180-9-7_光の玉石
アクアディアさんは、中空に手を伸ばすと、そこから小さなティアドロップ型のピアス取り出した。そのピアスは、透き通った青い色をしている。
「これは、光の玉石と言って、ウィンディーネが宿るためのアイテムです。このピアスには、既にウィンデーネのエネルギーが転写されているのだけど、この、光の玉石は、光の魔石のようにどんな性質のエネルギーも転写できるものよ。但し、玉石と言うだけあって、取り込めるエネルギーは、光の魔石と桁違いで、災害級と言えば伝わるかしらね。つまり、あなたと近しい妖精や精霊といった大きなエネルギー体を宿すことができる……」
光の玉石? 光の魔石より強力なんだ? そんな貴重なものを……。
「……全部で三つあるから、後の二つはアクアセラーに入れておいたわ。これは、私からの餞別よ。これがあれば、いちいち召喚をしなくても、妖精や精霊は、常にあなたと一緒にいられることになるわ……」
アクアディアさんは、肉体を持った人間と融合した場合を除いて、自然エネルギーから生まれた妖精や精霊は、彼らが発生した場所を離れるに従って、力が弱くなるという。どの程度、力が弱くなるかというのは、その妖精や精霊によるそうだけれど、それは、私の眷属であっても同じであると教えてくれた。
そうなんだ。それなら、魔力の強いヴィースやククリナも例外ではないと言う事なのね。
そう言えば、エイルやセイシェル王女は、呼び出せば出てきてくれるはずだけど、今、この場所では、彼女たちを感じることができない。
ヴィースやカリスも遺跡で待つように、ウィンデーネに言われていたわね。アクアディアーナって、そんなに遠いところにあるのかな?
「と言っても、あなたの眷属ならクライナ王国の範囲くらいは殆ど影響ないでしょうけど」
そういう事か。それでも、光の玉石があれば心強い。
このピアス、とても重宝しそうだわ。
そして、アクアディアさんは、ウィンディーネ用に一つ耳に着けておくように言った。
「取り付け方は分かる?」
「耳に穴をあけるんですよね?」
「いいえ、これは、金具を耳たぶに当てれば、勝手に耳になじんむから簡単に取り外しできるわよ」
アクアディアさんの言うとおり、ピアスを右耳の耳たぶに取り付けた。
「ピアスを付けたのは初めてです。嬉しい!」
「そうなの? とても似合ってるわ」
そう言って、アクアディアさんが微笑んだ。
アクセサリーなんて持ってないし、着けたことも無かったわ。子どもの身体だったら、アリサに身支度してもらった時に髪留めとか着けてくれるくれるけど。あ~、早く鏡を見てみたい。
隣で話を聞いていたウィンディーネは、相変わらず腕を組んで、眉毛を釣り上げたままこちらをじっと見ている。
あれ? まだ、怒ってるのかな?
すると、ウィンディーネが、ふくれっ面のまま水色の光の粒になって、耳のピアスに入って行った。そして、念話が聞こえてきた。
「早く、出発しなさいよ」
「そうね」
そうして、アクアディアさんにお礼を言った。
「アクアディアさん。お世話になりました。また、ここに来てもいいですか?」
「もちろんよ。いつでもいらっしゃい。あ、そうそう、エリアさんはここを出れば、直ぐに子どもの身体に戻るから、いきなり人前に出ちゃうと、恥ずかしいわよ。少し、離れたところに転移した方がいいわ。あと、もう、必要ないでしょうけど、予備の月下美人の花雫が一つ余ってますので、それもアクアセラーに入れてあります。どうぞ活用してください。でも、あまり、無理に身体を成長させちゃうと、大変なことになっちゃうかも。エリアさんは体の中にクリトリアの花を持っているから、特に注意が必要ね。フフフッ」
「ありがとう」
そう言って、上空辺りに転移窓を出した。
洞窟の外がいいかな。どこか、目隠しになるところは……。ん!? 何だ? 煙?
よく見ると、崩れた砦の丸太が黒こげになって、白い煙をあちらこちらで上げている。しかし、人影が見当たらない。
「何これっ!?」
急に、嫌な予感がしてくる。
兎に角、急ごう!
