184-9-11_ラケルタの族長、ウェンネ
彼女の後に続き、洞窟の奥へと向かう。すると、直ぐ先にところに、入口付近と同じくらいの空間があった。洞窟の壁に掲げられた松明の明かりで、ある程度の様子が分かるけれど、やはり、少し暗い。
「ちょっと、明るくするよ」
そう言って、魔法ライトを灯した。空間は一気に明るくなり、部屋の中の様子がよく分かる。その部屋には、無造作に人が寝かされていて、粗末な布がそれぞれの身体に掛けられていた。しかし、どの怪我人も、シャルほどの重体ではなさそうだ。そして、さっと見渡すと、皮膚の色が黄色く、ひと際身体の大きなラケルタ人が、部屋の真ん中辺りに寝転がっているのに目が留まった。
「クータム……」
彼の側に寄ると、どうやら、彼は、いびきをかいて眠っている。
「大丈夫そうだね」
しかし、僕との戦闘で切れた尻尾はそのままだった。
治しといてやれば良かったかな……。
「んんっ! ん~?」
しかし、そこで、クータムが目を覚ました。
「ふぅ~。何だ? 眠っちまってたぜ」
「クータム、お疲れさんだったね」
一応、労ってやろう。彼も、戦士として戦ったんだしね。
「ん? 何だ? ガキじゃねぇか。何でこんなガキがいるんだ?」
ところが、クータムは首に嵌めた首輪に気が付いたようだ。
「えっ? あ、あんた……まさか……女神さんかヨ?」
「まぁね。クータムも、良く生きてたもんだね」
「ヘヘヘッ。様ぁねぇよ」
そう言いながら、クータムは、上体を起こした。
「よいせっと! ふぅ~。おっ! 猫娘が蘇ってやがる! 何だ、ホッとしたぜ。女神さんがやったんだろ? 良かったじゃねぇか! このガキたちのことは、俺たちにだって責任があるからヨ」
「案外、優しいとこあるんだね」
「ヘヘヘッ。うるせぇっ!」
クータムは、会話が出来るくらい元気なようだ。少し、安心した。彼は粗暴だけれど、ラケルタ人の支えにはなっている。彼が死ねば、ラケルタ人の気力が失われてしまうだろう。
「あのヨ……」
クータムが言った。
「……女神さんヨ。ウェンネのばぁさんは死んじまったぜ。まぁ、老い先短ぇばぁさんだったがヨ。ヘヘヘッ」
「そうなんだ……」
彼に言われるまでもなく、その事には、もう気付いていた。ウェンネの気が魔力感知に引っかからなかったし、それに、一番奥に、ポツンと寝かされているこじんまりとした身体。それには、全身を覆うように布が被せられている。あれが、ウェンネさんだろう。
「別れを言ってくるよ」
「ヘヘヘッ。ああ……」
クータムにそう言って、ウェンネさんのところに向かい、彼女に別れを告げた。彼女に対しては、それほど情が移っていた訳ではない。自分としては、むしろ、奴隷にされるところだったのだ。だから、悲しいと言う感情は起こらない。
「でも、一族のために、立派に戦ったよね。お疲れ様」
彼女の魂もまた、次の輪廻に入って行くのだろう……。
その後、怪我人たちにヒーリング魔法を施し、ラケルタ人たちを治療すると、彼らに、入口の広場に集まってもらった。
壮絶な戦いの後だけれど、これから、彼らは、自分たちの生き方を決めなければいけない。今日は、天邪鬼の規格外な力で助かったので、族長の命だけで済んだのだ。しかし、クロック人は、また、明日にでもやってくるかもしれない。ただ、予定していた天邪鬼の力を借りるということは出来なくなってしまった。シャルが精霊化し、強くなったとはいえ、シャルにラケルタ人の行く末まで背負ってもらう訳にもいかない。
でも、僕も、ミセリに約束したからね。
変な形で彼らの人生に関わってしまったけれど、ラケルタ人の能力強化を約束した以上、途中で投げ出す訳にいかない。
とは言え、僕に出来る事しかしてあげられないけど……。
「ミセリ、始めてくれる?」
「はい……」
ミセリは、立ち上がり少し前に来ると、ラケルタ人の方に向き直った。
「今日は、副リーダー、いえ、マグナスの裏切りによって、我々は族長を失いました。たまたま、天邪鬼様がいらっしゃったから、みんなの命は助かったけど、クロック人は、また、やって来ます。我々に残された選択は、力を手に入れる以外にありません。私は……」
ミセリには、さっき、僕の考えを話しておいた。天邪鬼がシャルと融合したことで、ラケルタ人を強化する方法は一つしか残されていない。もちろん、彼らを精霊化して強化する方法だ。ただし、ミセリたち若い女の子には、受け入れ難いかもしれない。
「……エリア様のお力で……」
ミセリが、言葉に詰まったところに、クータムが割り込んだ。
「ラケルタ人じゃ無くなっちまうんだよな?」
「ええ。まぁ……」
ミセリは、声が小さくなってしまった。
「それならヨ、ミセリ、オメェが先に試すがいいぜ」
「も、もちろん、そのつもりです……」
ミセリは、その後の言葉を飲み込んでしまった。
「ミセリ、ありがとう」
そう言って、彼女を座らせた。ミセリは、ラケルタ人で無くなったとしても、力を身に着けたいと既に心を決めている。ただ、僕の考えをミセリに話した時、彼女は愕然とした表情をしていた。
流石に、女の子にはちょっとコクかもね。でも、まずは、力を借りる妖精に対面してもらうしかない。
「ミセリ、とりあえず、妖精をここに呼び出すよ」
そう言って、召喚魔法を使用して妖精を呼び出した。
「出てこいっ! 浄化のワームっ!」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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