178-9-5_スキル創作
確か、半霊半物質のような存在たちは、信仰の対象になれば目的が出来て、とか何とか、だったわね。誰が言ってたんだっけ? ヴィース? まぁ、誰でもいいか。
天邪鬼は半霊ではなくて、完全に精霊だけど、アクアディアさんがそう言うのなら、きっと、問題ない。
「それなら、まだ方法はあるわ」
天邪鬼と融合が出来ればベストだったけれど、天邪鬼に、私の眷属になる気が無ければ仕方ないわね。最初の計画通りではないけれど、天邪鬼に、ラケルタ人の守護精霊になってもらえるよう、話してみよう。ミセリ達なら、きっと、心を込めて天邪鬼を信仰するに違いないわ。そうすれば、天邪鬼は力を貸してくれるかもしれないし。
「何かいい考えが思い付いたようね。今のあなたなら、ラケルタ人を導いてあげられるでしょう。頑張ってね」
アクアディアはそう言って、微笑んだ。そして、徐に中空から分厚い本を取り出すと、その本をテーブルの上に置いた。
「それなら、という事でもないでしょうけど、今のエリアさんの力を見ておきましょうか」
「あっ! その本、魔道の写本に似てる」
イリハの持っていた魔道の写本とは少し表紙のデザインや、本の持つ重厚感が違う様だ。こっちの方が重みを感じる。
でも、雰囲気はよく似ているわね。
「似てるんじゃ無くて、そのものよ。では、ここに手を添えてちょうだい」
アクアディアの言う通り、本の表紙に右手を置き、彼女に尋ねる。
「そのものって、オリジナルってことですか?」
「試してみれば分かるわ」
イリハの持っていた魔道の写本には、前世のスキル以外には、何も出なかったんだけど……。それに、呪文とか唱えないんだ?
その時、彼女が、「フフッ」と笑みを浮かべて言った。
「人間が使っている魔道の写本は、いわゆる劣化版みたいなものよ。本の内部に人工の魔石が仕込まれていて、調べる対象者の表層意識に働きかける仕組みなの。でも、あなたは、殆どの魔法を無力化するから、人間の作ったアイテムでは、あなたをどうこうしようとすることはできないわね。まぁ、表示されるのは、あなたが前世で獲得したスキルくらいだわ……」
彼女の話では、オリジナルの魔導の写本は、水の記憶を読み解く力を使っているため、非物質存在でなければ、誰であっても能力の全てが表示されるらしい。
「そうだったのね。なら、和菓子職人のスキル以外表示されなかったのは、私自身がレジストしていたって事なんだ?」
「その通りよ。でも、この魔導の写本は、水の精霊が創造したアイテムだから。ほら、今の自分の力をご覧なさい」
そう言って、彼女は、魔道の写本の表紙をめくるように言った。
え〜、私の力って、どんなだろう? 何かワクワクする!
そして、表紙をめくった。
「女神の祝福。最初は加護の欄ね。それと、聖水婚か。これが、水の精霊の加護の名前なんだ。それから……」
一枚ページをめくる。
何、これ!? たくさん書いてあるっ!
見ると、左と右のページ両方に、ぎっしりと魔法名の記載があった。
一番目には、下痢を起こす魔法だ。そして、二番目以降には、イメトレで覚えた基礎魔法が書いてある。その次には、男に手を繋がれると突き飛ばす魔法。さらに、イグニス山で使った浄化魔法、ヴェネディクト・ヒールも表示されていた。
フフフッ。思い出しちゃうわ。
どうやら、魔法の記載の順序は、身につけた順番になっているようだ。しかし、魔法は、まだまだ記載されている。ここから先は使ったことのない魔法だ。その事が一目で分かるように、文字の色が薄くなっている。
へぇ〜、分かりやすいかも。どれどれ。
最初の幾つかは、初級水魔法のようだ。
「ウォーターボール、ウォーターカッター、バブルシールド。なるほど、ヴィースとカリスの魔法ね?」
初級魔法は、それら以外にも、まだまだ書いてあるけれど、どれも名称からおおよその効果がイメージ出来るものばかりだ。
戦闘だけじゃ無くて、生活にも使えそうね。
右のページに目を写すと、戦闘力の高そうな名前が幾つか見られた。
「ストームレイン。結構、強そうな名前ね。中級魔法なのかな? 暴風雨のような感じね。それに、ポイズンミスト。ポイズンストーム。う~ん、毒だ。これって、ヴィースだよね。他にも毒系が一杯あるわ。こんなの使えそうに無いよね。大量殺戮になっちゃうよ……」
ぶつぶつと独り言を言っていると、アクアディアさんが気になることを言った。
「エリアさんのスキルなら、いろいろとミックスできそうで楽しそうね」
「えっ? ミックス?」
なるほど、そうよねっ!
