183-9-10_裏切り
彼女はそう言うと、族長の椅子のところへ座るよう促し、そこに腰を下ろした。他のラケルタ人も、ミセリに続き、移動して目の前に座った。スカートがミニだから、行儀よくしないと中が見えちゃいそうだ。見た目が子どもだからと言っても一応十八歳だからちゃんとしないと、はしたない。って言うか、中身は二十五歳だった……。
膝を閉じてスカートの裾を膝の方向に引っ張った。そして、顔を上げ一通り彼らを見渡す。改めてラケルタ人を見ると、みんな、怪我をしている者が多い。
それに、数も減っているようだけど……。
もしかすると、人数は半分くらいになっているかもしれない。ウェンネやクータムの姿も見えないし、マグナスもいない。ラケルタの戦士と言っていた男達も、ずいぶんと数が減っている。すると、ウィンディーネが話してきた。
「これが守護を失ったラケルタ人ね。本当に力を失っているようね」
「出てくればいいのに!」
「説明が長くなるから面倒くさいわ。いいでしょ! あ~、念のため、あなたの水竜とカルキノスを、呼んでおいたわ」
「そうなの?」
次の瞬間、ヴィースとカリスが二人揃って背後に出現したっ!
「エリア様。おめでとうございます」
後ろを振り返ると、ヴィースが軽く頭を下げた。カリスも恭しく頭を下げている。
「あぁ、ヴィース、カリスも、待たせちゃったね。ちょっと、今から、ラケルタ人の事をいろいろと決めないといけないんだ。それで、その前に、何か事件が起きたようだから、その話を聞くところなんだよ」
そう言って改めて前を向くと、ラケルタ人たちが、口を開けたまま固まっている。
説明無しだから無理もないね。
「え~と、この二人の事は……気にしないでね。それじゃ、ミセリ、お願い!」
ヴィースとカリスの話をすると、話題がずれちゃうから強引に話を先に進める。
「は、はい……」
ミセリは、やっと我に返り、話し始めた。
「じ、実は、明日来るはずだったクロック人たちが、と、突然、攻めて来たのです。それで……」
彼女によると、クロック人十人ほどが、一頭の大きなワニの魔獣を引きつれてここに攻めて来たらしい。しかも、彼らをここまで誘導したのは……。
「……服リーダーのマグナスです」
「何だって!? 一族を裏切ったの!?」
そう言うと、ミセリは小さく頷いた。
なんて奴だっ!
マグナスには全く良い印象は無い。奴には侮辱されたし、今度会った時には思い知らせてやりたいとさえ思ったいた。でも、こうなったらそれどころの話ではない。
ミセリは話を続けた。
「奴らの襲撃は、あまりにも突然のことでしたので、我々は対処に遅れ、慌ててしまったのです……」
その時、クータムをはじめラケルタの戦士たちが、勇気を振り絞り、クロック人に応戦したようだ。彼らは、老人や女たちを洞窟の奥に避難させ、入り口を死守しようとして力を尽くしたらしい。ところが、戦い慣れたクロック人に一方的に攻められてしまったようだ。クータムたちラケルタの戦士は体制を整えることが出来ず、前衛を入れ替えながら捨て身に近い戦い方になってしまったらしい。しかし、その状況を見て、ウェンネが一族の代表として彼らの前に進み出た。そして、クロック人と交渉しょうとしたのだった。
ところが……。
「か、彼らは、ウェンネ族長を……」
ミセリは、小さな声でそう言った。ウェンネはあっけなくクロック人にやられてしまったのだ。クロック人は交渉に応じるどころか、ワニ魔獣を操り、彼女は、ワニ魔獣の尻尾の一撃で弾き飛ばされてしまったらしい。しかし、その様子を見ていたシャルが洞窟から飛び出してきて、ウェンネが倒れているところへ走って行こうとしたのだそうだ。ところが、ワニ魔獣の目の前を走って通り抜けようとしたシャルに、ワニ魔獣が嚙みつき、彼女の左腕は食いちぎられてしまった。その光景を見ていたソマリは、猛然とシャルの所に駆け寄った。しかし、今度は、ワニ魔獣が、ソマリに襲い掛かろうとしたとのことだ。
そして、その時……。
「それは、一瞬のことでした。突然の轟音とともに、大きな稲光が幾筋も地面に落ちたのです。見ると、天邪鬼様の御業のようでした。その稲光は、ワニ魔獣とクロック人に直撃した後、数十秒続き、彼らは……」
「黒焦げに、なったんだね……」
外の黒い塊、あれは、高電圧の雷を数十秒間浴びせ続けた後だ。
当然、天邪鬼の雷攻撃で、クロック人たちは全滅してしまったようだ。しかし、シャルも瀕死の状態となり、ラケルタ人の戦士も満身創痍となったとのことだ。
ミセリはそこまで説明すると、自分の肩を抱き、震え始めてしまった。
「シ、シャルちゃんが、わ、私たちの代わりに、犠牲になってしまって……。で、でも、シャルちゃんの犠牲が無ければ、わ、私たちは……ワ、ワニ魔獣の餌になるところでした……うううっ……」
その場に、沈痛な空気が流れる。ソマリが、ミセリの肩に手を添えた。
「それなら、今、他にも怪我人がいるんだよね?」
ミセリの代わりに、ソマリが答える。
「はい。重い怪我をしたみなさんは、この奥にいらっしゃいます。族長も……そこに……」
そうか。どうりで数が少ないと思ったんだよ。それなら、まずは治療を行おう。
「ミセリ、僕を怪我人のところへ案内してくれる?」
そう言って、ミセリに声を掛けると、彼女は、小さく頷いて立ち上がった。
「こちらでございます……」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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