アクアディアさんに目くばせで合図を送り、転移窓を地上に出しなおして、その窓を通り抜けた。ところが……。
わっわっわっ!
転移窓を通り抜けた瞬間に、アクアディアさんが言った通り、いきなり身体が縮んでいく。
服を着替えなきゃ! 早く早く。見えちゃう見えちゃう。
アクアセラ―から子どもの服を取り出して、手早く着替える。
ぶかぶかのワンピースをすっぽり脱いで、さっと畳むと、アクアセラーに放り込んだ。そして、上の肌着とブラウスを身に着け、ミニスカート、ロングソックスと靴を履いて、グレーのもこもこセーターを頭から被った。屋敷を出発するときのスタイルだ。
こんな屋外で、目隠しもなく生着替えなんて、まったく!
ただ、同時に、また、あの喪失感を感じている。
僕の中の、エリアの気配が、消えてしまった。
戻っちゃったね……。
でも、今は、しみじみしている場合じゃない。改めて、辺りを見渡す。周囲には緩い風が吹いていて、異様な匂いが鼻を刺激する。
「うっ! 何だ……この匂い!?」
手で鼻を覆った。何かの焦げた匂いだ。よく見ると、砦の丸太が白い煙を上げている他にも、黒っぽい塊が、あちらこちらに散らばっていて、そこからも白い煙が上がっている。
「あれは……?」
嫌な考えが頭をよぎる!
煙の上がっているものを確認しに行くか?
拳を握る。
う~。
一瞬、躊躇していると、視界の端の方で、洞窟の入り口のところから一人の少女がこちらを覗いているのが見えた!
「あっ? 天邪鬼!」
天邪鬼は、両手をだらりと下げたまま、無表情で洞窟の入り口に立っていた。慌てて彼女の元に駆け寄り声を掛ける。
「天邪鬼! あなただけしかいない訳じゃ無いよねっ?」
そんな事は、絶対に無いはずだ。天邪鬼には、何かあれば、みんなを守ってくれるように言っておいたんだから。
天邪鬼は、ポカンとした表情をして不思議そうにこちらを見ている。
「他のみんなは洞窟の中っ?」
きっとそうだわ。
気持ちが早って、矢継ぎ早に聞いてしまった。しかし、天邪鬼は、洞窟の中を指さして一言だけ言葉を発した。
「友達、あっち」
「友達? シャルのことっ!?」
シャルに何かあったのか?
天邪鬼の手を引いて洞窟に向かう。入口から中に入ると松明の明かりが僅かに辺りを灯していたけれど、外から入った者には薄暗くて内部の状況が分からない。しかし、入り口の広場には、何人かの人影があるようだ。そして、その中から、ひくひくという泣き声のようなものも聞こえるてくる。
これじゃ、暗くて分からないっ!
「魔法ライトっ!」
白い光が洞窟の中を照らし、一気に明るくなる。やはり、目の前に、数十人の人の塊があった。そのうちの何人かが驚いたようにこちらを見ている。しかし、そこにある空気は緊迫していた。その中心には、三人の人物が慌てた様子で動いている。二人のラケルタ人女性ともう一人。
「ソマリっ!」
彼女は、クシャクシャになった顔で、声を押し殺しながら、二人のラケルタ人と共に、そこに寝転んでいる身体に手当てをしている。ソマリは、気が動転しているのかして、ライトの明かりにも気がつかない。その時、手当をしているラケルタ人女性の一人が叫んだ!
「血、血が止まらないっ!」
ソマリも、大声で叫ぶっ!
「シャルーーーーっ!」
シャル?
ソマリの足元に、小さな足が二本見えた。
あれはっ!?
「ちょっと、開けてっ!」
そう言うと、手前にいた者が、驚いた顔をしながら脇によって通路を開けた。
「シャル? 何が……」
少女の名を叫びながら駆け寄る。呆然とするソマリの背中に手を当て、彼女の脇から横たわるシャルを覗き込んだ。
「なっ!」
シャルの……左腕が……。
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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