185-9-12_浄化のワーム精霊(挿絵あり)
召喚魔法を使えば、眷属になった妖精や精霊などをいつでも呼び出せる。僕の場合は詠唱する必要もないし、眷属契約の繋がりを辿って逆転移するだけでそれほど難しい魔法じゃない。
魔法を実行すると、床に揺らぎが生じ、そこから、直径一メートルもあろうかというほどの黒いチューブ状の姿をしたワームが一体、地面から五メートル程、胴体を現した。そのワームは、天井に届きそうなところで先端部を曲げ、見下ろすように大きな口を開き、何重にも回転しながら口の奥へと続くギザギザの歯を覗かせていた。
あれっ? 何だか大きくなってない? 地面の底にも胴体が繋がってるんだよね、無茶苦茶デカいんじゃないの?
「これが、あなたのワーム精霊ね。立派な身体をしているわ」
ウィンディーネは、そう言って関心した。
「本当だ。精霊になってるね。元は、こんなに大きくなかったんだけど、もしかしたら、眷属になって力が強くなっちゃったのかな……」
ウィンディーネにそう言った後、念話でワームに話しかけてみた。
「よく来てくれたね。早速なんだけど、君に、ラケルタ人の助けになってもらいたいんだ。どうだろう?」
すると、ワームは、念話で返事をした。
「女神様! あの、僕、すごく嬉しかったんだぁ。キスなんてしてもらったの、初めてだったから! だから、女神様のためなら何でもするよっ!」
お、驚いた。この精霊、小さな子どもだ。見た目とのギャップが、激し過ぎるっ!
「そ、そうなんだ。それは良かったね。あの、君、男の子?」
「そう! 僕、男の子だよ。このトカゲの人たち、食べちゃえばいいの?」
……っ!?
「ち、違うっ違うっ! 食べちゃダメだからねっ!」
そこで、ウィンディーネが会話を差し込んできた。
「ちょっとエリア。ラケルタ人たちが、怯えてるわよ」
「えっ?」
ワームとの念話に集中して気が付かなかったけれど、目の前のラケルタ人たちが、みんな後ろにずり下がって、身体をのけ反らしている。
「ミセリ?」
「は……はい……」
ミセリは、何とかその場所に留まってはいるけれど、正座をして身を小さくし、少し身体が震えているようだ。
「大丈夫?」
「は、はい……」
ミセリは、ワーム精霊を見ないようにしている。
全然、大丈夫そうじゃないね。
確かに、この光景は、怪物に襲われている絶体絶命のシーンにしか見えない。
ちゃんと、みんなに説明しないと……。
「え~と、ミセリ。今から君たちラケルタ人が力を手に入れる方法を説明するよ」
「は、は、はい。エ、エリア様……」
ミセリは、座ったまま、その場で返事をした。やはり、顔を上げようとしない。
かなり、怯えちゃってるかな。本当は、この場から逃げ去りたい気持ちなんだろうね。
とは言え、今のラケルタ人はそんなこと言ってられないはずだ。
「君たちラケルタ人には、守護精霊が必要だよね。初めは、天邪鬼にお願いしようと思ったんだけど、天邪鬼は、シャルとの融合を望んだんだ。それに、天邪鬼は僕の眷属にはならない精霊だから力の制御が難しい。君たちラケルタ人とはそれほど相性が良くないと思っていたんだ。だから、天邪鬼は、君たちラケルタ人の守護精霊にはなれない。そこで、この精霊を召喚したんだよ……」
ラケルタ人たちは、驚き顔でワーム精霊を見ていた。しかし、僕に慈悲を望んだミセリたち若い女の子は、みんなうつ向いて顔を上げることができないでいる。
ミセリたち、どうなんだろう? このワームと融合なんてできるかな?
「……それで、ミセリたちの気持ちが変わらないなら、早速、この精霊との守護契約をしようと思うんだけどね。どうかな? それに、他にもミセリたちのように希望者があれば、前に出て欲しいんだけど……」
そう聞いてみても、前に進み出るものは一人もいない。あれほど、必死で僕に訴えていたミセリたち若い女の子でさえ、怯えて声を上げられないようだ。
ダメそうだね。まぁ、無理もないか……。
彼女たちが諦めるようなら、僕には、これ以上彼女たちに手を貸すことはできない。それも、彼らの選択ということだ。
すると、突然、クータムが笑い出した。
「ハッハッハッハッ! 女神さんよ。コイツは、若い女には厳しいだろうぜ、ヘヘッ……」
彼は、腕組みをしたまま、不敵な笑みを浮かべている。
「……なんならヨ、俺が試してやるよ。ヘヘヘッ」
彼はそう言って、立ち上がった。
クータムか……なるほど……。
まぁ、確かに、クータムの言う通りだ。ミセリたちは、ワーム精霊を前にして身体が竦んでしまっている。それに、このワーム精霊は、怯えた者には容赦がない。そういう者を餌と見る習性があるのだ。さっきも、もし、僕が止めていなければ、本当にラケルタ人を食べていただろう。怯えたミセリがこの精霊の前に立つことが出来ても、彼女は、精霊の餌になってしまうかもしれない。
ちょっと、危険だったかな?
しかし、今の僕には、この精霊しか頼れる存在がいない。
「クータムは、この精霊が怖くないの?」
「ヘヘヘッ。俺にはもう、何にも失うものなんてねぇからヨ。それに、女神さんがいなきゃヨ、どの道俺たちみんな、ワニの餌になってたぜ。ヘヘッ」
どうやら、クータムは、この精霊に対して、怯えてはいないようだ。それなら、話を進めるとしよう。
ーーーー
〜そこで、この精霊を召喚したんだよ……。
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