた。
まぁ、仕方ないよね。
彼女たちだけじゃない。ラケルタ人はみんな魂までも弱体化してきているのだろう。守護精霊から切り離された彼らは、精神力までも失いつつあるようだ。
「分かったよ。それなら、クータム、ここに来てくれない? それから、他のみんなは、精霊化したクータムと守護精霊の契約をすればいい」
「ヘヘヘッ」
クータムは、癖になっている愛想笑いをすると、目の前にドスンと腰を下ろし胡坐をかいて座った。
「どうするんだ?」
「じゃぁ、目を閉じてくれる?」
まずは、クータムにキスをしなければならない。キスと言っても、加護を与える行為だけど、唇を重ねることに変わりはない。男にキスをするのは、これで二回目だ。一回目はヴィース。彼は、要領を得ない僕に、半ば強引にキスをした。
まさか、眷属契約ってキスの事だなんて、知らなかったしね。
ヴィースは、あの時、すでに、半霊半物質の首長竜だった。だから、男と言っても数の内に入らない。しかし、クータムはただのデミヒューマン。人型種族の男性だ。
これって、男との初キッスって事?
自分でも以外だけど、ちょっと、ドキドキしてしまう。それに、彼は、仲間を見捨ててでもこの僕を自分のものにしようとしたのだ。
まぁ、あれは、成長した身体だったんだけど。
クータムは言われた通り、目を閉じている。
「ところで、クータム。なんで、クータムだけ肌の色が違うのさ?」
キスの前に、気になっていたことを聞いた。
「ヘヘッ、本当はヨ、ラケルタ人はみな、俺と同じ色だったんだけどヨ、段々、色が変わっちまってヨ。まぁ、俺もその内こいつらと同じ色になるんだろうヨ。ヘヘッ」
なるほど。皮膚の色にも弱体化の影響が出ているようだ。クータムは、ラケルタの力を、まだ、多少なりとも保持しているということか。それなら、そもそも、精霊化はクータムが適役だったということだ。みんなのリーダーになるんだから、一番、力のある者がいいに決まっている。
クータムの顎に手を添える。すると、彼が薄目を開けた。
「ちょっと! 目を閉じてねって言ったよね!」
「ヘヘヘッ。どんな顔するのか見たくてヨ」
「まったく……」
クータムに、女神の祝福がキスの事だなんて言ってないんだけど、この雰囲気で分かるんだね。それとも、感がいいのかな。
刹那的で無責任男なくせに。これは、大サービスなんだからね。
そう思いながら、彼の唇の先に、唇を重ねた。女神エネルギーがクータムに流れていく……。彼は、一瞬、身体をピクつかせたようだ。女神エネルギーの力強さに驚いたのだろう。しかし、その後は、大人しく、目も閉じられていた。
やっぱり、女の子とのキスの方がいい……。
十数秒、そのままキスをすると、ゆっくりと離れた。切れたままだった彼の尻尾も元に戻り、皮膚の色が、ほんの少しメタリックな感じに光を反射している。
「どう?」
「あ、あぁ。お、驚いたぜ。め、女神さんてぇのは、やっぱ本物だ!」
「なんだ? 信用なかったんだね」
「ヘヘヘッ」
彼は、両手を握ったり開いたりして力を確認していた。そして、肘を前に出し腕を見ると、尻尾を動かして感触を確かめた。
「コイツは凄い! 今なら、奴らとでも戦えそうだぜ。ヘヘヘッ」
「何、言ってるのさ。本番はこれからだよ」
そう言って、ワーム精霊に視線を向けると、精霊は身体を大きく伸ばし、クータムの目の前に大口を開けた。
「クータム。この精霊は、心の怯えを見てるんだ。クータムが融合に値するのかどうかをね。怖がっちゃうと、食べられるから気を付けてね」
「へへへッ、マジか」
彼がそう言うと、後ろのラケルタ人たちが、また、少し、後ずさりした。ワームの精霊は、じっとクータムを見つめている。クータムも、しっかりと目を反らさず、ワーム精霊を見ている。ワーム精霊が、少し身を乗り出した。精霊の大口は、クータムの鼻の先だ。
大丈夫かな?
しかし、クータムは身じろぎせず、動じる様子が無い。すると、ワーム精霊がさらに身を乗り出してゆっくりとクータムに覆いかぶさると、彼の頭が、精霊の口にすっぽりと隠れてしまった。
「うっ!」
まさか、違うよね?
後ろのラケルタ人たちは一斉に、「ううう~っ」と震えるような声をあげ、大きくずり下がり、中には、立ち上がっていつでも逃げることができるような姿勢の者もいる。カリスが、ソマリとシャルを端の方へと下がらせて、彼女たちを自分の側に寄せた。精霊は、しばらく動かずにいると、クータムから離れ、今度は、少し胴体を地面に沈みこませて、上を向いた。
そして!
「キィィィィーーーーッ!」
精霊は、突然、天井に向かって大きな奇声を発した。そして、身体をくるくると回転させ、螺旋状にくねらせたっ!
何だっ!
「フフフッ」
ウィンディーネが念話で笑う。
「えっ!」
ワーム精霊は、身体を膨らませ、そこから一気にっ!
「わぁぁぁーーーーっ!? クータムっ!?」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
と思ったら
下の ☆☆☆☆☆ から、作品への応援お願い申し上げます。
面白かったら星5つ、つまらない時は星1つ、正直に感じたお気持ちで、もちろん大丈夫です!
ブックマークもいただけると本当に励みになります。
重ねて、何卒よろしくお願い申し上げます。