魔法はイメージ次第だ。だから、使える魔法同士を組み合わせると、新しい魔法ができちゃうということか?
「フフフッ」
彼女は、ニッコリと笑っている。
そうじゃないの? まぁ、いいか。
さらにページをめくると、次はスキルが記載されていた。スキルの欄の一番最初には、眷属たちのスキルが表示されている。
「体術系だ。カリスね。あ、あったあった。クータムを懲らしめた掌底破だ。へぇ~、これってやっぱり初級技なんだ。それ以外にも、体術技や短剣技がたくさんあるわ。それから、こっちは、ヴィースの技のようね。え~と、あ、これこれ、神旋風。おぉっ、この技も初級技なんだ? あんなに威力があったのに、ヴィースの技って初級段階から凄いのね。それから……」
その後にも、技の名前が書いてあるけど、ちょっと技名だけではどんなものなのかイメージできない。
「きっと、中級以上の技だわ。フムフム、なるほどね。あれ? これは……?」
一覧の下の方に気になる名称のスキルがあった。
「破山剣? ヴィースの剣の名と同じ名前の技だ?」
どんな技だろう? 一番最後に書いてあるから、きっと、一番威力が強い技のように思う。自分で使うことなんて無いんだろうけど、一度、使ったところを見てみたいな。
魔導の写本には、今、自分の力として、カリスとヴィースの能力がそのまま転写されているようだ。それなら、エイルやククリナ、それに、ピュリスさんやセイシェル王女の能力も、胸に感じる彼女たちの情報をインストールすれば、勝手に身に付きそうだ。
ヴィースやカリスの技もたくさんあるし、一つ一つ試してみたい。そして、さらに、ページをめくると……。
「あ、こんなところに和菓子職人のスキルが書いてある」
記載の場所が、眷属たちから読み取った能力のページとは別になっている。
「ふ〜ん……」
ん?
よく見ると、和菓子職人スキルの下に、もう一つ記載がある。
「創作初級?」
これもスキルかな? こんなの知らないし、身に着けた覚えも無いけど……。
イリハの魔導の写本で見た時には載っていなかった。
創作って何だろう? 和菓子なら、いつも創作してたけど……。
アクアディアさんが、またニッコリとした。
あっ!? もしかして、アクアディアさんが、私ならって言ったのは、このスキルの事?
スキル創作? 初級だけど。
和菓子職人は、素材のいろいろな特徴を生かしながら、新しいお菓子を創作していく訳だし、決して他には無い自分だけのオリジナル和菓子を生み出すのが創作よね。
それが和菓子創作の醍醐味でもあるのだ。
すると、この創作っていうスキルって、新しい和菓子を作るのと同じで、何かを組み合わせて新しいものを創作するスキルなのかな?
「フフフッ。やっと、気が付いたようね。エリアさんの特徴的な能力に。その創作スキルは、あなたの、スキル和菓子職人の上位スキルです。イニシエーションを達成したことで、スキルのランクがあがったみたいね。魔法だけじゃなく、スキル通しでも創作できるんじゃない? いろいろと試してみるといいわ」
なるほど。和菓子職人が進化したようなスキルなんだ。そっか。魔法を創作する場合、最初からイメージしなきゃならないし、それに、スキルとなればそもそも創作なんて出来ないけど、この創作スキルを使えば、新しい魔法も簡単に作れそうだし、スキルだって組み合わせればいろんな事が可能になる。
それって、凄くない?
例えば、そうね、カリスの体術とヴィースの剣技を組み合わせるのってどうかな? まだ、クータムと戦った時しか使った事ないけれど、スキルを使う時って、同時並行で使うのって難しそうでしょ。きっと、鍛錬しないと普通は出来ないと思うんだけど。でも、このスキルがあれば、同時技や連続技が簡単に出来そうよね。
ムフフ。私も、模擬戦やりたくなっちゃった! ヴィース相手してくれるかな? あっ! 湖の上を歩けるようにならないとダメなんだったっけ? でも、あれは、スキルだけじゃ無理そうね。ヴィースは湖の上に立ってたわね。どうやってるんだろう? 今度、聞いてみよう。
アクアディアは、魔導の写本を差し出した。
「これを使えば、人間の魔法適性も簡単に分かるから、とても便利なのよ。これは、あなたが持っていてください。秘奥義が使えるようになれば、もっと、便利な使い方ができるはずだから」
「いいの?」
「もちろんよ。さぁ後は、水の巫女のことだけど……」
「面白いかも!」
「続きが気になるぞ!」
「この後どうなるのっ……!」
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